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うつしよに君臨せし者

(暗い……)


 街の中にある森なのに、やたらと暗くて静か。モンスターとかいない? へいき? もしかしてここは人間が踏み入ってはいけない聖域(Sanctuary)だったりしない?


(もう少し行って何もなければ帰ろう)


 街の中の森で迷子になったりしたら笑えない。助けも呼べないし、最悪の場合森ごと焼き払うしかないし。(そんなことはしないけど)


「……え」


(これは……)


 森の最奥あたりと思われる場所。突然木が無くなり、円形のスペースが出来ていた。その真ん中にはまたしても三本槍の彫刻。こんな場所にあるのに、さっきのとは違い綺麗。そこになにか文字が刻まれている。


「……『原初の炎をつくりし創成の女神の地』……スティア様……だっけ」


 エルザが教会で話してくれた女神だ。オーリン教の女神……ということはここも教会に関係ある場所なのかな。


(だとしたら勝手に入っちゃまずかったな……)


 未知なる脅威は怖くないけど、人に怒られたりするのは怖い。学校とかで先生に怒られるの嫌だったし。


「よし、もどろ」

 

 と、振り向くと


「どうも〜」


「だれっ!?」


 人がいた。


(気配を感じなかったのに……!)


 わたしの背後にいつの間にかいた女の人。その人はわたしは見て微笑んでいる。わたしよりさらに長い、青い髪のツインテールに、膝の下くらいまでの丈のへんなドレスを着ている。そのせいなのか、大人っぽいのに子供っぽくもみえる。


「……ユイちゃん?」


「どうしてわたしの名前を!?」


(初対面なのに……)


「わたしはね〜知ってるのよ。エルザちゃんがあなたのことを話してたもん。」


「エルザが?知り合いなんですか?」


「知り合いなのかな……わたしもわかんないわ〜。」


「はぁ……?」


 ダメだこの人。カレンとはまた違った意味で関わっちゃいけない人だ。そもそもこんな所で何を……ってそれはわたしもか!あはは。


「ユイちゃんもわたしのことを知っているはずだけど……」


「いや、知りません。」


「うふふ」


「……」


 森の奥、不思議な場所で不思議な人と話すわたし。何この状況。ある意味神秘的だけど、現実的に考えたら割と危険では? 何この人。不審者? 声掛け事案でしょこれ。


「わたしね、女神。スティアよ。」


「忙しいんで帰ります。」


 自称女神とか1番ヤバいって。無理無理。対戦ありがとうございました。


「まって」


「うお!?」


 森に向かって走ろうと来た瞬間、自称女神はわたしの前にいきなりワープ(?)してきた。突然現れた。


「女神なの。」


 ジリジリと距離を詰めてくる。何故か動けない。エメラルドみたいな色の瞳でじっと見つめられている。


「女神……嘘だ……」


(そんなの神話の存在で、実在するわけない……)


「……ユイちゃんは……どこから来たの?」


「遠くの国……」


「ううん。そうじゃない」


 自称女神は目をつぶり、首を振りながら続けて


()()()()()から来たの?」


 と言った。


 ―――――――――――――――


 その一言は、わたしにその女性を女神だと確信させるのには十分だった。だって、わたしはこことは異なる世界の地球(Earth)という惑星(Planet)に住んでけど、それは誰も知らないし、普通そんなこと言っても信じてもらてない。なのにこの人は……


「信じてくれたかなぁ」


 森の奥のスペースで、向かい合って地面に座る。なんだか変な気分になる。


「だって、それを知ってるのは……」


(ありえない……)


 そうだとするなら、この人……人じゃないか。今目の前にいるのは女神にほかならない。


「でもね〜、わたしは別に全知全能の神じゃないのよ。だって、他の世界のことなんて知らないもん。」


「ああ……」


 ていうことは、わたしがこの世界に転生してこれたのは別にこの女神とは関係ないんだ。何となく、転生には神様が絡んでると思ってたけど。


「びっくりしたの。わたしはこの世界の総人口を常に把握してるけど、誰かが生まれた訳でもないのに1人増えたんだもん。だからすぐにユイちゃんのことを見つけて調べたの。そしたら……ね。」


 女神スティアはニコニコと微笑んで言う。女神だからなのか分からないけど、やっぱりどことなく不思議な雰囲気がある。


「調べてわかるんだ……さすが女神様……」


「『様』とかいらない。呼び捨てがいい。」


「あ、はい」


 まさか女神からそんなことを言われるとは。また言われたからには呼ぶけど。


「スティアはなんでわたしの前に現れたの?別にわたしはオーリン教の信者でもないし、スティアのことをそこまで信じてた訳でもないよ?」


「気まぐれ……かなぁ?実はね、わたしは……世界を創成した女神なんかじゃない。逆。」


「逆?」


「みんなが……オーリン教のみんながわたしの存在を信じてくれたから、わたしは生まれたの。人間のみんなの思う気持ちは凄いから、神様だってつくれる。」


「……でも、それだと矛盾してる」


(オーリン教は、初代のフィリアさんが『女神スティアから信託を受けた』ことが始まりなはず……)


 オーリン教が出来たことで女神スティアが生まれたなら、そもそもオーリン教はどうして生まれたの?


「それはね……秘密。ユイちゃんはまだ知らなくていいの。それじゃーねーばいばい」


「ちょ! 」


(消えた……)


 なにやら意味深なことだけ言い残して、スティアは消えた。一瞬にして、わたしの目の前からいなくなり、そよ風が吹いていた。


「なんだったんだ……」


 1人そこに取り残されたわたし。気になることが多いけど、ここに立ち止まって考えるのはなんか気が進まない。


(家に帰ってから考えよう……)


 とりあえず、まずはこの森から出よう。

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