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混沌と神々

 わたしがイブ達のことを言った途端、アイテールは申しなさそうになり言う。


「君以外の3人はもう元の世界に戻ってるんだ。さっき、階段を上がってくる時にみんなまとめて帰してあげるつもりだったんだけど……どうしてだか、君だけは上手くいかなくてこっちに残っちゃったみたいだ」


「はぁ?」


 なにそれ? あの一瞬でイブ達だけは元の世界にって……これもう嫌がらせじゃないの? やっぱりアイテールってわたしのこと嫌いなんかな……。


「嫌いじゃないよ別に」


「勝手に人の心を読まないで」


「うーんと……」


 アイテールは赤く染まる空を見上げ、神らしくもなく言葉を選びながら言う。


「そう。僕ですら把握しきれてない程に、君の人生や運命は色んなことがありすぎる。多分それが何かしら作用して僕の力すら上手く通用していないんだと思うのさ。人の身になった神との接触、この世界の無いはずの武器を使う女の子……僕がちょっと目を離した隙にもうたくさんのことが起きてる。君の運命は神ですら扱いきれないものになってしまったのさ」


「で、わたしはどうしたらいいの」


 アイテールの話に付き合っても時間の無駄ってことは嫌という程分かってる。だから早く、結論を。……いそがないといけない理由もあるし。


「全知全能の神でも分からないね。今言った通り、君が背負った運命はもう誰にも予測できなくて扱いきれないだろう。まあ……だからといって見捨てたら僕も神としておしまいさ。帰る方法は一緒にさがすし、気になることがあるから歩きながらでも教えてあげるよ」


「わたしが何したって言うの……」


 大元で言えば、ちょっとアレな事故で死んだだけで、それで終わりだったはずなのに。異世界転生して、それはそれですごい面白いとは思ったけど、それにしたってなんでこんな面倒事にお祭りになるの?


─────────────────────


 赤い空の元、気味の悪い平原を少し歩き、アイテールが言う。


「さっきも少し言ったけど、ここは本来は何も無い世界だったんだ。だけど、色んなことがあって本来の世界の要素が現れるようになって、教会とか……遠くにはお城まである。色んな生き物の要素があわさった出来損ないの化け物だっているさ」


(イブが倒したのはそれかな……)


 それにしたって、カスの世界だの出来損ないだの、いちいちとげのある言い方。仮にも自分の作った世界だってのに。なんなら少し楽しそうな顔して喋るアイテールを見ると、やっぱり神様なんて (良くも悪くも)上位存在なんだなって思っちゃう。

 足元に目を落とすと、草はほとんどなく、むき出しの地面は赤黒い塊で構成されている。……言いたくないけど、血肉によく似てるかも。


「ところで、教会の地下の装置は見た? カレンに意味深なことだけ言われたんじゃない?」


「みたよ……言われたし」


 既に忘れかけてた。


「……教会の罪だの、隠したいことだの……そんな遠回しな言い方しなくていいのにさ。知りたいなら教えてあげるけど、どうす」


「教えて、いますぐ!」


 アイテールを遮る勢いで叫ぶ。チャンス到来、絶対に逃さない! この世界、気になることとか謎だけ振りまいていなくなる人とか神ばっかりで本当にイライラするから。こういう時にはぐらかされたりする前に絶対に聞き出す!


「好奇心の塊だ。 まあいいけど。あの装置は巨大な金庫みたいなものさ。特定の手順で操作すると開く。金庫、ってことはもちろんその奥には閉まっておかないといけないものがある」


 アイテールは歩くのをとめ、わたしの方を振り返る。


「オーリン教が抱える最大にして最凶の秘密、そして罪。世界に対して隠すにはあまりにも大きくて深い……しかし難しい話でもない。アルカディア歴の中で唯一の戦争……その戦争は、オーリン教が引き起こした。それも、出土した正体不明の武器……オーパーツを使って、全人類を支配しようと、ね。それに関係するものは全て、あの奥に隠された」


「……」


 全くの予想外、という訳でもない。大抵こういう時はこのパターンだから。だけど……


「今の歴史では些細な領土の争いが発展した、ってなっているだろう? ……オーリン教は歴史を捏造することすらできてしまう。都合の悪い歴史は地下に隠し、塗り替える。ならばそこまでしてオーリン教はどうしても世界しようとした? その目的……『支配』の先にあるものは? オーパーツって? きっと君は今そう思ってるはずさ」


「……分かってんならさっさと教えて 」


 するとアイテールは笑顔で頷く。


「もちろん。ここまで来て何かを隠すつもりもないさ。この赤い平原はまだまだ続きそうだし、時間の許す限りは僕は君に真実を伝える。結論から言うしよう。オーリン教がめざしたのは『救済』さ」


「死は救済とか……そんなつまんないこと言ったら失望するよ」


 アイテールはまた歩きだし、首を振る


「死は恐怖と絶望だからね。彼らが掲げた救済は今の子の魔法が支配する世界からの脱却さ。力で圧倒した後、その当時のフィリアはオーパーツを群衆にみせ、『魔法に頼らずとも力はある』『人類が真に生きる道はこれだ』っとか示した……と、ちょっと中断」


「おっけ」


 わたしたちの歩く道の先に人影がみえた。……遠目でもわかる、あれは……


「……話が全然進まない」


 カレンだ。



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