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第18話 ロックス・オイラー

ロックス・オイラー、王都を守る守護の盾、オイラー公爵家の三男である。王都を保護するように領土を構え、敵国や賊、魔物といった国に害成す存在から王都を守護することを使命とした一族である。長男は既にオイラー騎士団のエースとして活躍し、次男は王族オルストス騎士団の少年部にて研鑽を積んでいる。

三男であるロックスはどうやら今は修行のためアランの道場に通っているらしい。

前世では王族付きとなっているオイラー家次男が俺と共に魔王討伐に向かうのだが、こいつが控えめに言って女癖が悪く、そして少しだけ性格が悪い。タンクとしてヘイトを稼ぐにはもってこいの性格をしているのだが、性格が悪いのが戦闘時だけじゃないから、実力はあっても全く人望はなかった。

ロックスは見た目こそのっそりとした印象を受けるが、優しさがあふれる眼差しをしており好感が持てる。手合わせしてみて実力を確かめたいな。俺の中では既に高評価だ。実力次第では唾を付けておいても良い。


「「よろしくおねがいします!」」


そう言うと、相手の出方を見ながらお互いに武器を構える。

ロックスはぽっちゃりとした体型にも関わらず意外と俊敏そうな雰囲気がある。

タンクだし相手からの攻撃はないと読んでいた俺は、ロックスの盾をどう切り崩して行くか考え始める。が、突然左右から円形の刃物が俺に向かって飛来する。俺は最低限の動きでそれを躱すと、クルクルと回転しながら盾の影に戻っていく。

驚いた。あれはチャクラムだな。魔法が付与してあるのか、手元に戻るようになっているらしい。あれで敵の意識を自分に向けて、味方が攻撃する際に隙を作るのか。自分の役割をしっかりと理解しているな。次は俺から仕掛けてみよう。俺は剣を正眼に構えると真正面から盾を斬りつける。盾とのインパクトの瞬間に力を込めるが、込めた力は盾にぶつかった瞬間にどこかに吸収されるように打ち消された。俺の剣の波長を読んで合わせてきたのか?と考えていると後ろから何か気配を感じ再び盾に剣をぶつけて生じた衝撃波を利用して後ろに飛び去る。一瞬遅れて、先程俺がいた場所をチャクラムが通過した。やるなあ。いつチャクラムを投擲したのか全く気が付かなかった。ロックスをただの盾役と思っているとやられるな。俺は次に少し変則的な剣戟を繰り出す。逆袈裟に放たれたその剣は、剣の織りなす波と俺の繰り出すインパクトのタイミングをコンマ秒程度ずらしており、ロックスの構える盾に一振りの剣で二度の衝撃を与える。これはインパクトにより生じる波をコンマ秒ずらして与えることで、波の強さを倍増する感覚である。そのずらした波長の効果により、盾を持つロックスの腕は恐らく痺れているだろう。やはり、試してみると色々と発見があるし、第一に剣を楽しく振るうことができる。

痺れた腕ではチャクラムの絶妙な操作はできないらしく、ロックスは俺の前に立ちはだかるのみである。その隙を見逃すわけもなく、俺は逆袈裟からの振り戻しの一撃を衝撃波と共に盾に振るう。盾とロックスは剣圧に押され5歩分ほど飛ばされる。それでもロックスは闘志を失わない。それどころか楽しげに口角をあげる。

戦う前のおどおどしたロックスはここにはいない。ぽっちゃりした体型に似合わぬ俊敏さ、チャクラムの繊細な操作、そして体格を活かした守備。しかも苦戦しているのに笑っている豪胆さ。前世でもロックスの名はその兄から聞かされていたが、こんな才能を持っているとは気が付かなかった。

手の痺れが取れたのか、ロックスは再びチャクラムを手にする。そしてチャクラムにこれまでとは違う魔力を込めたのがわかる。

それを見た俺は咄嗟に後ろからの攻撃を警戒する。が、ロックスは思いもかけず盾を構えたまま俺との間合いを一気に詰めた。俺の動きが止まればチャクラムのいい的になるから足は止められない。後ろにも引くことはできない。俺は左右に体を揺らしフェイントをかけロックスの頭上を飛び越えて背後に回ろうとする。しかし飛び越えている間に俺の動きを予想していたと言わんばかりに盾に隠れて後ろを向いて立っていた。このまま着地すればロックスの体当たりを食らうだろう。俺はロックスの頭上で方向を変えるべく真横に剣を振るい、その衝撃波でロックスの横に着地する。ここからでも盾に邪魔をされずロックスを攻撃できる。ロックスは俺が背後に回ることを予想して、真横からの攻撃には対応が遅れる。


決まったな!


俺がそう思った刹那、着地の瞬間を狙ってロックスのチャクラムが俺の体を斬り裂いた。俺は身体強化(加速)の魔法を使いこれを回避したが、チャクラムの真空波により腕に切傷を負った。


「それまで!」


ロジーナが俺とロックスに声をかける。


「二人ともいい動きだった。勝敗はつけにくいが、戦術面からロックスのほうが優勢であったな」


そう言うと俺とロックスを道場の真ん中に連れていき


「彼らの今の戦いから学ぶものがあったと思う。皆も鍛錬を怠らず研鑽することだ」


と、他の門徒へ激を飛ばした。


「坊っちゃん、ロックス、いい戦いだった。お互いに学ぶべき点が多かったと思う。経験から新たな技術を生み出すように」


俺とロックスの肩を叩きながら俺達に握手を促した。


「「ありがとうございました!」」


俺達は同時に言うと健闘を称えて握手をした。


「よいべんきょうをさせていただきました」


俺は先を読みきれなかった悔しさは残っているが、俺の剣術の変革に満足していた。


「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくのほうこそ、プラタスくんのおかげで色々な戦術を思いつくことができた。本当にありがとう!」


やはりロックスはいいやつだ。


「さいごのチャクラムにはどのようなまほうをふよしていたのですか?」


俺は気になったことを聞いてみた。


「あれはプラタスくんを追尾する魔法を付与していたよ。僕はヘイトを集めるのがあまり上手くないから、チャクラムを使って相手の意識を僕に向くようにしているんだ。相手がチャクラムに意識を向けていたら僕が隙を見つけて攻撃するし、僕に意識がきていたら、チャクラムが相手を攻撃する。ヘイトを集めるより、僕はその方が戦いやすいんだ」


ロックスは良い奴だからな。ヘイトを集めるのには苦労するだろう。一方で、ロックスの戦い方は魔物以外にも通用する戦術だ。オイラー公爵家の三男か。これはいい発見ができた。

こうして俺は将来の優秀なタンク兼剣士との邂逅を果たしたのであった。

GWで書き溜めないと毎日更新はしんどくなりそう。。。


いつも読んでいただきありがとうございます。

アクセス数とポイントが書き続ける励みになります。


これからもよろしくお願いします。

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