表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/158

何度目の転換?

あけましておめでとうございます

「……」


 カレンはしばらくの間黙り、地下の空間の奥にある奇妙な装置を見つめていた。そうやって無謀部に背中を晒し続けるのは、わたしに攻撃の意思がないのを分かっているのか、何か策があるのか、それとも……。


「かつての神は人を見捨てて堕落した……それなら残された人間……『神を崇める者たち』はどうなるのかかしらね……ふふ、貴女にはきっと理解出来ないこと」


「……カレンがいなくなっても原初の炎を灯した女神を信じた人達は沢山いたじゃん。そもそも、多くの人間は神が居なくなったなんて知らないし、そもそも神の存在を認知できてないはずだよ」


 そして、居ないはずの神に祈り続けたことであのふわふわ女神スティアが生まれたとかだったはず。


「人が犯した罪は何百、何千の時を経ても永劫に消えないもの……禁忌の魔法もそのひとつ。オーリン教なんてものが出来るより前の時代……ワタシと人間達で封印したはずのチカラはその欠片をだけを世界に残し、またこの世界に蘇った……ふふ、人間の愚かさはそれだけで世界を破滅に導く力があるわ。……そう。元はと言えばあの人工遺物だってそうよ」


 カレンは相変わらず背中を向けたまま、感情を読み取りにくい喋り方をする。


「まあ、もしカレンが自力で作ってたら『神創遺物』とかだろうしね」


「いまはそういう言葉遊びをしたい訳じゃないわ」


(あれ、いまわたし怒られた?)


 いまのは感情がやけに感じられた。イラッとしてて怒ってる感じ。なんでわたしがカレンに怒られるの?


「……ティアナという少女の武器……あれは人の身にあまる力……そう遠くないうちに彼女はその力に飲まれるわ」


「ティアナのこと知ってるの? っていうかさ……」

 

 なんかカレン、雰囲気変わった……と言おうと思った矢先、カレンが振り返り笑いながら言う。


「ふふ……世界と人々を見捨て、偽りの全能神に踊らされ貴女や貴女の仲間を殺そうとしたワタシの言うことなんて信じられないでしょう? それでいいわ……ワタシの紡ぐ言葉をその耳で受け入れなさい」


「へ?」


 前後の言葉の繋がりがなく、矛盾してるような奇妙な言葉をつぶやくカレン。そして、一瞬のうちにわたしの隣に移動してきて、耳元で小さな声で囁く。


「『原初の炎の神は人間を見捨てた。人間は世界を壊したかの大戦を経て、人間と接触をしてきた女神を失望させた。幾千もの昔より蘇りし古の兵器は人の心に漆黒の闇を落とした。果てなき殺戮の先、女神はそれらを【無】に返し、世界から姿を消した』」


「な、何突然……」


 抑揚のない、まるで機械音声のような声で謎の詩を囁いたカレン。そして最後に


「『その罪はオーリン教の血塗られた歴史となり、永劫にここに刻む。何人たりとも装置を起動してはならぬ。我らはこれより存在しなくなった神を崇める』……ふふふ、さあ……あなたはこれを聞いて何を感じるかしら……」


 それを言い残し、カレンは突然姿を消した。わたしの視界から消えたとか、移動したとかではなく……いなくなった。神の力がないはずなのに、どんな方法で……?


「……意味わかんない」


(謎がひとつ解けたと思うと10個くらい増える……)


 イライラする気持ちもあるけど、それをここで爆発させても意味が無い。改めて地下空間を見渡し、奥の壁に近づく。


(起動させてはいけない……これはなんの装置なんだろう……)


 壁を見上げてもまるで分からない。恐らく、なにかの装置を壁に埋め込んでるんだとは思うけど。あえて言うなら……大きい、バルブのような形の物が壁から突き出ていて、そのバルブの先に歯車がいくつかついてるような形……とか?


(そもそも起動っていっても……方法も分からないし)


 ……


 カレンの言ってたことをわたしになりに解釈するなら、禁忌の魔法に関連した戦争のしばらく後に、人間が何かさらにとんでもないことをしたってことになる。そして、その『なにか』は前に図書館で呼んだオーパーツ的なものに関係してて、もっと言うならたぶんそのオーパーツ的なもののひとつはティアナの使ってるあの武器だ。その力はものすごく強いらしいけど、なにかネガティブな効果も内包されてるんだと思う。


(古代に生きた人々がどんな手段でそれを作ったのかは知らないけど、ティアナはそれを知らないで使ったせいで……)


 あの変な影……きっとあいつだ。ティアナは何も知らないで武器を手にして、その強さに溺れた……。その結果、あの影が現れてティアナを追いかけてる? ティアナはアレを極端に恐れてて、逃げたいんだ……。


(……だとしても、わたしにどうしろと?)


 今の推測が全部あってたとしてさ。『で?』って話しじゃん。なんでカレンはわざわざわたしを呼び付けてこんな話したの? わたし何も出来ないし。そんなことよりまずは禁忌の魔法とかマリアとかリズの方を何とかしたいんだけど。


(何か一つ目的が決まったと思うとすぐ横槍が入る……)


 アイテールとかもそうだし。なに? みんなしてわたしの邪魔してる?


(ていうか……オーリン教ってやっぱり……)


 たしか、戦争の100年後くらいにオーリン教が出来たはずだけど、戦争がきっかけでカレンが人間に干渉してきたからオーリン教なんてものが作られたのかな。で、その後しばらくは平和だったけど……カレンの言ってた詩を信じるなら、オーリン教が何かやらかしてるし。


「……!」


 色々考えてると、不意に背後……階段の方から足音が聞こえてきた。それも、おそらく2人。


(ど、どうしよ……)


 誰が何しに来たか知らないけど、こんな所にいるのが見られたら絶対怪しまれる。とりあえず隠れないと……!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ