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第6話 ロジーナ・ペルセウス

ロジーナ・ペルセウスは澄んだブルーの髪をショートヘアに刈り込んだ活発そうな女性だ。前髪が目にかからないように髪留めをつけていて、戦いの一歩先を見据えるようなエメラルドグリーンに近い色合いの瞳が特徴的である。


身長は低く、剣士と言う割には華奢なイメージを与える風貌をしており、力任せなものではなく、スピードを活かし、相手の戦い方を読むように一歩一歩相手を敗北に追いやるようなそんな戦い方を好む剣士である。


「坊っちゃんは剣士にとって必要なことはなんだと思う?」


ロジーナは最初の授業のときに俺に問いかけた。


「つよいちからとあしのはやさでしょうか?」


俺はそのように答える。


ロジーナは真剣にその言葉を聞き、やがて話し出す。


「私は足は速いが体格的に筋力はなくて力もそんなに強いほうじゃない。むしろ私の体格くらいだと多くの筋力をつけすぎると体の可動域が減ってしまったり、俊敏さにかけてしまうこともある。だから、力が強くて足が速ければいいというのは個人差があることなんだ。そのへんは自分の体の成長とともに、ちょうどいい筋力をつけていけばいいと私は思っているんだ。つまり無駄のない筋力があれば問題ないということだな」


「じゃあ、けんしにはなにがいちばんひつようなのでしょう?」

俺は率直に質問する。

「私は、あくまでも私の考えにはなるが、冷静に戦場や戦況を見ることができる戦術眼と戦略を考えることができる頭脳だと思っているよ」

「戦況は目まぐるしく変化する。それに対して常に頭を回転させて、次に取る行動を選択する。そうして相手よりも一歩先を考えることができるようになれば、戦いを有利に進めることができるんだ」

「だから坊っちゃんは、私と剣を交えながら常に私の次の行動を読んで動き出すようにできるようになろう」


「それができれば、筋力、スピード、体格に勝る私にも勝つことができるようになる」


ロジーナは体格差のある相手と戦うことを想定して俺に訓練をつけてくれる。今の俺が小さいこともあるが、今から戦術眼を養うためにそうしているのだろう。


「はい。わかりました。そのためにはよいめがひつようになりますね」


俺がそう言うと、ロジーナは驚いたような顔で俺の頭を撫でる。


「坊っちゃんはよくわかっているな。相手の動きを読むときには、相手の筋肉の動きや剣先の動き、視線や重心のかけ方に常に注意しないといけない。そのためには目を鍛えておくことが大切だぞ」


ロジーナに褒められて俺は少し顔を赤くする。


「もちろん、戦術眼だけでなんとでもなるということはないから、その目に負けないくらい体も鍛えないと駄目だぞ」


ロジーナはそう言うと軽く屈伸をして俺から3メートルほど距離を取る。


「とは言っても、剣術の基礎が全くできていなければ意味のないことだ。基本となる剣の型を一通り習得してから、あとは組手をメインにやっていこう」


この世界には剣術にもいくつかの流派があり、ロジーナはそれぞれの流派を学んでいるため、基本的にはどの流派も教えることができる。ただし、ロジーナ自身はそういった流派にこだわらず、自由な発想で剣を振るっており、それはどこの流派のものでもなく、どこの流派のものでもあると言ってもいい。言ってみればロジーナ流と言うことになるか。

それをロジーナに伝えると、彼女は照れ臭そうに


「私は型にハマるのが嫌いだから自然とこうなっただけだ。色んな流派の寄せ集めだから、どこの流派にも認められてはいない。まあ、坊っちゃんには流派なんてくだらない枠を気にせず強くなってもらいたいと思っているぞ」


「はい。ぼくがつよくなってロジーナりゅうをせかいじゅうにひろめます」


ロジーナは困ったように


「ハハハッ、ロジーナ流は恥ずかしすぎるからやめてもらいたいがな」


苦笑いをしている。


「それでは、まずは一の型から始めるぞ」


一転して真剣な眼差しで俺とロジーナは相対する。


「一の型、風刃一閃、100本!」


その掛け声とともに、ロジーナと俺は剣を振る。一本一本を真剣に、力強く、迅速に、剣先も心も乱れのないように振り続ける。流石にまだ剣の修行を始めたばかりの俺は、50本くらいから剣先が乱れ始める。筋力に限界が来ているのだ。その状態で振り続けても変な癖がついてしまうこともあるので、一旦構え直し、ゆっくりと体力が回復するのを待ってからじっくりと振っていく。それでも90本を超えてくると心の乱れもあいまって剣に振り回されるようになってくる。それを見ていたロジーナは


「それじゃ型の練習はこれまで!」


「残りの時間は湖まで剣を腰に差したまま走ってこよう」


そう言うときらめく汗を置き去りにして走り始める。


「ししょう、まってください!」


俺も追いかけるように走り始める。


「あ、そうだ。坊っちゃんは魔法も使えるんだからついでに魔法をコントロールしながら走ったらいい。水魔法でウォーターボールを頭の上に浮かべながら走ってみよう。集中力を鍛えるにもいい訓練になるぞ」


そう言われた俺はウォーターボールをロジーナの上に作り出す。


「なっ!なんで私の上につくるんだー。私がびしょ濡れになるじゃないか!」


そう言いながらも嬉しそうに走っていく。

本当にいい師匠に巡り会えたものだ。

俺は感慨深く感じながら訓練を続ける。


ちなみに、今からおおよそ15年後にはロジーナ流の剣術が世界中に広まっているのだが、その話はまた別の機会に譲ろう。

この作品を見つけていただいてありがとうございます。皆様と出会えたことに感謝です。


もっともっと面白くてドキドキするような作品を書いていきたいと思います。よろしければブックマーク、下の☆で応援をよろしくお願いします。

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