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第1話 目覚め

初投稿です。楽しんでいただけると幸いです。

悪夢が俺を襲う。


長い年月をかけて研鑽し仲間を集め、武器を調達し、いざ決戦の地に赴き、魔王と相対し、1人、また1人と仲間が倒れ、最後には俺自身も真っ暗な闇に包まれ、そして意識が途絶える。


☆☆☆


俺は真っ暗な部屋の中で目を覚ます。そこには確かに何かが存在する。どこにというわけではなく、あらゆるところにそれは遍在している。


どこからともなく声が聞こえる。


「今度の周回も駄目だったねぇ」


落胆しているようでもあり、笑いを堪えているようでもあり、憤慨しているようでも、優しさに満ち溢れているようにも聞こえる不思議な声だ。


「君はまた、いくつかの記憶を代償に人生をやり直すことができる」


「概ね君の記憶は正確だから大丈夫だと思うけど、失われた記憶や知識もあるから気をつけるんだよ」

「ここでの会話は忘れちゃうと思うけど、僕達(私達)は君に期待しているんだ」

「運命に抗い、奇跡を起こし、そして困難に打ち勝ってもらいたい」

「武力を磨き、見識を広め、技術や機能を創造し、努力が報われずに落胆し、仲間との美しい友情を育む」

「誰もが怒り、誰もが笑い、誰もが心を打たれ、誰もが悲しみに暮れ、誰もが喜びの涙を流す」

「みんなが感動するフィナーレに君が導くんだよ」

「さぁまた幕が上がる。行っておいで。次の周回の君に幸福を!」


☆☆☆


目が覚めると、見慣れた天井が目に映る。

そして眩しい光と共に笑顔の男性と涙を流した女性が見える。そう、俺の父と母、ロディとイリアである。

何度目の転生になるのかもう数え切れぬほどであるが、また失敗したのだと俺は悔しさに烈火の如く泣き叫ぶ。


「まぁまぁ!元気な男の子だねぇ」


助産師のお婆さんが母の胸に俺を預ける。

母はまだ目元に涙を浮かべているが、とても嬉しそうな笑顔で俺にこう言うのだ。


「生まれてきてくれてありがとう!私達のプラタス!」


プラタス。それが俺の名前。プラタス・バンクール。中級貴族の家に生まれた勇者であり、20年後に魔王に挑むことが決定された呪子である。俺はこの世界を何度も何度も周回している。


今から12年後に魔王が降臨し、20年後に魔王により世界が滅ぼされる。それは俺だけが知り得る情報で、俺が転生前の記憶を引き継いでいるからである。しかし、記憶については一部欠損していることがわかっており、前回は魔王討伐に必須のキーパーソンを仲間にしなければならないことを忘れていて、魔王に無惨にも殺されたのだ。転生している間に記憶を照合する時間があるのだが、毎回必ず重要なことを忘れているらしい。今回は何を忘れていることやら・・・


今回も無事?に魔王討伐に失敗して、また一時の幸せな家族時間を過ごすことができるわけだ。悔しさに涙が止まらねぇ。


これが俺にかけられた呪い。誰にかけられたのかはわからないが、20年後に魔王を倒せないと一部の記憶を欠損した状態で誕生からやり直し。魔王に挑もうが、挑まずに別のところで死のうが、のほほんと暮らして生きていようが、強制的にやり直しをさせられる。魔王を倒したらどうなるのかなんてことはわからないし、倒した記憶を消されて転生させられてるのかもしれないが、魔王を討伐できなければここに戻ってくる事は確かだ。


「プラタスは元気ね!」


俺は現実に引き戻される。今の俺は赤ん坊だ。前世から知識や記憶は引き継いでいるものの、赤ん坊の俺にはそれを使う筋力や体力はない。つまり知ってはいても言葉を操るための筋力や声帯はまだ育っていない。


「ウギャーーー。ダーーーーーーー。バブーーーーーー。はーぃーーーーー。」


意味のない何かを発することができるだけだ。


「お腹が空いているのかしら?ふふふ。見てロディ。目元があなたにそっくりよ」


いかにもモテそうな顔立ちの父だが、まぁ実際にモテまくりなのだが、そのおかげで母と母の実家に帰ることになるのだが、俺の5歳から8歳の期間は殆どを母の実家で過ごすことになる。母は旧公爵家の3女でありかなり裕福な家柄だ。そのおかげで、学ぶべき書物が多く存在するし、魔法の禁書も地下室に隠してあるのを知っている。内容は全て記憶しているので最近の周回ではもっぱら彼らの持つコネを利用して修行だったり仲間集めだったりをしに行くのだが、母の目的とは全く別物だ。


「目元は俺に似ているが、目の色はお前に似て虹色だな。いや、片目は薄いグレーか。オッドアイとしてもかなり珍しいな。この子はきっととてつもない才能を秘めているぞ」


「元気に優しく育ってくれたらそれでいいのよ」


母は優しい目で俺を見つめ、父は嬉しそうに俺の頭をそっと撫でている。


こうして俺の人生が再び動き出すのであった。


まだまだ駆け出しですが、この作品を見つけていただいてありがとうございます。

これからも書いて行きたいと思いますので、よろしければブックマーク、下の☆で応援をよろしくお願いします。

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