水面に映った真実
久しぶりなのに短くて申し訳ないです。
「ユイ? どうかしました?」
わたしが立ち止まって考えをめぐらせていると、それを不審に思ったエルザは振り返り近づいてきた。
「あ……なんか……ごめん、もうちょっと待って……」
「……?」
(どこだっけ……いつ……なんの時に……)
ここに直接来たことないなら、何かで見た? でも何で? それに、見たとしてもまるで自分の体験したことかのように思ったりするかな……?
(見た……なのにわたし自身が体験したかのような………………そうだ、あれだ……!)
記憶の底の片隅からいま、見つけ出した。結構前に夢の中でスティアに見せてもらった映像だ。あの時、スティアは『可能性』って言ってた。その映像はたしか、この場所でわたしとエルザがちょうど今みたいに向き合って、それで……
「わたしを殺そうとする!」
思い出したちょうどその瞬間、エルザは鋭い刃の鎌をわたしに振り下ろしてきた。ギリギリでそれを思い出せたおかげで、半歩後ろ側に飛び退いてなんとか間一髪でかわすことができた。
「……まさか避けるとは……」
エルザは予想外の事が起きたといった様子でわたしを見ている。でも、諦めたって訳でもなさそう。地面に叩きつけられた鎌の刃を目を細めて眺めている。
(そう……あの映像は可能性だったわけだから、逆に言えば『わたしが殺されない可能性』だって十分にあるってこと。でも……エルザ、どうして?)
どんなに理由を考えても、エルザとわたしが対立する原因が思いつかない。わたしなんかしちゃった? セレナさんとか関係? それとも、フィリアさん? ていうかここはなんなの? カレンも関係してる?
でも、そんな疑問を挟む余地は今はないみたいで、エルザはまたわたしに向かって刃を振るってくる。
「危ないっ!! エルザ! やめてよ! どうしたの!?」
幸い、攻撃してくるとわかっていればそれを避けるのは難しくはない。でも、きっとこれだけでは終わらないはず……!
「さすがですね……そう簡単にはいきませんか。……なら、これなら……!」
ある意味予想通り。エルザは鎌を右手だけ持ち、空いた左手で魔法を使おうとしてきた。エルザが使う魔法……多分、氷……だと思う。
「凍てつく混沌……漆黒の刃となりユイを襲いなさい!」
そして、エルザの指先から放たれた魔法は
「……闇!?」
真っ黒な5本の線がわたしに向かって伸びてくる。なんとなくだけど、それが氷じゃなくて闇の魔法だってことは理解出来た。でも、そんなはず……エルザも実は闇の力を持ってたの?
「煌星の障壁! 闇は光には勝てないんだから!」
とっさの判断で、光の魔法で壁を作った。なんか、これ前も似たようなことしたような気がしなくもない。
「エルザ……闇の魔法なんて使えたの? 今までぜんぜんそんなこと言ってなかったし、むしろ闇は嫌いなような感じだったのに……」
闇を打ち払う障壁を作ったまま、ゆっくりとエルザに近づく。エルザは少しだけ光の魔法を嫌がる素振りをしつつ、何故か少し笑って言う。
「……ふふ、そうね……間違えたみたいです」
「は?」