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暁の挽歌

(そもそも……)


 エルザと一緒に、教会の周りを少し歩く。まず、この世界はなんなんだろう。この建物やこの辺りの風景からすると、わたし達がさっきまでいた世界と構造的には同じなんだと思う。でも、空の色は変だし教会はボロボロ。それに、あの文字……。


「ん……」


「エルザ?」


 突然、エルザが立ち止まり咳払いをし始めた。なんか、そういうことしてるの初めて見た。


「失礼しました……。なんだか、空気中に妙な粒子でも漂っているのでしょうか……? 喉になにか違和感を覚えて……」


「わたしはなんともないな……」


(エルザ、ちゃんと『違和感を覚える』っていうのしっかりしてるなぁ。わたしなら『違和感を感じる』って言っちゃうし)


 その後もしばらく歩いて教会を見てみるも、これといった発見はない。エルザの話を聞いてみたところ、エルザも壁の一角に読み取れないもののなにかの文字を見つけたみたいだった。でも、結局それ以外には何も見つからない。


「うーん……」


「気味が悪いですが……このまま2人でここをウロウロしていても何も見つかりません。一旦待っているふたりの所へ戻りますか?」


「うん……あんまり待たせるとイブが怒りそうだしねっ」


 まだ少し気になるけど、仕方なしに墓地の方に戻ることにした。


「これでももし戻って2人ともいなかったら……いよいよって感じしない?」


「……まるでホラー小説のようです」


 エルザはわたしの方を見ることなく、淡々と言う。


(あ、そういう娯楽的な小説はあるんだ)


 未だに、この世界についてなんにも理解出来て無いなぁって改めて思う。わたし、こっちにきてからどれくらいだっけ?


「おーい、2人ともお待たせ〜」


 墓地に戻ると、ちゃんと二人ともいた。赤い空に照らされてそこに立っているふたりは、何も知らずに見たら悪者に見えそうだよね。とくに、返り血のようなもので染まってると……


「なんで!?」


「……何があったのですか?」


 そう。イブとメルはそれこそ返り血でも浴びたのかの如く服や髪がところどころ赤く染まっている。そして、イブは武器を手に持っている。その刀身もまた赤く……。


「戻ってきたか。……別に何もねーよ、とっとと帰るぞ」


「流石に無理がある!」


「クソが……おい、お姫サマ。説明してやれ」


「は、はい!」


 イブは説明をメルに任せると、倒れていた墓石の上に座った。そんな罰当たりな……。


「ええっと……ユイ様達がこの場を離れてすぐ……あちらの方から」


 そう言いながらメルが指さしたのは墓地の奥の方。多分、行き止まりだと思うけど……


「あちらから、()()()が来たんです。」


「なにか?」


「はい。なにか……本当に、そのようにしか表現出来ないような……見た目の共通点こそないんですが、その奇妙さは()()()()()に通ずるものを感じました……」


 その表現に、エルザはまるで心当たりがないせいで微妙に納得していない顔。まあ、カレンの本当の姿みてないしね。

 でも、メルはそれを気にせず続ける。


「そしてそれは(わたくし)達に向かい攻撃を仕掛けてきました。まるで規則性のない不気味な動きに、私はまるで手を出せませんでした……しかし、」


 メルがそこまで言うと、イブが立ち上がり喋り出す。


「ボクから言わせてもらえば雑魚だったぜ。剣で一撃切り裂いてやれば直ぐに死んだ。ただ……生命活動が停止した途端、全身から血を吹き出して死体もろとも消えやがった。おかげでボク達はこの有様さ。……ムカつく」


「気持ち悪い……。よ、よし……もう帰ろっ! ここがなんだか知らないけど、いいよそんなことは! ね、帰ろ! 」


「……私も賛成です。触らぬ神に祟りなし……とでも言いましょうか。これ以上ここで何かをすることさ災いを招く予感がします」


「ボクもそれでいいぜ。こんなんボクのやることじゃねーしな。あとでギルドのヤツらにいって探検隊でも派遣させればいいだろ?」


 エルザとイブはすぐに頷き、階段の方へ行く。


「メルは?」


「わ、私は……」


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