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偽りと失落の勇者

「で、これからどうすんの?ボクは何をすればいい?」


「ん〜…ちょっと待ってね、考える」


 やることが多いし何から手をつければいいかわからない。すると、イブがなんとも言えない微妙な表情で言う。


「……じゃあお前が考えてる間にボクは()()()でも言うとするか。ボクのいた国のことだ。」


(………なるほど)


 全くもう、ツンデレさんだなぁ。素直に話してくれればいいのに〜


「ボクが国を旅立つ前の話……」






 




「あ、これ回想入る系のやつ?」


「そんなに昔のことでもねーけどな……」


(独り言だから無視か……)

 ―――――――――――


 ――――


 ――



「……冗談みてーだな……」


 後に勇者となる少女、イブはノーザンライトの城のテラスから城下町、そしてその先まで続く雄大な自然を眺めていた。……しかし、その視線の先にあるのは活気ある街や生命の息つく自然ではない。街や森は炎に包まれ、命は散り、そこには破壊と嘆きと絶望しかなかった。


「イブちゃん……」


 後ろから声をかけ来たのはイブと同年齢の、ドレスを纏った少女。イブと似たような色の髪は腰まで伸びていた。


「セーラ……何してんだよ、とっとと逃げろ。お前が死んだらもうどうしようもねーんだろ?」


 セーラと呼ばれた少女は首を縦に振り、しかし否定する。


「それはその通り……しかし、そういう訳には行かないの。きっと、逃げたところで死に場所を変えるだけでしかない。それなら……私はイブの傍にいたい。……ノーザンライトが作り上げた、偽りの勇者伝説の継承者……あなたしかいないもの。」


「おいおい……なんかバカにされてるような気分だなそれ。『お前は所詮偽物だ』……みたいな。」


「……さすがイブちゃん。こんな時でも変わらない。」


 そして、2人は笑みを浮かべた。しかし、眼前に迫る脅威を前にしてのそれは最早諦めに近かった。


「それにしても……他の国のヤツらは想像もしないだろうな。世界の中心とも言えるほどの国がこんな惨劇に見舞われてるなんて。バレてねーのか?」


「偽りの勇者伝説を世界に信用させるような国よ。たとえ国の中でどんな悲劇が起きようが、嘘で塗り固めて『この国は平和』と思わせることなんて簡単。……でも、いつかはバレる……だったら、こっちから行動を起こすべきよ。」


「……何ができるってんだ」


 ノーザンライトを襲う脅威は普通の人間の力でもなければモンスターのせいでもない。()()()()の力を手にした、たった1人の人間によるものだった。


「……あいつ、何者なんだろう……国の兵士達も1人で跳ね除けて、イブちゃんのあのすごい魔法も全く効かなかった。それに、持ってた武器……見たことないものよ。」


「あいつの力は魔法とか既存の力で説明できねーよ……正直にいえば、ボクだって恐怖を感じた。なんの気まぐれかとりあえずは帰って行ったが……この有様だ。次に来たらもう終わりだ。王も王妃もぶっ殺されたんだろ? だからこそ……姫だったお前は生きないとダメだろ。本当はボクが守ってやりてーけど……ダメなんだろ? ボクは偽りの勇者として、遠い田舎の国にいく……そして、なんだかしらねーけど()()()()()の力でこの災いを沈める……。」


 まるで、()()()()が来ることを見越して用意されていたかのような偽りの勇者伝説。世界はそれを信じ、イブがそれを名乗れば皆盲目的にそれを信じた。異国の地で自由に活動するにはこれ以上ないくらいに適している。


「女神様とか、いるのかな……願いを叶える女神様」


 目に涙を浮かべて呟くセーラに、イブは笑って言い返す。


「そんなもんいねーよ。神も悪魔も存在しねーよ。あるのはどうしようないクソッタレな現実と、ボクのこの力だけだ。もしも神がいるなら……この国を壊すあいつはなんのために作ったんだ。あんなイカれたもの作る神、いねー方が幸せだ。そうだろ?」


「……そうね。」


「じゃ、明日にでもボクは海を超える。残されたヤツらは……絶対死ぬな。あいつが来ても戦うな、隠れろ、出てくるな。いなくなるまで待て。勝てるわけが無い。3つのエレメントを合わせた魔法も、ボクの剣技もまったく効果がないバケモンだ。……絶対帰ってくるから、それまで生きてろ。約束しろ。」


 イブは剣を抜き、赤く燃える夜空にそれを掲げる。


 「イブちゃん……待つよ。私は絶対生きて、イブちゃんが帰ってくるの待つから。ノーザンライトを救う英雄……()()()()()になって帰ってくるって信じてる。」


 そして、セーラは剣を握るイブの手に自分の手を重ねる。


「本物の……か。力だけはあっても人から好かれるような事のないボクに、本物の勇者なんて無理だな。力で支配する暴君だとか独裁者だとか、なんなら悪の魔王なんかの方がまだ向いてるぜ。……セーラもそうおも」


「……私は思わない。だって、イブちゃんはもう私の勇者よ。」


 イブの言葉を遮ったセーラ。しかしそれは言葉だけで遮った訳では無い。イブにそれ以上喋らさないために、


 ―――――――――


 ―――――


 ―――



「……これ以上話すこともねーか」


「待て待て!! それは許さない! 今めっちゃキテタでしょ! ここからでしょ!! え、めっちゃ気になるけど。ていうかセーラって人何者?お姫様? イブの友達? 昔から? イブって王家の人と仲良いの? え、ていうかノーザンライトに現れたバケモンって何? 人間なの? 」


「黙れ、殺すぞ」


イブは本気の目で剣を抜いた。あ、無理。


「だってさー!? イブが話したんじゃん!! え、だって今の流れは絶対(kiss)じゃん!!」


 わたしなんかよりよっぽど素質あるよ! 本物じゃん! えーセーラとの関係めっちゃ気になるけど。もうそれ本編で良くない?『偽りの勇者伝説 〜祖国に捧ぐ愛となんとか〜』とか。


「おい、とっととこれからどうするか考えろよバカ女」


 剣はしまったものの、今度は魔法でもうってきそうな勢いのイブ。


「うわ、酷……差別?」


「おまえ前よりめんどくさくなったよな?」


「まあ、そりゃあ……こんだけ変な人たちに囲まれてたらねぇ?」


「……『類は友を呼ぶ』だぜ」


「ふっ……今回はわたしの負けでいいよ。……実は考えてたから、今から言うね!」





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