神がライバルでも
奥の部屋から出ると、受付の人が出迎えてくれた。いつもとは逆の方からみるカウンターの奥……要するにギルドの中はすいている。暇そう。
「どうでしたか?」
「まあ……素直に話したらとりあえず許されました。」
「ふむ……事情はよく分かりませんがそういうものなんですね。」
「いや……多分今回のわたしが特別なだけだと思う……普通は許されてないはずです。」
「はあ?」
受付の人は『こいつ何言ってんだ』みたいな顔でわたしを見て、カウンターの外側へとわたしを促す。それに従って外側に回ると、すぐに横から声をかけられた。
「おい、久しぶりじゃん。どこいってたんだ?」
その口調と声は顔を見なくても誰だかわかる。視線を向けると、やっぱりイブがいた。
「……色々行ってた。そうだ、それについてイブに話したいからわたしの家来てよ。」
「……お前にしては真面目そうな感じだな。いいぜ、どうせ暇だしきいてやる。……だけど、もしくだらねー話とか、しょうもない事だったら……」
「大丈夫……大切なことだから」
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わたしの家。ベッドに並んで座って、わたしの身に起きたこととか、これからやるべきことをイブに話した。
「……スティアとかいう変な女神がいて……カレン……ああ、あの黒服の変な女……あいつが元女神で妙なこと企んでて、ボクが目指す霊峰には数多の世界を創造した女神がいて……その女神の力をかりてカレンの企みを止めたいからルナとかと仲良くしろ……おいおい、嘘つくにしてももっとマシな嘘つけよな。」
口ではそう言いながらも、イブは真剣そうにわたしの話を聞いて、いまも本心では違うことを思ってそう。(わたしが異世界から来たことはまだ秘密)
「……この際だからきくけどさ、イブの本当の目的ってなに? ベルズバインには化け物なんていなかったよ。」
思い切って聞いてみると、イブはなんてことのないようにいう。
「ああ、あれは適当に考えた嘘だしな。ボクがほかの国……もっと言えば世界全体を救うなんてことするわけねーだろ? ボクが守りたいのは、救いたいのは自分の国だけだ。ノーザンライトが救えるならそれでいい。……お城に古くから仕えてる占い師の一族のババァが言ってたんだよ。この国の霊峰って呼ばれる場所にはなんでも叶えることの出来る『なにか』があるって。……お前の話を聞いてわかったよ、その女神のことだって。そいつがボクに力を貸してくれるかどうかはしらねーけど、縋れるものがそれしかないならそれを目指すしかない。」
「うわ、よく喋るね」
「ぶっ殺すぞ」
「ごめんて」
割とマジな言い方で怖いよ。
「…………そこまではなすならさ、最後まで教えてよ。叶えたい願いって何? ……そもそも、前に語ってくれた『世界中で有名なノーザンライトの勇者伝説』とか『この時代に勇者が生まれた意味』とか、その辺のこととかも……なんか微妙に変になってこない?」
核心的な事だからなのか、イブは珍しくすこし躊躇う様子を見せて、でも喋り出す。
「……ボクの住んでた国……ノーザンライトはこのまま放置してたら滅ぶの待つだけだ。こんなことお前に言っても信じないかもしれねーけど……いや、何も知らなかったお前だからこそ、かもしれないか……『ノーザンライトの勇者伝説』……あんなもん、嘘だ。後世の人間がでっち上げた与太話でしかない。……たしかに、すごい力を持った奴が1人で国を作ったのとか、アルカディア歴の基準ってのは本当だぜ。でも、別にそいつに神がかった力なんてねーし、邪悪なモンスターをぶっ殺したりもしてない。ボクも別にそいつの力を受け継いだりなんてしてない。全部嘘だ。世界を巻き込んで、隠したいことを隠して……来るべき時に偽物の勇者……つまり、ボクを用意するための工作なんだよ。」
「は?」
「黙ってきけ。ボクがめちゃくちゃ強いのは本当……というか、強いから『勇者』ってことにされた。そうやって、国ぐるみで世界を騙して作った勇者伝説を利用して、ボクはこの国に来た。で、その目的……ノーザンライトを救う……。何が原因か、どうしてそんなものがあったのかなんて誰もわかんねーけど、ある日突然ノーザンライトに化け物が現れた。どんなモンスターとも、この国にいる狂獣とも違う……とんでもない奴だぜ。」
イブが語る内容。突拍子もないし、馬鹿げてる。そもそも、偽りの勇者伝説の意味が分からない。結果的にはこうやって使えたみたいだけど、元々はなんのためにそんな嘘を世界に広めたの? なんか、こうなることを予知してたみたいな……。
「……どんな化け物?」
「それは……いえねーな。これはノーザンライトの問題だ。お前には関係ないし、そこまで巻き込む気もない。ボクはお前とゴッドランクになって、正式な形で霊峰に向かって、女神とあってやる。……そのために、あくまでもそのために……女神が言ってたこともやってやるよ。……あの脳筋クソ女と仲良くしてやる。それでいいんだろ?」
いやいやそうに言いつつも、表情は明るいし、楽しそうにも見える。
「イブ……!」
(ツンデレだ……! 伝統的なタイプの……!)
「ボクの目的のためだ、しょうがねーだろ。お前やルナのためなんかじゃない。」
「わかってる、わかってるよ。」
(とは言っても……ルナ側が協力を受け入れてくれるわけないし……アルマにも手伝ってもらうしかないね)




