ライズヴェルへ
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「……ユイ様は遠くの地域からこちらにいらっしゃったのですね。」
「そそ、そういうこと。」
わたしの読み通り、マリアに頼んだら馬車に乗せてくれた。『お金の心配ならいりませんわ!全てわたくしにおまかせを。』だって。少し……いやかなり変わった考え方を持っている子ではあるけど、優しくていい子だと思う。
で、馬車に乗ってからは着くまでは暇だから、マリアとお話してた。わたしはとりあえず遠くからきていて、冒険者になるために街に行きたい……という設定にしておいた。
「せっかくだしマリアのこともきかせてよ。めっちゃお嬢様っぽいけどあんな所で何してたの?」
(多分あの辺には大きい家とかなかったと思うけど……)
「………いえ、わたくし別にお嬢様などではありませんわ。」
「へ?」
「わたくしは元々あそこの村に住んでいますの。わたくしの家は代々普通の農家で、特別お金持ちでもなければ由緒もありませんわ。この格好としゃべり方は……ただの趣味でしてよ。言うならばお嬢様ごっこですわ。」
「へぇ………」
(やっぱりこの子ヤバいかも………)
「ユイ様も知っての通り、村のギルドは今日で無くなってしまいますわ。ですのでわたくしもそろそろいい機会ですので家を出て、1人で街で頑張ろうと考えましたの。わたくしの両親も、そんなわたくしのことを応援して、送り出してくれましたの。その門出にユイ様という素敵な方と出会えて、わたくしとても幸せですわ………!」
「どうも………」
(お嬢様じゃないのにお金出してくれたんだ………優しい)
「………………あの」
「なに?」
「変わった髪の色ですけど……ユイ様の住んでいた地域では普通なのでしょうか………あ、もちろんとても素敵で綺麗なのですけれど、少し気になってしまいまして………」
「あ!?こ、この髪は………」
苦しい言い訳をしようとした時、馬車が激しく揺れて突如止まった。
「ひゃっ!?」
「なに!?」
直後、馬車の後ろ側のドアが開いて馬車の運転手(?)のおじさんが顔をのぞかせて言ってきた。
「すまん……ちょっとルートが悪かった………」
なんの事だかさっぱりだけど、おじさんの表情を見るととても大変な状況だとわかる。
「どうされましたの!?」
「モンスターが……それも凶暴な龍がいる……!どうやらテリトリーだったみたいで刺激しちまった……」
「えっ」
ちょうどその時、外ですごい音がした。風の吹くような、地鳴りのような、雪崩のような……そんな音。空気まで振動するかのような爆音。これってまさか……!?
「龍の咆哮……!?す、すぐ近くにいますのよね!?まずいですわ!」
「どうするか………」
(………チャンス!)
わたしは強いはず!それなら今ここで龍を倒す……までいかなくても、撃退できるかも!
「……わたしに任せて。」
外に出ようとすると、おじさんにとめられる。
「まてまて!お嬢ちゃんみたいな武器も持たない鎧も着てない戦闘も不慣れそうな女の子になにが………」
「そうでしてよ!ユイ様に何かあったらわたくし………!」
「ふっ………安心して。わたしは死なないし、怪我もしない。龍の1匹くらい簡単に何とかするよ。」
「………そこまで言うなら頼む。ただ、間違っても殺したりはしないでくれよ?」
「何故?」
「知らないのか?ギルドの許可無く……なんて説明してる暇もない!とにかく殺さず、逃がせばいい!」
「おっけい!いくよ!」
わたしが外に出るのに続き、おじさんとマリアも外に出てきてもらう。なんでか?そりゃあもちろんわたしの勇姿を見てもらうため………
(えっ!?)
外に出て、そこにいたのは…………思ってたのと違うモンスター。
『龍』なんて言われたら普通、大きいトカゲみたいな体に、大きいコウモリみたいな翼、蛇みたいな舌がチロチロ出てて、猛獣みたいな爪と牙……を想像するでしょ?でも違った。目の前にいたのはバカでかい鰻に白鳥の翼が生えたような、ヌメヌメしてる間抜けな姿な生き物。これが龍?
「なにこいつ?」
「龍だぞ」
「龍に分類されますが……モンスターの名前で言えば『ウナハク』ですわ。」
(鰻と白鳥ありきのクソネーミングじゃん……)
しかし、凶暴なモンスターではあるらしく、ウナハクはその姿に似つかわしくない雄叫びをあげ、小さい目でわたしを睨む。
「ふん………わたしは強いから!ほらいくよ!」
武器はなくても魔法が使える!使い方知らないけど、多分意識を集中させて使いたいものをイメージすれば出るはず!わたしは強いし!
「氷と炎………出てきて!」
両手を伸ばし、手のひらを上に向けて念じる。
(お、出た!)
頭の中で火球と氷柱をイメージしたら、右手に大きい火の玉、左手に鋭い氷の刃が出てきた。軽く念じてみると、自由に動いた。いける……!
「ユイ様……魔法が使えたのですね!」
「おお……しかもありゃあかなりの魔力だな……」
「氷と炎の双撃………耐えられるかな!?いけっ!」
その掛け声に合わせて、相反する2つの属性は混ざり合うようにウナハクに向かっていき、すぐに直撃した。
「ふっ……残念だけどわたしは戦うのは嫌いだよ………ただ勝つのが好きなだけ………あれ?」
「ユイ様!相手は無傷でしてよ!」
マリアが叫ぶ。言われなくてももう分かってる。双撃が直撃したはずのウナハクは地面で元気にうねうねうねうねうねしてる。せめて飛べ。
「お嬢ちゃん………普通に考えて、炎と氷……相反する2つのエレメントを同時に使ったらどんなに凄い魔力だったとしても対消滅するぜ。……まさか同じタイミングで放つとは思わなかったぞ。」
ちらっと観ると呆れ顔のおじさん。
「ほえ〜………」
これは恥ずかしい。
でも何故か、ウナハクはそのままうねうねしながらどこかに行ってしまった。だから飛べって。仲間を呼びに行ったのかとも思いしばらく待ったけど、全く戻ってくる気配もない。
「結果オーライ?」
「だな………」
「助かりましたわ………」
―――――――――――――――――
というわけでまた馬車。あと30分位だってさ。おじさんにはめっちゃお礼言われた。
「あの……ユイ様は魔法の力がかなりあるようですが……もしかすると家柄や血筋などなにか特別な方なのでしょうか……?」
「おっ……」
(なんて答えようかな………)
やっぱり『そんなにすごくないよー』って謙遜?それとも、『え?』って感じ?はたまた嘘ついてめっちゃ努力したことにする?どれも面白いけど…………わたしは………。
「ふふふ……秘密……だよ」
あえて答えない!そうすることで相手のきょうみをひ
「そういえば、ウナハクというモンスターは」
(……あれ)
失敗した。興味持ってない……
「ねえねえねえねえ、わたしがすごい魔法使える理由興味無いの?」
「もちろんありますわ!!でも………」
「ん?」
マリアは言いにくそうにいう。
「あれだけの高い魔力の魔法を繰り出すことができるのに、相反するエレメントを同時にうちだすと対消滅するという、基礎の基礎の知識がないのは………。秘密ということですし、なにか表だって言えない理由があるものかと思い聞くのを辞めましたわ。」
「うっ」
(たしかに知らなかったけど………)
言われてみれば、なんかよくわかんない力のおかげで今のわたしはすごい強いわけだけど、理屈とか知識は全く分からない。普通に考えたらありえないことなんだよね…………基礎が分からないのに強い魔法とか、たしかにずるいことしてると思われてもおかしくない(ていうかずるいんだけど)。
「あはは…………」
「………魔法というものは使用者の体内にある『魔力』という力に左右されますの。この魔力が多いほど、強力な魔法が使えます………ですが、この魔力はほとんどが生まれ持ったものであり、努力でどうにか出来ないと言われていますわ。魔力が多い方が魔法の使い方を勉強すれば、とても強力な物が放てるわけですの。」
「ふむふむ」
あんまり関係ないけど、野球とかの肩の強さも生まれ持ったものだからいくら努力しても越えられない壁があるとか言うよね。そんな感じ?
「ユイ様の先程の魔法を見る限り………不慣れで、無知で適当で行き当たりばったりなんとなくで放ったのにあれほどの力………きっと、体に秘める魔力……つまり、才能だけで言えば最強クラスの力だと思いますの。普通の魔力の方は知識がなく適当に使おうとしても、まず魔法など放つことは出来ませんし、かなり魔力があると言われる様な方でしても、無知な状態では小さな火球で精一杯なはずですわ。」
(前半の方バカにされてない?)
「つまり、ユイ様程のとてつもない魔力であれば、本来は信じられないような魔法も使えるはず………。どのような理由で知識がなく魔法が使えるのかは存じ上げませんが………しっかりと勉強することをオススメ致しますわ。もしよろしければわたくしが教えて差しあげても……!」
マリアは目をキラキラさせていう。多分、教えたいってよりはわたしと一緒になにかしたいって気持ちが強いんだろうね。まあ、教えて貰えるなら助かるけど。
「うん。街に着いて、落ち着いたらそうしようかな………まずはギルド行かないとだし。」
「それもそうですわね………わたくしはまずは新しく住む家の方に向かいますわ。その後でギルドに向かいますので、ユイ様もギルドで待っていてくださると嬉しいですわ。」
「おっけい。」
(そういえば、わたしはどこに住めばいいんだ…………)
もうすぐ街に着くと言うのに、今更今更そんな大切なことに気がついてしまった。




