宝石よりも煌めいて
「……ここでいいですわ。」
しばらく人気のない街を歩いて、また違う広場に来た。さすがにお店を出してる人達はこの場を離れられなかったみたいで、お店の人達だけは残っている寂しい雰囲気。
「で、なんの話し?」
広場の端っこにあったベンチに並んで座る。隣のマリアはわざとわたしと肩が触れるように座ってくる。
「あの正体不明の怪盗達……なぜあのようなレインクリスタルを盗んだいったのか……理解ができませんわ。」
「……? 普通に、価値があるものだからでしょ?」
「ユイ様、物事の価値というものはどのように決まるかご存知でしょうか?」
「何いきなり……」
(真面目だ……)
なにかふざけてる訳じゃなくて、マリアは真剣な表情でわたしに言っている。……わたしにはそんなこと理解できないけど。
「以前話したように、たしかにレインクリスタルは貴重なもの……ライズヴェル領では『虹の海』にある、モンスターの巣食う洞窟の奥深くでのみ採掘できる貴重なもの……ですが、その価値は、利用する方法が多様であり、数が少ないから……でしてよ。」
「どういうこと?」
「つまり……怪盗達が盗んだいったレインクリスタルは……価値が低いものですわ。あれを売っていた商人の方……いえ、それはさておき、大きいから高価……とは限りませんの。」
「………??」
あのレインクリスタルを売っていた人は、わざわざ魔法の防壁まで用意していた。だから普通に高いものかと思ったけど……。
「レインクリスタルは小さいものほど純度が高く、今回わたくしが手に入れたような、手のひらに乗る程度の物が1番加工に適していて、最大限の力が引き出せるのですわ。大きいものはその分不純物も多く、加工にも手間がかかる……それに理屈は不明ながら引き出せる力も低い……さらに、レインクリスタルは放置していると直ぐにその煌めきは失われる故、観賞用にも向かない……つまり、わざわざ人のものを盗ってまで手にしたいものとはとうてい思えませんわ。」
マリアは割と早口で喋りきった。
「へぇ……」
(へんな鉱石……)
大きい方が力もなくて価値もないとか、面白い。まあ考えてみれば、貴重とはいえ、加工にも使えなくて観賞用にもならないって言うなら価値も無くなるのかな? モノの価値とか取引とかの知識が全くないから、これがこの世界特有の価値観なのか、わたしの世界でもそうだったのかが分からないのが悲しい。やっぱり勉強って大切かもね!
「ですので、怪盗達の目的が分からないのですわ。」
「たしかに……」
分からないことだらけ。でも、こういう時は無理に考えても仕方ない。どうせ考えても答えは出ない!
「よし、もう帰ろ! 帰ってなんか食べようよ。」
「そうですわね。それに、レインクリスタルも早めにソフィアさんに渡しておきたいですし。」
「ん、そうだね」
(ソフィアさん……か)
あの人もなんか変な人……だけど、そうだ。あの人はエルザと友達だったはず。もしかしてあの人なら何か知ってるんじゃ……。
「それではユイ様、こちらへ着いてきてくださる?馬車の手配はもう出来てきましてよ。」
ベンチから立ち上がったマリアは、またわたしのてをひく。
「ん、ありがと」
「……これはわたくしの妄想ですが……あの巨大なレインクリスタルを売っていた方……怪盗達が来ることを見越して、わざとあのようにしていたようにも感じられますわね。」
わたしの手を引きながら、マリアは小さくそう呟いた。
(……レインクリスタルは餌で、魔法防壁の力を試したかった……とか?)
だとしたら、大失敗だったね。
――――――――――――――――――
「………なんだか嫌な感じですわ。」
「わかる……」
もう少しで街をぬけて馬車の待機場に着くというところで、街の雰囲気がなんかいや感じなきがした。怪盗が出たからなのか、来た時と比べるとかなり人は少なくなってきて、さらに天気も悪くなってきて、薄暗い。それに、この街の立地上、街の外に行くには細い道を抜ける必要があるんだけど………
(……怪しい)
この細い道、脇に隠れられるような場所が沢山あるし、ところどころ細い道もあって人を連れ込むには最適。しかもこんな商売の町となれば、お金を持った人も多いだろうから、そういう人たちが潜むには絶好の場所。
「普段ならばいつ来ても人が沢山いるから気にしたこともありませんでしたわ……無人だと、こんなにも嫌な雰囲気とは……、」
「そうだね……それこそ今すぐにでもその辺から人でも出てきそうな……うおっ!?」
まさにその瞬間、物陰からナイフが飛んできて、わたしの足元に刺さった。間一髪……!?
(なにごと!?)
「ユイ様!?お怪我は!?」
「えっと……平気……」
戸惑いつつ、ナイフが飛んできた方を見ると、物陰から正しくそういう感じの人が、短めの剣を構えて出てきた。
「チッ……運がいいな。」
「いや勝手に外しただけじゃん。」
「ふん……まあいい。わかるだろ?金と物、よこしな。そしたらここ通してやるよ。」
その人は剣をこちらに向けて脅してくる。
「そんな……街の中で白昼堂々とこんなことをする方なんて初めて見ましたわ……街の外で盗賊が出たという話はききますが……」
(たしかに……)
いくら人がいないと言っても、いつ人が来てもおかしくない。そんな街の中であきらかな犯罪行為とか、ありえな……ってリズ達もやってた。
「どうせほとんどの奴らは怪盗騒ぎでこっちまで来ねぇからな。やるなら今がチャンスって訳だ。それになんだ? お嬢様かなにかだろお前? さぞかし金持ってんだろうなぁ!?」
「………ユイ様」
わたしの方を見るマリアの目は、『邪魔だから倒して』って感じかな。んじゃ任せてね!
「おい……早く出した方が身のため………」
「……邪魔、どいてよ。」




