ちょっと一旦整理しよ
「うーん……」
朝。目が覚めたけど、夢(?)の中でスティアに言われたことがいちいち気になる。なんであの女神、匂わせだけして終わるんだ……いちばん困るって言ってるじゃん。
「やっぱりオーリン教会が気になる……」
この世界、この国に来てからまだ日は浅いけど、何となくの構造は理解出来ているつもり。ギルドは国と繋がってて(当たり前だけど)、モンスターとか自然環境の管理をして、必要なら依頼をだす。オーリン教会は普通に教会として役割の他に、『人間』が対象の依頼を受け付けている……これも国と繋がってる。そこまでは簡単に理解できる。
(それはいいんだけど……)
オーリン教会……もっと言えばフィリアさん。よく分からない。昨日もお姫様のお願いをフィリアさん経由、更にそこからルイに任せる……とかいう謎のルートだったし。
「よし、行ってみよっと。」
考えても意味ない。とりあえずまた教会に行こっと。フィリアさんかエルザ、どっちかいるでしょ。ただ、エルザも色々気になることがあるんだけどね……。
―――――――――――――――――――
(この道歩きやすいなぁ……)
教会の近くのそれなりに整備されてる道を歩き、あと少しでオーリン教会に着くという時。その道の先に誰かいた。いや、誰かっていうか……あの黒い服を着た人は……。
「ふふ……来たわね……」
「おーっと用事思い出したしギルド行こうかなー」
「人工遺物……」
「やめてよ!!」
こんな場所でそんなもの出されたらやばいし、とりあえずその人の元……カレンの方に早足で向かう。
「……で、なんでこんなところに?」
カレンの目の前まで行き、少し強めに睨んできく。
「なぜ……それはワタシとあなたは常に闇で惹かれ合う運命の束に補足された存在……いついかなる時、どのように出会おうとそれは必然……ふふふ……」
(この世界のお医者さんはこういうのは診てくれないのかな)
「ていうか……昨日も教会行くとか言ってなかった?」
最も嫌いな場所ってどうせ教会でしょ。
「昨日は行くのをやめたわ……。甘美で誘惑的な誘いがワタシをさらったのよ……」
「あ、うん、よかったね。」
(なんか美味しいものでも見つけたのかな)
カレンと言えば、バカ大食いだし。あれの仕組み謎すぎる。その細い体のどこにあんなに入るの……?
「それじゃあ……行こうかしら。ワタシと対極に位置する光の彼方……」
「……」
(一緒に行くのか……)
まあこの流れで断るのも無理だし……変なことにならなきゃいいけど。
――――――――――――――――――
「……あらあら、いつ来ても誰もいないのね。無垢なる魂がその祈りを爪弾くところにも遭遇したいわ……ふふ……」
(たしかにいつもいないけど……)
ていうか、『いつ来ても』ってことはカレンも何回か来てるんだ……嫌いな場所なのに。本当は好きなんじゃないの?
「おや……ユイ。来ていたのですね」
お祈りする広間の入口付近に立っていると、後ろからエルザが話しかけてきた。
「あ、エルザ。」
「そちらの方は……あなたは……はぁ。何度も来て一体なんの用でしょうか。……おそらく、ここはあなたが来る場所ではないか思います。」
「そうかしら……でもたとえそうだとしても、教会という場所は全ての者を、迷える子羊を受け入れ救うものでは無いのかしら。あなたの一存でそれを拒むなんて……女神が許すかどうか……ふふ……」
カレンは相変わらずうっすらと笑みを浮かべて、何がそんなに面白いのか笑いながら喋る。
「……まあいいです。ユイ、この方の言うことはあまり深く考えない方がいいかと。それでは私は用がありますので、何かあったら奥の部屋へ来てください。」
露骨に不機嫌になったエルザはそれだけ言い残し行ってしまった。
(仲悪そー……)
やっぱり……それこそ、光と闇、白と黒……相反するのかなぁ。
「……で、改めて聞くけど何しに来たの? わたしは本当はエルザかフィリアさんに会いたかったんだけど……エルザはカレンのせいで会いにくいし、フィリアさんいなそうだし……カレンが何か用あるなら、付き合ってもいいけど。」
「ふふ……嬉しいわ……それなら……一旦外に出ましょうか。」
「えぇ……?」
もしかしてカレン……エルザと話すために言ったん中に入ったのかな。
―――――――――――――――――
「こっちよ、こっち……」
「そっちは……」
どこに行くかと思えば、カレンは外に出ると教会の横から裏がわにかけての場所……つまり、墓場に行こうとした。
「さすがにそこはダメなんじゃ……」
「……なにか勘違いしてるわ……ここは単純に、ワタシのルーツが眠っているだけ……今はもう冥界へとその魂を移したけれど、その身は永劫に現世に残る……それに会いに来ただけ。」
「あ、それは普通にごめん……」
(……親とかかな)
なんだかんだ言ってるけど、そういうところは普通なんだ……でも逆にカレンのことよくわからなくなる……。
「ここよ……」
墓場のもんを開けて、その奥まで行ったところでカレンは立ち止まり、『それ』を指さした。
「…………これ?」




