在りし日の追憶
前半部分のお話は、非常に珍しい『生前』のユイのお話です。
友達って、どう作る? そう意識した時点でなんかもう無理な気がする。できる人って、小学校入学とか、クラス替え、進学とか……何かしらのタイミングで自然と出来てるもんだと思ってる。……わたしはことある事にそのタイミングを逃し続けて、真っ当な友達と言えるような人はいなかった。別に虐められてる訳でもないし、嫌われてもいない。単に、友達がいないだけ。だからお昼は一人で食べるし部活も入らないし帰りも1人。休みの日は家にいるか、1人で好きなところに出かける。別に、それでいいと思う。
「……一人の方が楽だし」
まあ、わたしがすこし変わってる子なのかもしれないけど……なかなか人と趣味は合わないし、心の奥底にはけして治ることの無い『純潔の闇』が燻ってるし! (要するに永遠の厨二病)。表には出さないけど、そんなことばっかり思ってた。
でも
「お〜い、ユイ!! また1人で下向いて歩いてる……しょうがないからあたしが一緒に歩いてやる! ほらほら、いこ!」
「……アリサ……!」
下校中、一人で歩いてたら後ろから来た女の子。……こんなわたしの、唯一の友達。そして、心の底から……もしかしたら、家族より信頼出来るかもしれない子。南美有咲……小学生の頃から、何故かわたしと仲良くしてくれていた。
「あたしが来ると一気に嬉しそうになるよね〜さてはユイ……あたしが好き? レズか?」
「いやいや、友達が来てくれたら誰だって嬉しいよ、多分……」
(友達他に居ないからわからんけど……)
「ん〜、そんなこと言って〜……あたしに彼氏出来たらどう思う?」
「えっいるの?」
「いるわけないけど」
「……そっか」
そんな、他愛もない会話。多分、普通の人はいつも色んな人としてるんだと思うけど、わたしはそうもいかない。アリサはすごいいい子で可愛いし、わたしとは全然違って友達も沢山いる。部活も入ってるから忙しい。それでも、たまにこうして一緒に帰ってくれる。
小学校から一緒だったけど、中学で一旦別々になってしまってた。だから、なんとなくもう会えないんかな……とか思ってたら、なんてことは無い。高校でまた会えた。今思えば不思議なことだけど、3年間全くあってなかったんだよね。なのに、アリサは高校で再会するのまるで小学生の時みたいなノリでわたしと遊んでくれた。ちょっとバカみたいだったけど、心の底から嬉しかった。思い返すと、アリサがいなかったら中学の3年間、本当につまらなかったし我ながらよく耐えたと思う。
「ユイ、英語得意だっけ?」
不意に、アリサが言う。
「めっちゃ苦手……絶対テストに出ないようなかっこいい言葉なら知ってるけど!」
「生贄とか?」
「よくそれ真っ先に出てきたね」
「あたしさ〜、別の世界でユイと巡り会ってたら多分世界を救ってたと思うんだよね〜!? 色んな人と仲良くしてても、ユイほどこう……なんて言うか……波長?が合う人いなくてさ!」
「だったらわたしが勇者かな〜、多分強いし。あと、せっかくなら友達ももっと欲しいかも……!」
「勇者なら友達くらい簡単に……んな!? もうこんな時間! ごめ、ごめん! 今日塾行くから急いで帰る! また明日会おうぞ〜!!」
「おけー、ばいばーい」
(会おうぞってなんだ……)
制服姿で元気に走るアリサを見送り、わたしはまた自然と俯いて帰る。これがわたしには似合ってる。
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(もし、アリサがいなかったら……)
小学校の時点で色々嫌になってたかも。たった1人の存在だけど、その1人はわたしにとってあまりにも大きかった。
(ていうか明日祝日じゃん……アリサ忘れてたのかな。……せっかくだし、一人でどっか行こうかな……都内の方とか)
もしも神様とかいるとしたら、きっとアリサはその神様がわたしのために用意してくれた存在なんじゃないかなって思うほど、わたしにとって輝いてるし、必要な人。未来永劫、こんなに仲良しで大切な人は出会えないと思う。
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(アリサ……やっぱり、みんな違う。いくら仲良くなったつもりでも、アリサみたいには思えないよ……)
住む世界が変わってからは極力アリサのことは考えなかったし、『そんな人は最初からいなかった』ぐらいに思い込むようにしてた。それでも、夜寝る前とかにふと思い出して悲しくなってた。マリアやスティアはわたしのこと大好きすぎるし、絶対信頼もしてくれてると思う。もちろんわたしもみんなのことは好きだし (一部除く)、友達だと思う。でも、やっぱり違うよ。所詮それはズルで貰った力の恩恵だし、周りのみんなに相応しいような人間になんてわたしはなれていない。どんな悩みも、楽しいことも、何でもかんでも気遣いゼロで話せる相手……そんな人、誰もいない。
周りに沢山人がいて、友達だって多いよけど……どこまでがわたし本来の人間性に惹かれてくれてるのかわからないし。
(……だから、イブ達には申し訳ないけど……わたしはもうこの世界には居られない)
女神に与えられた奇跡のチャンス。絶対に手放せない。カレンを倒したら、みんなにお礼と謝罪をして、還らないと。




