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閉ざした地下と歴史

(今この場に来る可能性のある2人といえば……)


 そんなことはもう考えなくてもわかる。どっか別の場所での集会かなにかが終わって帰ってきたフィリアさんとエルザに決まってる。……あの二人はこの場所を知ってるのかな。そもそも、どうしてカレンの親 (本人はこの墓は親みたいなものって言ってたけど神様なんだからそんなわけないけど)のお墓の下にこんな空間が……。


(2人は『どうしてこんな場所に階段が……?』って思っておりてきたのか、『ここが誰かに見つかったり侵入されてたらまずい』ってつもりで来たのか、どっちだろ……)

 

 なんにせよ、見つかりたくはない。時間の問題だとは思うけど、とりあえず奥の方で身を隠し、降りてきた二人の会話に耳を傾ける。……身を隠すと言っても、なにか遮るものがある訳でもないから壁沿いにある微妙な窪みに無理狩り体を挟み込んでるだけ。


「……なのかもしれない……」


「それなら……を……」


(何の話だろ……まだよく聞こえない)


 なにかの相談……あれ、ていうかなんか変な感じが……。


(エルザっぽい声は聞こえたけど、もう1人は……)


「墓の下に隠すものって言ったら金目の物かなんか特殊な保存の仕方の死体……か、()()()()()()()()()()()()くらいしか思いつかねーだろ。しかもこんな広い空間……なんのつもりかしらねーけど、ボクを呼んで何する気だ?」


(イブ! ……どうしてエルザと?)


 聞き間違いなわけが無い。この声とあの失礼なしゃべり方は間違いなくイブだ。まだハッキリと姿は見えてないけど確信できる。


「……あなたはこの空間についてどう思いますか?」


(やっぱりエルザだよね……)


 2人は喋りながら少しづつこっちに近づいて来ている。はっきりと見えてきたその姿は紛れもなくエルザとイブ。なんか久しぶり。うん、このエルザは本物だと思う。


「だから……なんか隠してんだよ、どうせ。 奥の壁とかどうみてと怪しいだろ。……どーせオーリン教にとって都合の悪いことだろうしよ」


「先程墓地を訪れた時、この階段を見つけました。私もこのような場所があるのは今の今までまるで知りませんでしたので、ここがなんのための空間なのかまるで見当がつきませんね。……それに、あの墓は……」


「『もしなにか危ないものがあった場合の対処』……としてボクに声をかけたってことだろ? さっきもそれは聞いたぜ……でも、とくに危険はなさそうか?」


 そう言いながらも、イブは剣を抜いて直ぐに戦闘に入れるような体勢をとっている。


(なるほど……エルザはここを調査するためにイブに声をかけたんだ……多分、わたしがいたらその役目はわたしだったはず)

 

 でも、エルザもここを知らないなら……やっぱりフィリアさんが怪しいって思っちゃう。確証も何も無い偏見なんだけど。いや、もちろん本心としてはフィリアさんは何も裏がない人であって欲しいんだけど……。


「で、あの奥の壁はなんなんだ?」

 

「なにかの装置……でしょうか。やけに大きいですが……」


 やっぱり2人ともアレが気になるみたいで、少し離れたところから壁を眺めている。しばらくすると、イブが言う。


「よし。ボクがちょっと調べてやる。だから……離れてろ。もしかしたら急に爆発したり、変な攻撃を仕掛けてくる可能性もゼロじゃねーしな。仮にこの空間が崩れたとして……ボク1人ならどうにでもなるけどさ」


「……それは私を心配しているのでしょうか」


「心配ってか……教会の偉い人に気に入られてる奴をなんかの間違いで怪我させたらめんどくせぇからな。だから一旦外で待ってろ。平気そうならすぐ戻るから」


(……変な気遣い)


 なんかイブらしくない。『そんなことしらねーよ!』ってくらいの勢いで壁ごとぶっ壊しそうなのに。


「わかりました……では、階段をあがったところで待つことにします。ただし……あなたが上に戻ってくるまでに時間がかかり過ぎた場合は様子を見に私も降りることにしますが」


「おっけーおっけー、ボクがヘマするわけねーから安心してろ!」


 それで一応エルザは納得したみたいで、階段をあがっていった。エルザの姿が見えなくなって、足音を聞こえなくなった頃にイブは壁の装置に近づいて、しばらく立ち止まった。そして、少し小さい声で言う。


「……隠れてるつもりか?」


「あ、バレた?」


「辺境に行ったはずなのになんでここにいる……かはこの際聞かないでおいてやる。お前の人生なんでもありだしな」


 誤魔化しても無駄ってのは分かりきってるから、すぐにイブの元まで歩いていく。イブはそんなわたしを見て、少し笑いながら言う。


「ホントにおまえ……なんで面倒事があると絶対巻き込まれてんだよ……」


「いや〜……それがわたしの運命(fate)ってかんじ……」


「お前がいるから面倒事が起きてるならいっそ殺してやろうか?」


「なんでそんなキレてるの!?」


 武器を持ちながら言われると笑えないから!


「クソ……ボクはこんなことしてる場合じゃないんだよ……」


「あー、そういえばティアナに会ったよ」


「は? 誰だよそいつ。お前の辺境での冒険の思い出話なんて今はいいんだよ。それより、この空間とあの壁の装置……お前はどう思ってんだよ。」


(ん?)


 あれ、イブはティアナのこと知らないの? それとも、名前を知らないってだけ? 詳しく説明してあげようと思ったけど、今はイブのペースに合わせておいた方がいいかも。怒らせたら本気で殺し合いが始まりそうだし。まあその場合、わたしが勝つんだけど……

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