闇の行き着く果て
「……」
カレンが指さしたそれは、恐らくはカレンと関係のある人のお墓なんだとは思うけど……なんというか、まあある意味予想通りなのかもしれないけどかなり異質。
周りを見た感じだとこの世界のお墓の様式はみんなだいたい同じ形で、多分それはオーリン教の埋葬の仕方なんだと思う。だってここはオーリン教会の墓地なんだし。でも、カレンの指さすそれだけは違う。真っ黒い岩手作られたそれは剣みたいな形をしてて、カレンの呼び出す人工遺物によく似た形をしてる。
(お墓まで厨二病じゃん……)
「これは……カレンの家族の人のお墓?」
「そうよ……ワタシのこの身を流れる深紅の血をわけてくれたワタシの根源が眠っているのよ……」
(両親のことかな……)
ていうか、カレン結構若く見えるけどもう両親共々亡くなってたんだ……。
「あら……ふふ……それは違うわよ。ワタシの両親はたしかに現世からは去ったけれど、その表現は正しくないわ……」
「いや、なんで思考読めるの?」
カレンはわたしのその疑問は無視して言う。
「ワタシの根源である2つの魂は冥府へと誘われた……でもそれは何ひとつとして悲しむことなどではないのよ。だってそれはワタシが最も望むべき結末へ必要なの……ふふふ……」
亡くなった両親の話をしてるはずなのに、カレンはとても嬉しそう……。
「えっと……両親と不仲だったとか?」
「……それは逆よ。でもいいわ……きっといずれ、あなたもわかるわ。だって……その結末に最も必要なのは……ユイ、あなたよ……ふふ……だからこそワタシはあなたが欲しいわ。あの少女……マリアがあなたを欲するのとは比較にならないほどに、ワタシはあなたが欲しいのよ……。」
「あっうん。」
(これどうなんだろ……わたしの変な力のせいなのか、それともこの人素でこれなのかな……怖すぎ。)
わたしの方を見てしゃべるカレンの顔を見てると、なんとも言えない気分になる。すっごい恍惚としたような顔で言うし、もう少しだけまともな人ならわたしも少し危なかったかも。見た目だけはすごい綺麗だし……。
「ってそうだ。さっき忘れてたけどわたしフィリアさんにどうしても言っておきたいことあったんだ……エルザに伝えておこうかな。……カレンはここで待ってていいよ。仲悪そうだったし。」
昨日の件、ちゃんとフィリアさんに伝えておかないと。聞きたいこともあるし。なんでさっき忘れてたんだわたしは。
「……そうね。ワタシはワタシの根源の魂のことに思いをめぐらせるわね……。」
ふと、一瞬だけカレンの顔から笑顔が消えて、悲しそうな顔になった……気がした。どうかな、気のせいかも。
「うん」
(……仲悪いってよりはエルザが一方的に嫌ってる感じもしたけど、なんでかな。)
――――――――――――――――――
「エルザ……いる?」
教会の方に戻り、奥にある狭い部屋に入ると椅子に座って何かをしてるエルザがいた。わたしに気がつくとすぐに立ち上がり、こっちに来てくれた。
「来ましたか。……なにか妙なことをされたり、言われたりしてないでしょうか。」
エルザはわたしをみて心配に言う。よっぽどカレンのこと信用してないんだ……。
「へ、平気……いや、変なことは言ってたけど……変なことしか言ってない……かな?」
するとエルザはため息をついて言う。
「あの方は……以前から何度かこちらへ来ています。その度に今日のように言っているのですが……。そもそも、彼女はオーリン教のことも女神様のことも全く信じていなく、むしろ相反する考えを持っています。……オーリン教の敷地内にわざわざ異なる様式の墓を建てるなど、まともな人間のすることではありません。」
「まあそれは確かに……」
(お寺の墓場に十字架のお墓あったらびっくりするし……)
でもそれを受け入れてるオーリン教……心広すぎ。来る者拒まずなのかな。
「あ、そうそう。今日はフィリアさんいない感じ?」
「ああ、フィリア様なら……夕方頃まではいませんよ。なにかようでしたか?」
「うん、昨日ちょっと頼まれたことがあって……」
わたしが昨日のことを話そうとすると、それより先にエルザが言う。
「ルナとアルマの件ですね……既に聞いていますよ。ルイが伝えてくれました。」
そう言いながら、エルザは部屋に置いてある机の方から何かを手に取った。
「あ。そうなの」
「これを。」
エルザは手に取ったもの……紙を持ってきて、わたしに手渡してきた。
「?」
「さすがに捉えることは出来なかったようですが、あの場所から追い出すことが出来ただけでも十分とのことです。その紙をギルドに持っていけば、いいものが貰えますよ。」
「お?」
なんで報酬はギルド経由なの……ってのはまあ今はいいとして、いいものって……お金でしょ多分。
「じゃ早速行ってくる!」
「気をつけてくださいね。」
(なんかよくわかんないけどいい感じ!)
何がどれくらい貰えるかは知らないけど、追い払っただけで報酬でるなら捕らえたら結構報酬凄いんじゃない!? 次であったら絶対捕まえてやるし!
(ギルド〜!!)
というわけで、墓地で待ってるカレンのことは放っておいて、早速ギルドに向かうことにした。




