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疑心の穴

(スティアの言うことは最もだよ……根拠の無い妄想といえばそれまでだし、そんなの不安症でしかないけど……ちょっと怖い)


 たしかに、色々と上手くいきすぎなんだよね。だって、これでもうナナミに言われた必要な人材は揃った。それに、なんでか知らないけどカレンはずっと何もしてこない。そもそも、ルナがこんなに簡単に理解してくれるのも想定外だった。もっと言えばここでスティアが来てくれて、訳の分からない強さの蹴りをしてアシストしてくれたのも予想外。そしてわたしはほぼ何もしていない。まっ、真打しんうちが出る幕はまだってことでね。


(………………いやいや、そんな変な妄想に取り憑かれて不安になるなんてわたしらしくない)


 目の前の光景を見れば分かるでしょ。ルナはわたし達に手を貸してくれる気だし、ここには4人もう揃ってる。あとはタイミングがいいときにメルを呼んでくればもう準備は整う。あと、ルナは少し勘違いしてるけどまあいいか。わたしは世界を守るとは言ったけど、別にこの世界が滅ぶとは言ってない。……けど、その勘違いは正さない方がいいかな。その方が協力してくれそう。


「……ユイ」


「あ、なに? お呼び?」


 ルナはわたしに近づいてきて、やっぱりどう見ても常人とは違うその瞳を大きく開いて、顔を近づけて詰めてくる。


「貴様の宣う世界の危機とやら……早急に我にも説明しろ。まさかこの場を適当に収めるだけの妄言ではあるまいな? もしもそうなら我は二度と貴様と言葉を交わすことも無く、刃のみを交えることになる………くっくっくっ……」


「もちろん、嘘なんかじゃない。それはこれから話す……けど、ここじゃダメ。だから、3人ともちょっとまってて。」


「あ、ユイちゃん……」


「おいおい、どこ行くんだ?」


(ここにずっと居たら街の人達にも迷惑……それに、周りにずっといるお城の兵士の人たちもこの状況はきっと理解出来てない……まずはそこから)


 とりあえず、1番近くにいた兵士の人の元に行く。近くまで行くと、やっぱりなかなか強そうな人。さすがお城の兵士さん。30代くらいの男の人かな。


「あの、ちょっといいですか?」


「どうした……というか、いまどういう状況なんだ? 勇者イブとお尋ね者ルナが戦い始めたと思ったら突然変な女が現れて……ついにルナを捕らえると思った矢先、話し合いをしたと思えば武器を返して警戒までとく……我々には全く理解できない。」


 非常に困惑顔で起きた事実を振り返ってくれた。言葉にすると尚更訳分からんね。


「ええっと……まあ、その……ルナとは一応話が着いたんです。きっと、わたしとイブには勝てないってわかったんじゃないですか? で、それで相談なんですけど……少しの間だけでいいので、ルナ……わたし達と一緒にいてもいいですか? もちろんこんな騒ぎを起こさないようにはするので……用が済んだらそちらに渡すので!」


(……ルナが犯罪者ってのはわかってるけど、とはいえこれはちょっと酷いな)


 利用するだけ利用して、用が済んだら投獄……って、そもそもルナって大人しく牢屋に入ってくれるのかな。アルマは脱獄してたし……まあ、失敗を踏まえた上できっと牢屋の仕組みも変えてくれるはず。そうじゃないと困る。


「一応確認だが……あんたらもルナの仲間……なんてことはないよな?」


「無い!! 絶対ないです!! だって勇者のイブも一緒ですし!! ほんとに、そこは安心してください!」


「………あんたとあのへんな女だけだったら信用しなかったかもしれないが、勇者イブがいるなら信用してもいい………が、3日以内にしてくれ。それより長引くとこちらも色々と面倒になる。」


「3日!! ありがとうございます!! なんなら今日中にでも終わらせるので!!」


(……うん、できるはず。メルをどうやって呼び出すかって言うのはあるけど、多分それは何とかなる。お呼ばれしてないのに直接会いに行くのは無理だろうから、そこは別の方法で……)


「なんだかよく分からんが、妙なことだけはするなよ……と、そろそろ我々も引き上げる。あの脱獄犯のこともあるしな。」


「はーい!!」


 話も着いたので、ルナの方に戻る。あとは一旦わたしの家にでも行けばいいかな。


「おまたせ〜………ん」


「えっそれまじで?」


 わたしが戻ると、3人がなんか楽しそうに話してた。


「ほんとよ〜」


「ふん……たしかに貴様のあの蹴りは我の脳の奥底を揺さぶるような慟哭を感じた……僅かな一瞬だったが、我が瞳に映る世界は混沌とした……」


「何の話?」


「お、戻ってきたか。兵士と話は着いたのか?」


 まずはイブがわたしに気がついて言う。


「うん、で、何の話してたの?」


「とりあえずどこに行くの〜? ユイちゃんのおうちかしら〜?」


 続いてスティア。相変わらず眠くなるような喋り方……。


「そうしようと思う。それで、なんの話ししてたの??」


「……………」


 ルナは何も言わない。刃はもう収めてるし、目を見ると戦ってる時よりかは少しまともに見える。相対的にってことだけど。


「ねえねえねえ、なんの話ししてたの」


「てかよ、お前の家まで行くのはいいけど……ルナを連れて歩くのはやべーだろ? こいつガチ犯罪者で街のヤツらビビるだろ?」


「あ、それはちゃんと考えてあるよ。それで、なんの話ししてたの?」


「それじゃあユイちゃん、その考えおしえてくれるかしら〜」


「………はい」


(………むぅ)





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