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魔物による魔物のためのストラテジー  作者: めぐ
手と手を合わせて
13/16

同盟のまえに

 コボルトの集落に到着したのはもうすっかり暗くなってからだった。

 真ん丸の白月が地面を明るく照らし、僅かな松明の灯りだけでも十分に建物やその全貌をみることが出来た。


「これだけ明るければ夜闇に紛れることも出来んだろうから、今夜の襲撃はなさそうだな。 きっと明日の早朝になるだろう」


 ハントさんがまだ無事であった集落を眺めながら自身の見解を述べる。


「がっはっはっ!何時来ようとやることは変わらんがな。どのみち全員ぶちのめすだけだ」


 ホブおじさんは相変わらずに愛用の棍棒をぶんと肩に担ぎ大声で笑う。

 2人はここまで走り続けて来たというのに、それほど疲れは見えない。祭壇で儀式を行ったことによって2人の能力値(ステータス)はかなり上がったようだから体力も相当上がったみたいだ。

 僕自身にも儀式をしてはみたんだけど・・・。元が()()()()()()()だからか、対して能力値(ステータス)は上がらなかった。なので僕は同行していたコボルトの背中に乗せて運んでもらっていた。

 ま、まぁその代わり僕にも能力(スキル)が備わっていることが分かったんだけどね。それはのちほど。


「ホブおじさん・・・。変なことしてコボルト達を警戒させないでよ?何も騒ぎになってないところを見ると、ヒーラー様達がきっと上手くやってくれたんだろうから・・・」


 ハントさんとホブおじさん。他、戦力の強化のために一度棲みかへと戻った僕達より先に、ヒーラー様とメイ爺達はコボルト達と一緒にこの集落に到着しているはず。事前に同盟のことは説明してくれてるだろうから何も起きていないということは、ひとまず断られはしなかったということだろう。


 僕達が到着したことは入口の番をしていたコボルトが知らせてくれているはず。しばらくすると見知ったコボルトがこちらに近づいてきた。


「お待ちしてました。皆さんご無事で良かったです」

「やあビーグル。その調子だと話は上手くいったみたいだね。早速で悪いけどあまり時間がない。偉い人のところに案内してもらえるかな?」

「ええ。どうぞこちらです」


 3色毛のコボルト─ビーグルに連れられて集落の真ん中に建つ一際大きな建物へと案内される。入口の前には灰白の大きなコボルトが恐い顔で立っていた。


「ハスキーさん。皆さんをお連れしました」

「皆もう揃っている。中に入れ」


 こちらに訝しむ視線を向けながら無愛想に中へと進むようにと言うと、先にスタスタと歩いていってしまった。


「・・・なんだか感じの悪い人だね。何様なの?」

「あ、あの人は族長の親衛隊長の1人のハスキーさん。すごい強い人だからそんなこと聞かれたらどうなるか分かりませんよ・・・」

「ふーん」

「ほう?確かに強そうだ。ひとつ試してみるか?」


 ニタァとホブおじさんがよくない笑顔を浮かべる。まったくこの戦闘狂は。


「ホブおじさん?やめてって言ったよね」

「がっはっはっ。冗談だ冗談。まぁ向こうから挑まれたら拒みはせんがな?」

「はあ・・・」

「・・・この中だ。族長に無礼なことをするなよ」


 そんな僕達の会話が聞こえてるのか聞こうとしてないのかは分からないけど、まったく気にもしてないようで突き当たりの部屋の扉を開けた。


「・・・来たか。待っていたぞ。さあそこに座ってくれ。じっくり話そうじゃないか、()()についてな」


 部屋には大きな机といくつかの椅子が置かれていて、そのひとつにビーグルと同じ3色の長くて立派な体毛を生やしたやたらと迫力のあるコボルトが座っていた。その後ろには金色のコボルト。向かいの椅子にはヒーラー様とメイ爺も座っていた。言われるがまま2人の間に座ると正面の族長らしきコボルトが腰を上げた。


「まずは此度は我等から貴殿等を滅ばさんと攻め入ったにも関わらず、若い者等の命を極力奪わずにいてくれただけでなく、我が一族の危機に同盟という形で助力を申し出てくれたことに、礼を言おう」


 すっと頭を下げる。後ろに控えていた灰白と金毛のコボルト達が少し慌てていた。その2人の僕を睨む目が恐くて僕まで焦ってしまう。


「いやいやっ。なるべく命を奪わないようにしたつもりだけど、それでも結果的に40人くらいの命を奪ってしまったし、同盟に関してもこちらにも利があるから言ってみただけだから、そんなに畏まられても・・・」

「別の種族同士が命を奪い合うのは必然で当たり前のこと。互いに命をかけた結果ならば文句は言うまい。そちらとて条件は同じだったはずだ」


 うーん。魔物とはこうもさばさばとした考え方が当たり前なのだろうか。僕は出来れば誰にも死んでほしくない。それが必要であったとしても、極力命を失ってほしくはないんだ。


「それでも、救えるのなら僕は救いたい。それがゴブリンじゃなくても。それにコボルト達が負けちゃったら次は僕達がやられちゃうみたいだしね?」

「そうじゃな。人間らにやられた儂らなどトカゲからしたらさぞかし滅ぼし甲斐があるだろうしのぉ。それはお前さんらも一緒だったじゃろ?」


 メイ爺はこんな場だと言うのにいつものように笑い声を上げた。


「ああ・・・そうだな。そう言ってくれると助かる。では前置きはここまでにして本題に入るとするか」


 族長は誰かさんと似たような好戦的な笑顔を浮かべると、ドンと勢いよく腰を下ろした。


「同盟とは言うが、我には貴殿は単なるひ弱なゴブリンにしか見えん。回りの者共は少しは腕が立つように見えるが、貴殿がその中心に居るのには納得がいかんな」

「えっ?えっ?!そ、そりゃ僕はたしかにか弱い単なるゴブリンで合ってるけど、中心だなんて僕はそんな大層なものじゃ──」


 急に何を言い出したかと思えば僕が中心だって?それって僕がゴブリン族の族長みたいじゃないか。あれ?そういえば僕達に族長みたいな存在っていたのか?


「シダ。貴方は我々の"神"の名を授かった我々を導く存在なのです。中心に居るのは当然ではありませんか」


 ち、ちょっとヒーラー様。いったいあなたは先に来てこの人に何を言ったんですか?


「いやっ、それは名前だけであって、僕自身が神ってわけじゃないんだから、その考えはどうかと・・・」


 このままではヒーラー様にいいように祭り上げられてしまう気がする。頭のなかに()()()浮かび上がる知識を使ってコボルト達を撃退したり、今回コボルト達と協力して戦おうって言ったのも僕なんだけど、別にそうなりたかったわけではない。僕はいたって普通のゴブリンなんだから。


「──そこでだ。共に奴等と戦うだけの力を貴殿が持っているのかを確かめさせて貰いたい」

「はいはい、それぐらい──えっ?今、何て言いました──?

読んでくださっている皆様。誠にありがとうございます。ブックマークして頂いたかたもありがとうございます。とても励みになります。もし良かったら評価・ブクマ頂けますと幸いです。

併せてメイン執筆中の『盾の騎士は魔法に憧れる』も何卒宜しくお願い致します。

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