見るからに怪しいと逆に何もなさそうだよね
「あの装置……たぶん、開くと思うよ」
「は? 開く? 何言ってんだお前」
ふざけた訳じゃなく、真面目に答えたけどイブには全く伝わらなかった。
「ほら……あのバルブみたいな歯車みたいなやつ……あれを回すと奥の壁がドアみたいに開いて……その奥になんか隠してあると思う……」
「……壁全体がデカい扉ってことか……だとしたら、そこまでして隠したいやばいもんでもあるって思ってんのか?」
「それは……」
(それは、多分……)
カレンが今まで行ってきたことや教会と歴史に関連する少しの矛盾。それからこのお墓の表向きの存在意義からの深読みをするとなんとなくの想像は着く。つくけど……
「たぶん、わたしの推測をきいてもイブは絶対信用してくれないし、鼻で笑ってバカにするとおもう。それくらい、突拍子もない発想だから……」
「? ボクはいつもお前のことバカにしてるし今更だろ?」
「は?」
え、そうだったの? 普通にひくなそれは……。
「まあなんだっていいよ。へんにもったいぶって長引かせて引っ張って時間稼ぐのがボクは1番嫌いだからな。ほら、言えよ」
「それは確かにわたしも大嫌い。……じゃあ言うけど、もしこの壁が開くとしたら……その奥に隠されてるのは、本来、もうこの世界に存在してはいけないもの……だと思う。世界を一瞬で壊せる魔法とか、それこそノーザンライトを破滅させるほどの武器だとか、そういうのはもちろんとして……それだけじゃない。きっと、神の力の一部が隠されてると思う」
「……ノーザンライトを破滅させる武器……そんなもんに心当たりがあんのか?」
イブは少し驚いた様子でわたしに詰め寄ってくる。ああそうか……イブは禁忌の魔法もティアナのあの武器のことも詳しくはなにも知らないんだっけ? だとしたら説明めんどくさいな……今の本質はそこじゃないんだよ。
「……ほら、イブが前に話してくれたでしょ? ノーザンライトは突然現れた変な人間にめちゃくちゃにされたって。そいつが持ってたような武器は多分ほかにも種類があって……それがあるような気がするってこと」
「あ? なんでおまえその武器のこと見たことあるような言い方なんだ?」
「あー……」
(めんどくさい……)
話が進まない。
「ちょっと確認するけどさ。この扉っぽいものの話とノーザンライトに関連した話……どっちが気になる? 両方同時進行は無理だから一つ一つ片付けたいからさ。だから……イブが気になるの方先に話すよ」
(なんて、こんなふうに言ったら……)
「んなの決まってんだろ。ノーザンライトの方だ。なんか知ってんなら今すぐ全部話せよ」
「まあ、そうなるよね」
イブはすこしイラついた様子で言ってくる。まあそらそうだよね。イブの目的はそれなんだし、それを知って何とかすることが出来たならもう何科に縛られる必要もなくなるし、なんなら帰ってもいいわけだし。
「んー……とりあえずここから離れる? これに関する話しないならとっとと出た方がいいと思うし。イブはいいけど、わたしがここにいるの見つかったらめんどくさくない?」
「そーだな。あの女にみつかったら殺されるかもな」
「?」
(なんで?)
エルザってそんなにやばんじゃないでしょ……イブやナナミじゃあるまいし。
「よし、ならいくか」
と、わたし達が階段の方に向かって歩き出すのとほぼ同時。上からまたしても誰か下ってきた。今度は1人……ってことは。
「も、戻ってきちゃった……?」
「……いや、多分別人だ。足音が違うだろ。そんなこともわかんねーのかよ……」
「……」
(……????)
言われてもなおわからない。靴とかが違うってこと? 他人がどんな靴履いてるかまで気にしたことないしなぁ……なんてのは今はどうでもいい。エルザじゃない誰かがここに来るのはエルザが戻ってくるよりもまずいんじゃないの?