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認めない認められない

「さっきから勘違いしているようだけれど、これは提案でも交渉でも頼み事でもないのよ。貴女に選択の余地なんて残されていない……ふふ、いくら何を言おうと貴女が選ぶ道はひとつ……」


「残念ですが、私も、フィリア様も、オーリン教も脅しに屈服するほど脆い存在ではありません。もしもあなたが本当になにか行動に出ると言うなら、もちろんこちらとしても黙ってそれを受け入れるわけにはいきません。」


 凄い険悪な感じで、2人はテーブルを挟んで睨み合ってる。依頼の報告にきただけのはずなのに、どうしてこうなるかなぁ……いっそソフィアさんも止めに来てくれればいいのに。しばしの沈黙、そして


「迷惑なのよ!め・い・わ・く!!

 喧嘩ならよそでやりなさいよ!! あたしもユイも大人のみっともない口論を仲裁する義理なんてないんだから! 」


 またまたキレ気味なリズは2人を交互に見ながら机を叩いて声を荒らげる。まあ、それは正論。


「ふふ、まあいいわ……時が来ればわかるものね。その時に……正義を掲げた仮面の使者は何をするか……楽しみにしてるわ………ふふふふ……それに……()()()()()()()()()()()()()()()……よ」


「わ、わたし!? ちょ、それってなにが……あー !! 無視しないで!!」


 お得意の意味深発言を残して、カレンは立ち上がり行ってしまった。追いかけようとしたけど、リズとエルザから謎の圧力を感じたから足が止まってしまった。視線で追うと、カレンは受付の人に食べたものの分のお金をちゃんと払って、外に行ってしまった。少しすると、エルザが口を開く。


「どうせ、戯言です。何も気にする事はありません。あの方は……以前から用もなく教会に来ては私やフィリア様にわけのわからないことを言う……そんなことばかりです。冒険者としてのランクが高いのは事実ですが、()としてなにか踏み外しているような方……と言った所でしょうか。」


(人として……踏み外しているような……)


 確かにまあ……人の道からはとっくに……というか最初から外れてるだろうけど。なんせ女神だし。


「はぁ〜……全く。偶然来てみたらこんなわけのわからない言い争いに巻き込まれて……ユイ、あの女の人と知り合いなのよね? たしか……すごい沢山食べる人……だったかしら。マリアからも聞いた事あったの、思い出したわ。」


 リズも立ち去ろうと出口の方に向かいつつ、振り返って言ってくる。


「知り合い……まあ、うん、大体あってる。なんか変に目つけられてるみたいな……?」


「……? よくわかんないけどあんたって面倒なことたくさん抱えてそうよね。なんでもいいけど、間違ってもあたし達のこと巻き込まないでよね? そっちはそっちで勝手にやって欲しいわ。じゃあね。」


(……心配しなくても、リズを巻き込む気は無いから。)


 とはさすがに言えないから、黙って見送る。リズが出てくと、続いてエルザも歩きだし、出口に向かいつつ言う。


「ユイ……たとえ何かあったとしても、あなたが関わる必要は全くありませんからね。あなたはただ、今の自分にとって必要なことをすればいいだけ……具体的には、金銭的な問題を。」


「あ、うん……」


 なんかちょっと忘れてたけど、わたしは借金あって、期限までにこれを返さないと色々と終わるんだよね。だから実際、首突っ込んでる場合なんかじゃない。そうなんだけど……。


 そんなことを考えてると、エルザも出て言ってしまってギルドの中にはわたしと受付の人だけに。あの人、いつの間にかカウンターの向こう側にいる……服装は私服っぽいけどね。


「あの」


 当初の目的を果たすべき、カウンターにいき話しかける。


「あー……あ、そうでした、まずは依頼の件ですね。草のひとつでも持ってきてくれましたか?」


「いやー、すっかり忘れてたんですよねー、自分でもびっくりですよコレ。」


 途中で思い出してたけど、それはもうライズヴェルに戻ってきてから。イマサラどうにもならないから諦めて素直に報告する。


「あ、そうですか。でも平気ですよ。よく分かりませんけど、ギルドマスターから言われたんです、ユイさんが帰ってきたら依頼は成功という扱いにしていいと。何かあったんですか?」


「それはー……ひ、秘密です。」


 わたしが隠すと、一瞬疑うような顔をされたものの、すぐにまた笑顔になり受付の人はお金の入っている袋を出してくれた。


「わかりました、ではこれが色々差し引いた分の報酬です。………ところで、先程の口論……なんだったのでしょうかね? 私はよくわかりませんけど、ユイさんは知ってる感じですか? あれのせいで、お客さんは今日みんな帰っちゃって寂しいですよね。もう私も帰る気で着替えちゃいました。」


(やっぱりそれ私服か……)


「あれは、その……なんというか」


「あ、それより」


 一体どう言い訳するべきなのか、なんて考えて喋りだしたら、そのとたんにすぐに遮られた。


「?」


「ユイさんにお願い……と言ってもギルドとしての依頼ではなく、私の個人的なお願いがあるんです!」


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