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その力はなんのために

「……」


「…………」


「……ふふ……なにかしら?」


 とりあえず馬車に乗ったわたしとマリアとカレン。元々4人は乗れる広さだったらしいから、別に狭くはない……けど。正面に座ったカレンが気になって、ついつい視線がそっちに行く。どうやらそれはマリアも同じみたいで、斜めからじっと見つめている。


「えっと……なんであそこにいたの?」


「わたくし達が今日あの街に行くということをどうして……」


「そんなことは大した問題ではない……それより……ねえ、ユイ?」


「なに?」


(答える気はない……と)


「あなた……魔法に頼りすぎじゃないかしら……たしかにあなたの魔法は強い……闇より深き闇だわ…でも、それではだめよ……ふふふ……わかっているでしょう?」


 相変らず、少し笑いながらなんかよくわからないふうなことを言うカレン。


「あーごめん、ぜんっぜんわかんない……」


「そう……ワタシには感じるのよ……あなたがその身に宿す力はそんなものでは無い……と。思い起こせばきっとこころ当たりがあるはずよ。……あなたが持つ、魔法以外の力。」


「えっ……」


(………魔法以外の………)


 そう。思い返せばわたしは別に、『最強の魔法使い』になる力を貰ったりしたわけじゃないし、『同性からモテたい』わけでもなかった。『とにかくめちゃくちゃに強いチートじみた力』があるんだよ。だからわたしが本気を出せば素手と体術でチンピラくらい倒せた……はず。でも、多分出来ないかな。いくらそんなにすごい力があっても、わたしの体と思考回路が着いてこない。人の殴り方なんて知らないし、絶対平気な強さがあったとしても、ナイフを持ったチンピラに向かっていく勇気もない。そんなもんよ。ていうかなんでカレンがそれを……?


「ユイ様の力……わたくしにはよくわかりませんが……いえ、そもそも……カレンの事もわかりませんわ。」


(最初から呼び捨てなんだ……)


 明らかに年上なのに。


「……わたしもよくわかんないし、多分聞いてもわかんないよ」


「ワタシ……そうね……ワタシは………この世界に産まれた存在ではあるけれど、それは仮初かりそめ……新たなる世界(Stage)を創世するための踏み台に過ぎない……そしてその創世には大いなる闇が必要……だからワタシはユイが欲しい……ユイを傷つけ、攻撃するものは……排除する……ふふ………。」


「……ほらね?」


「………」


 マリアも困り顔だよ。そりゃそうだ。


「ですが………なぜだか分かりませんが、少しだけ……ユイ様と似ているような気がしなくもありませんわ……いえ、もちろん気の所為かもしれませんが……。」


「は!? わたしとカレンが似てる!? ないでしょそれは……」


「………それはどうかしらね」


(それは無いよ……)


 どこをどう見たらわたしとカレンが似てるの? わたしはあんなふうな変なこと言わないし、いつも笑ったりしてない。どこが似てるの……。


「わたくしからすれば……カレンの使ったあの魔法ではない力も、ユイ様が()()()使える多様な魔法も同じように感じてしまいますわ。……正体不明、理屈不明の謎の術……やはりユイ様は、わたくしでは想像も及ばないような特別ななにかが……」


 マリアは少しだけ疑うようにわたしを見てくる。……やっぱり色々と誤魔化しきれてない。


「それと……カレン。あなたが先程から何度か言っている……ユイ様が欲しい……というのは一体どういうことですの? 全く理解ができませんわ。」


 少しトゲのあるような言い方……敵視でもしてるの?


「それわたしもきになる。」


「どういうこと……ふふ、そのままの意味でしかないわ。ワタシはユイが欲しい……それだけ。ワタシの創世にはユイは必要不可欠……あなた無くしては真なる世界なんてありえないもの。」


「はぁ」


「話になりませんわね……。しかしなんにせよ! ユイ様はいずれわたくしと………いえ、この先はそん容易く人に言うものでもありませんわね。心の中に閉まっておきますわ。」


(めんどくさい……)


 仲が悪いって感じはしないけど、なんか一方的にかってなライバル視って感じ……まあ普通にわたしのせいだけど。


「でも………あ、少し話し戻るけど……わたし、たしかにまだまだ全然戦うの()()()()()と思う。魔法はまあまあそれなりに結構かなり使えるし、戦う能力はあると思うんだけどさ。」


「きっと、ユイ様が本気で強くなろうとすればわたくし達では想像もできないような力が生まれるはずですわ……それこそ、遠い異国の勇者すらも凌駕するようなすごい力………。」


 マリアは力を込めて、本気で期待しているような言い方で言う。そこまで言われるとちょっと重い。


 それに対して、カレンはわたしの方を見ながら、静かに言う。


「ノーザンライトの勇者……ふふ……いくつもの因果がユイに絡んで……その行き着く果はどんな世界なのかしら。」


「もう自由に一人で喋ってていいよ……疲れた。」


「そろそろ着きますわね……わたくしはこのままソフィアさんのお店に向かいますわ……ユイ様は?」


「わたしは……特に用もないけど、ギルドにでも行こっかな。」


(もっと戦いになれたり、自分の中の()()を変えるためにも、なにかを倒す依頼があったら受けようかな………)


「それならワタシは……」


「つ、着いてこなくていいからね?」


「あら……元々そんなつもりはないわ。ワタシは……()()()()()()()()()()()にでも行こうかしら。」


「………どうぞご自由に…………」

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