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第10話 グリーンタウン

グリーンタウンは王都と周辺の重要な拠点を結ぶハブ都市として栄えた活発な街である。商人や冒険者達はグリーンタウンのようなハブ都市で旅の準備を行い、そして様々な土地へと飛び回っていく。そのため、色々な種族や文化が混ざりあった人種の坩堝と言っても過言ではない。

俺達はグリーンタウンで特に準備することはないが、乗合馬車の時間まで時間もあるので街を見てまわる。

師匠達も久々にゆっくりと羽を伸ばせるとあって自然と笑顔が多くなっている。


「ロジーナ、あのお店を見に行きましょう!」


スピカが目を輝かせながらロジーナを引きずっていく。


「おいおい、スピカ、あの店は坊っちゃんには刺激が強いだろう」


珍しくロジーナが振り回されている。


「そうね、ローにもまだ早いかもしれませんね。プラタスさんとローは屋台で飲み物でも買って、そこのベンチに座って待っていてくださいませ」


スピカがロジーナを引きずっていく先には女性服、特に下着を扱うお店がある。

下着なんて見ていても欲情なんてするはずもないのだが、たいして興味があることでもないのでローと待っていることにする。


「ローせんせい、のどがかわきました」俺はローを促して飲み物を買いに行く。


「このエールとかいうものはなんですか?」


まぁ、知ってはいるのだが子供らしく聞いておく。子供っていうのは好奇心が旺盛じゃなくっちゃな。


「それは苦いものです。飲み物なんてものじゃありませんので、プラタス様はこちらの牛のミルクが良いと思いますよ」


ローとは今までにこのような関係になったことがない。初めてというのはいいもんだな。定形イベントばかりの周回人生の中では初めてのことは貴重な体験であり、もちろんこの先に何があるかわからない事だから油断はできないが、呪子の俺が普通の人として振る舞える大切な時間だ。


「ミルクはおうちでものめます。ぼくはそのエールとかいうものをのみます」


ローは困った顔をしてどうしたものかと思案している。そりゃそうだろう。4歳児にアルコールを飲ませていいわけがない。お酒は15になってから!が標語みたいなもんだ。


「プラタス様、エールを飲むとおねしょをしてしまいますよ。今から乗合馬車に乗って行くのに、そこでおねしょをしたらバンクール家の末代までの恥となるでしょう」


ローはなんとかして説得を試みている。本当に真面目な師匠だ。あまり困らせても可哀想なので、このあたりでやめておくか。何事も引き際が大切なのだ。


「わかりました。ぼくにはくだもののジュースをください」


ローにそう伝えると、ホッとした顔をして屋台のおじさんに何やら注文をした。


「あいよ!ミックスベリージュースの赤と白だね!」


おじさんが大きな声で注文を繰り返す。


「さぁプラタス様、ベンチに座って少し休みましょう」


ローに促され俺はベンチに座る。


「スピカししょうとロジーナししょうはなにをかいにいかれたのですか?」


俺はまたもやローに質問をぶつけてみる。


「それは・・・。最後まで自分を守る防具であり、かつ場合によっては武器にもなる、女性にとって重要なものですね」


なるほど、うまい言い回しだな。まあ、普通に下着と答えてくれても問題のない質問なのだが。


「ローせんせいはかわなくてもよろしいのですか?」


ローはああいうきらびやかな下着には興味がないと思うが一応聞いてみる。


「私もほし・・・、いえ、私は武器は使いませんし、防具は特注で作っておりますので。既製品ではサイズがなかなか合わないのです」


なるほど。ローは立派なお胸をしたうえ、体術家だから、特注でもないとゆさゆさして邪魔になるんだろうな。


「そうですか。ぼくもぶきやぼうぐはとくちゅうでつくりたいとおもいます」


そろそろ話を切り上げよう。


「そうですね。プラタス様の装備は王都に行ってから見てみましょうか。ただ、すぐに成長して使えなくなってしまいますので、今は汎用的なもので良いと思いますよ」


やはりローは真面目に考えてくれるな。

ちょうど飲み物を飲み干した頃にスピカとロジーナが戻ってくる。


「おまたせしましたー!」


「・・・」


スピカはウキウキとした表情だが、ロジーナは疲れ果てた顔をしている。

きっとスピカのファッションショーに付き合わされて疲れたのだろう。

ロジーナは屋台のおじさんに向かって疲れた声で尋ねる。


「おっちゃん、火龍酒はあるかい?」


おじさんは怪訝な顔でロジーナを見つめてから、


「あるにはあるが、お嬢ちゃん朝からそんなつぇー酒飲むのかい?」


と聞いてくる。


「ちょっと熱気にやられてね。喉が乾いているんだ。火龍酒なんて水みたいなもんだしな」


そう言うと瓶ごと受け取ってそのまま口をつけてひと口、ふた口と飲んでいく。


「火がつくほど強い酒を本当に水みたいに飲みやがるな」


おじさんが呆れた顔をしている。


「これお代な。足りてるかい?」


「あ、あぁ。ほら、お釣りだよ」


ロジーナは瓶を片手にベンチに戻ってくる。


「スタイルの良いやつはこれだから・・・」


ブツクサとまだ文句を言っている。

ロジーナは子供がハイキングに行けるくらいの穏やかな丘くらいしかないからな。ローほどではないが、それなりに大きく、スタイル抜群のスピカに見せつけられて、少しやさぐれているのだろう。


「それじゃあ馬車乗り場に移動しましょうか」


スピカが移動を促す。

納得がいかなそうなロジーナの手を取り、俺は無邪気を装って歩き出す。


「ロジーナししょう、はやくいかないとのりおくれてしまいますよ」


ニッコリと笑いかけると、ロジーナも吹っ切れたように笑顔になり、


「さあ、王都に向かうか!」


そう言ってスピカを追い越して我先にと馬車に乗り込むのであった。

読んでくださる方々いるから頑張って書くことができます。皆様に感謝(*˘︶˘人)感謝☆

読んだついでにブックマークと下の☆☆☆☆☆の評価をよろしくお願いします。

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