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第5話 スピカ・スカーレット

スピカ・スカーレットは世にはまだ知られていないが、魔法大学を優秀な成績で卒業した偉大な魔法学者の卵である。スカーレットの家名が示すように朱色の綺麗な髪色をしたウェーブがかったロングヘアーがよく似合うおっとりとした女性だ。澄んだブルーの瞳を持っており、じっと見つめられると心を見透かされている気持ちになる。

人に教えるのが非常に上手く、また、持論を押し付けずに個性を引き出すことに長けており、今までの周回人生で俺の魔法の限界を突破させることができた唯一の師匠である。そういう経緯もあってスピカと出会ってからは毎回彼女を選ぶようになった。


「さぁ、プラタスさん。今日も魔法のお勉強をしましょう」


スピカが俺のことを呼び捨てにすることはない。貴族とはいえ俺の父はそこまで高位ではないので、かしこまる必要はないのだが、これはスピカの性格が成すものだろうか。


授業は嵐でも来ない限りは庭の一画に作られた小さな訓練場で始まる。もともとは父が剣の修行をするために作られた訓練場ではあるが、今は俺専用の学び舎となっている。


まずは座学から始まり、その後で実技に移っていく。そもそも俺は知識に関しては前世のものを引き継いでいるため、スピカよりも魔法に詳しいし、魔法理論も卓越している。この周回で新しく生まれた魔法理論がないかどうか情報を収集しつつ、師匠が前回の周回時と変化がないことも確認する。疑い続けるのは精神的に苦痛ではあるが、こんなところで失敗するわけにいかない。20年を繰り返し続けるのはそれなりにしんどいからな。


今回も今のところは師匠にも疑わしいところはない。魔法理論に関してはまだわからないところもあるが、過去の記憶とは大きな差異はなさそうだ。ということで、授業の殆どは実技及び魔法戦闘の訓練となる。


俺は前周回においては攻撃魔法、補助魔法、治癒魔法のいずれもこなせるようにマルチに魔法を学んでいたが、今回の周回では攻撃魔法に力を入れてスキルを伸ばそうと考えている。それは今後出会う仲間たちの魔法属性にもよるのだが、前回の記憶を活かしそのような選択をした。


補助魔法や治癒魔法を俺が習得したところで、勇者というジョブの性質により上級以上の魔法にはほとんど縁がない。それなら専用の魔術師に任せておいたほうが効率がいいし、俺自身も効率的に必要な技術に特化して成長することができる。


さて、授業に集中するとしよう。


「魔法にとっては魔力総量や魔力操作の技術が重要であると言われていますが、魔力を込めるときの気持ちの強さが魔法の練度や強度に関わってきます。見ていてください」


スピカはそう言うと右手で火球の魔法陣を描き出し魔力を送り込む。それを放つと真っ赤な火の玉が壁にぶつかって消え去った。


「次は、込める魔力量は同じですが少し気持ちの込め方を変えます」


そう言うと同じような操作をしてまた壁に向かって火球を放つ。そうすると今度は青色の炎を持った火球が飛び出していった。


「スピカししょう。いまのはどうやったの?」


俺は今までは見たことのない魔法技術について教えを請う。


「これは私が魔法大学の卒業論文で提唱しまとめた魔法理論ですが、例えば火は温度によって炎の色が変わります。それは込める魔力量によって調節することが可能ですが、それはプラタスさんはご存知かと思います。しかし全てを溶かし、全てを燃やし尽くすような激しさと冷静さを込めて発動すると同じ魔力量でも異なる効果を生み出すことが可能なのです」


「感情操作は非常に難しく、置かれている状況にもよるので多くの魔術師は魔力量で調節しますが、小さい頃から慣れておくと良いと思います」


スピカ師匠はニッコリと笑いかける。


「おこったり、かなしんだり、よろこんだりがたくさんの人にはむずかしいことですか?」


俺は疑問に思ったことは必ず質問するようにしている。


「はい。プラタスさんは理解が早いですね。そのとおり、感情をコントロールできない方は魔力量で調節するのです」


スピカ師匠はニッコリと微笑みながら教えてくれる。俺も褒められたことに対して無邪気な笑顔を作る。

これは初めて知ったな。魔力量による威力の調整は知っていたが、感情の操作で変わるとは考えてなかった。これはこれからの魔法技術の成長に大いに役に立つな。俺は感情の魔法への関与を習得すべく訓練に励む。


「さぁ、プラタスさんもやってみてください」


俺もスピカと同じように右手で魔法陣を展開する。このときには俺は頭に思い浮かべるだけで魔法陣を構築することができるようになっているのだが、スピカに疑念を抱かせないために基本的な魔法発動を行った。

俺は激しく燃える炎を小さく押さえ込み、冷静にそして正確に感情を制御していく。そうすると赤かった炎が徐々に黄色味を帯びていき、次第に白っぽく変化する。もう少しか?上手く行っていたことに気を良くして感情が乱れた瞬間にその炎は消失してしまった。


「ししょう、ちょっとまだぼくにはむずかしそうです」


俺は落胆の声を出す。


「私はこれを理論を提唱し身につけるのに大学生活を丸々費やしました。教えてすぐにここまでできるのはプラタスさんの才能です。自信を持っていいことですよ」


スピカ師匠は嬉しそうに俺を褒めてくれる。自分の提唱した魔法理論を目の前で自分の生徒が実証してくれるのが嬉しいのであろう。


今回は攻撃魔法に重点を絞ったことで、新しい魔法理論を知ることができた。きっと他にもまだ俺の知らない技術があるのだろう。そう考えるとワクワクしてくる。時間は限られているがまだまだ俺は成長できる。


それを信じて、新しいことを学び、精度や練度を高めるべく毎日の訓練に没頭するのであった。


この作品を見つけていただいてありがとうございます。皆様と出会えたことに感謝です。


もっともっと面白くてドキドキするような作品を書いていきたいと思います。よろしければブックマーク、下の☆で応援をよろしくお願いします。


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