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それってそういう意味だったんだ

 マリアがどこかに行きたいというからとりあえずついて行くことにした。ギルドの外を出て歩くマリア。天気は良くて、日が差しているのに日傘はさしていない。(韻踏めるかも)


「どこ行くの?」


「もう着きますわ。きっとユイ様も知っている場所でしてよ。」


「んー……」


(この街でわたしが知っている場所なんてまだ数える程しかないけど……)


 教会、図書館、ギルド……あとは


「つきましたわ。」


「あ、ここかぁ……」


 見覚えのあるお店。エルザと前に1回来た場所だ。わたしの武器の金属バットをくれた、とんでもない髪の色したお姉さん、ソフィアさんのお店。


「わたしがここ知ってるってよくわかったね?」


「先日このお店にお邪魔した際にききましたの。金属バットを貰っていった変わった子がいる……と。」


「あはは……なるほど」


(なんかわたし、どんどんこの街で変な人扱いが広まってる気が…… )

 

 いつかどこかで必ず名誉挽回しなくては!


「ま、いいや。入ろ。」


「はい。」


(そういえば……マリアは武器を何も持ってないけど……)


 ――――――――――――――――


「いらっしゃい……あら、あなた達……」


 ソフィアさんはカウンターの方に座っていて、わたしたちの方をみると嬉しそうに笑って言う。


「ユイちゃん、その武器……どう?」


「え、まだあんまり使ってないですけど……手に馴染みますよ。」


(少しだけソフトボールやってた時期もあったからだけど)


 そう!実はわたし、ソフトボールやってました!だから金属バットは手に馴染む!まあ長さ違うから微妙だけど、いきなり槍だとか剣だとか持つよりは絶対いい!だからわたしはこれを選んだんだよ。


「もしなにかあったらすぐ言ってくれて構わないからね。できることなら武器の調整もしてあげるわよ。」


(金属バットの調整って何するんだ……)


「………それで、マリアちゃんはアレについてよね?」


「はい、そのとおりですわ。」


(ん、なんだろ……)


 2人は予め何か話しをつけていたようで、マリアはカウンターにいきソフィアさんに傘をわたした。


「これですわ。」


「なるほどね……面白いじゃない。」


(???)


 何してるんだこのふたりは?


「ユイちゃんもこっち来ていいわよ、ほらこれ。マリアちゃんの武器なの。」


「え、これが!?」


 だってそれ、ただの日傘だよ……?どう見てもそれでモンスターぶん殴ったら折れるよ?


「そういえば……ユイ様にはまだ言っていませんでしたわね。わたくしのこの傘は日傘ではなくってよ。これは魔法を使うための道具。誰もがユイ様のように簡単に強力な魔法が使えるわけではありませんわ。ですので、わたくしをはじめとした、魔法主体で戦う人の多くは、魔法を補助する武器を使うわけですの。」


「へえ」


(そっか。わたし基準で考えた。でもそうなると、カレンのあれは……)


 魔法なのかどうかもわからないし、武器も持ってなかったのにどうして………会いたくないけど、もし今度あったらきいてみよう!


「……あれ?」


「どうされました?」


「ユイちゃん?」


 2人に顔を覗き込まれる。


「ソフィアさんって……そんなことも出来るんですか?鍛冶屋さんかと思ったけど……魔法関係も得意とか?」


 すると、ソフィアさんは驚いたような顔で言う。


「あら……ユイちゃんの地域でどうだったかは知らないけれど、ライズヴェルとその周辺の国ではこれが普通よ。鍛冶屋さんといえば、魔法の道具も扱うものなの。」


「そうなんだ……」


(鍛冶屋さんって名前でいいのかなそれ)


 そもそも、ソフィアさんが鍛冶屋さんに見えない。店の奥の方には一応それっぽい施設もあるし、そのせいで室温も高いけど……。


「それで、マリアちゃん……これはどこで手に入れたものなの?こんな形の魔法武器を作る人はこの街には居ないし、私の知る限りは他の街にもいないけれど……」


「そうですわね……これはすこし特別なものですの。わたくしが冒険者になると決意した時に、わたくしのお父様がプレゼントしてくれたものですの。」


「お父さん……鍛冶屋さんなのかしら?」


(わたし完全に蚊帳の外だなぁ)


 2人の会話はもう完全に2人だけで完結してしまってる。何も知らないわたしが入る隙はなさそう。


「いえ……わたくしのお父様とお母様は、昔……わたくしが産まれるよりまえに遠い異国の地を旅していた……らしいですわ。その時にどこかの国でかったこれを、いつの日か産まれる自分の子供が冒険者になった時のために……と、大切に取っておいてくれましたの。」


「遠い国………通りで見たことの無いもののはずね。」


「ねーねー」

 

 なんか悔しいし、2人に割って入る。


「あら、どうかした?」


「その武器ってさ、昔に買ったんでしょ?それなのにまだ使えるなんてすごいよね?」


 マリアの持っている傘……にしか見えない武器は、少しボロく見えるけど、壊れてる様子もないし、汚くもない。マリアが産まれる前からってことは、下手したら20年以上前からってことだよね……。


「わたくしも丁寧に手入れをしているのですわ。……それでも、素人には限界があるので今回はこうしてソフィアさんに頼みに来たのです。……このような異国の武器の調整や補修もできるものなのでしょうか……」


「大丈夫、私に任せておいて。しばらく預かるから、何日かしたらまた来てね。」


 ソフィアさんはとびっきりの笑顔で傘を受け取り、奥に持っていった。


「マリア……武器が帰ってきたら一緒に依頼行こうよ!その武器で戦うところ見てみたいし!」


「もちろんですわ!ユイ様から誘っていただけるなんてとても光栄ですわ……!」


「あらあら……2人はどういう関係なのかしらね?」


「うっ」


 戻ってきたソフィアさんに見られてた。カウンターに腕を乗せてニヤニヤして、楽しんでそうな……。


「わたくしはユイ様の」


「わたしとマリアは友達!それだけ!仲良しだけどそれだけ!ね!ね?」


「……ユイ様がそう言うなら、わたくしはそれを否定しませんわ。」


(それ逆に怪しいでしょ……)


「ふふ……とっても仲良しなのね。羨ましいわ。私は仲のいい人なんてそんなにいないし……エルザくらいかしら。」


「エルザ……」


 エルザの名前を出した時、ソフィアさんは一瞬だけなんとも言えない、寂しそうな顔をした……気がした。そんなの気のせいかもしれないけど、そんな気がした。


「ユイ様と知り合いの方でしたわね。ソフィアさんとはどのような関係でして?」


「わたしも気になる!」


「そうね……それは今は言えない……ごめんね。」


「……そっか」


(だと思った……)


 エルザは何か、友達や仲間に対して大きな負の感情を持っていた。そんなエルザと仲のいいソフィアさんには、きっとなにか特別な事情があるはず。それならそんな簡単には言えない……当然か。


「……それならわたくしも無理にはききませんわ。さて、わたくしはお先に失礼いたします。ユイ様、またお会いしましょう。」


「あ、うん」


 マリアは丁寧にお辞儀をし、店の外に出ていった。店内にはわたしとソフィアさん二人。わたしも特に用ないし、帰ろ……


「……ねえユイちゃん」


「な、なんですか……」


 カウンター越しに、ソフィアさんに肩を掴まれる。なになに


「ユイちゃん、とってもかわいいわよね……」


「まってください」


 ソフィアさんは一旦手を離して、カウンターから出てきてわたしのすぐ近くに来る。


「マリアちゃんがあんなふうになるのも納得よね。」


「……」


(近い近い)


 ソフィアさんは鼻がぶつかりそうなくらいに顔を近づけてきた。ソフィアさんのとち狂った色の髪からはいい匂いがしてくる。


「髪も綺麗よね。変わって色だけれど、素敵よ。」


 今度はわたしのツインテールと、結び目に着けているリボンを触りだした。……髪の色に関してはあなたには言われたくないです。


「なんのつもりですか……」


 鍛冶設備のせいでじんわりとした熱気を感じる室温の店内。そのせいなのかはわからないけど、ほんのり汗が出てくる。


「エルザがいた時はね、こんなふうにはできないから。」


「…………」


(どこまで本気なの……)


 これもわたしの能力のせい?そのせいでソフィアさんはわたしに惚れたの?でも、マリアの時みたいに親切にもしてないし、惚れられたとしても、ここまでされるとは思えない……


「ほ、他のお客さんが来るかもしれませんよ……?」


「平気よ……この時間はいつも誰も来ないのよ。」


「ひゃっ」


(変な声出たじゃん……)


 何を思ったのか、ソフィアさんはいきなりわたしの顔に触れてきた。自分でもびっくりするような変な声が出た。わたしこんな声出せるんだ。


(瞳が……)


 ソフィアさんは真っ直ぐわたしを見つめている。その綺麗な瞳をみてると、こっちまで変な気分になってくる……そんな気なんてないのに。


「……ふふ、ユイちゃん………」


(お、おぉ……)


 これは……

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