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平原の危機

 カレンの案内で、街の外に向かう。今回も大体30分くらいに着くところにある場所らしく、徒歩で行くみたい。


「ユイ……あなたはどこから来たのかしら………」


 街の外の平原を歩きながら、カレンにきかれた。


(いきなり痛いとこついてくるなぁ……)


「わたしは……ちょっと遠い国から来たの。」


「そう……その割には言葉を使うのがすごく上手ね………そうだ。あなたの母国はどんな言葉を使っていたのかしら。きかせてほしいわ。」


「なぬっ……!?」


(これは完全に予想外……!!)


 こっちの世界に来て、文字も読めて言葉も通じて便利だとしか思ってなかった。そもそも、この世界に複数の言語があるなんて考えてもいなかった。どうしてその可能性に考えが行かなかったんだ…………!


「あら………どうしたの。」


 不自然に黙ってしまい、カレンに不審がられる。


(ど、どうする………)


 そもそも、謎の力でわたしが聴く言語と話す言語、読む言語はわたしにとって1番馴染みの深いものに自動で変換されてる気がする。そのせいで、この世界の言語事情が全くわからない。実際、文字上手く書けないし。


「あ、あのさ………えっと………うーん……あっ!!カレン!あそこ見て!あれヤバくない!?」


「…………あれは………」


 まるで苦しい嘘みたいだけど、嘘じゃない。わたしの指さした方にはマジのピンチな場面が広がっていた。


 広い草原で、綺麗な服を着た一人の女の子が剣を地面に突き立て、膝を着いている。そのすぐ前には、翼の生えたライオンのようなモンスターがいて、今すぐにでも噛みつきそうな雰囲気……。


「助けないと!」


「そうね………せっかくだからワタシの力を見せてあげる。ユイはそこで見ていればいいわ。」


「え、でも……危ないよ!」


「平気よ…………さあ、いきましょうか………ワタシに力を貸してね…………ふふ………」


 カレンは少し前に出る。その時、モンスターと、女の子はほぼ同時にこちらに気がついた。


「た、助け」


「安心しなさい………言われなくてもそのつもりよ………現れなさい……人工遺物(Artifact)!」


(なにこれ!?)


 カレンが珍しく大きな声を出すと、それに呼び出されたかのようにその周囲に2本の剣が現れた。空中を浮遊するその剣は、綺麗な装飾が全体に施されていて、飾り物みたい。


「カレン……なにそれ!?」


「これこそが……世界でワタシにだけ許された力……いずれかの未来にワタシが迎える始まりに添える力のひとつ………ふふふ……」


「あ、はい」


(……でも、魔法………とも違う気がする。どのエレメントにも当てはまらないし………。)


「さあ………その力で全てを引き裂いてあげて………」


 カレンが命令すると、その剣達はモンスターに向かって飛んで行った。そして、威嚇するようにそのまわりを飛び回る。


「………そうだ、今のうちに!」


 モンスターはカレンの剣に気を取られている。その隙に、膝を着いていた女の子の元まで近寄る。


「平気?立てる?」


 地面に刺さっている剣を抜き、手を持ってあげる。


「も、申し訳ないです………肩を借ります………」


「いいよ、ほら、あっち」


 わたしより少し背の低い、緑色の髪のその子の肩を支え、カレンのいる方に向かう。女の子の格好はとても、剣をもって近接戦をするような格好には見えない……まるで、お姫様みたいな格好。何の目的でこんな所に………


「………くっ」


「カレン?」


 もうすぐカレンのところに着く、その時にカレンは少し苦しそうな声を上げた。


「まさか……ユイ。あれを見て。」


「………ちょ!?」


 カレンに言われた方を見ると、あのライオンのようなモンスターが2本の剣を噛み砕いていた。砕けた剣はもう操ることが出来ないみたいで、その場に散らばっている。


「普段ならこんなことは無いのだけど………不思議ね。あの剣自体はまた呼び出せる……でも、今は無理。残念だけれど、あとはあなたにまかせるわね…………。さあ、あなたの力を見せてあげて………」


(無責任なこと………)


 でも、わたしがやらないとみんなやられる。だし惜しむものでもないし、やるしかない!


「いいよ………!カレン、この子をお願い!」


 さすがに支えてたげたままじゃ戦えないから、女の子と剣をカレンに預けようすると


「…………それは無理ね。」


 まさかの返事。


「はぁ!?」


(無理って………)


 それは冗談ではないみたいで、カレンはこっちを向いたまま少しずつ下がっていき、距離をとる。その視線は助けてあげた女の子に向いている。


「私のことは……無視して構いません……」


「ダメだよ!……わたしの傍から離れないでね!こうなったら護りながら戦うし!」


「は、はい……!」


(理由はわかんないけどカレンは信用出来ないし……)


 ちょうどいいタイミングで、モンスターはこちらに気がついた。口の周りや牙にはカレンの剣の残骸がこびりついている。その口の中から、猛獣のような唸り声がする。


「私………足でまといに…………」


「ならない!絶対平気!わたしが倒してあげるから!」


「ユイ」


 いい感じにわたしも気分が乗ってきとたころに、遠くからカレンがみずをさしてくる。


「なに!?」


「あのモンスターを殺してはダメよ………ギルドを通して討伐の承認を受けていないモンスターを勝手に討伐すると処罰される…………それが決まり。」


「……………わかった」


 ここでルール違反なんてしたら笑えない。それなら、わたしの強さをモンスターに示してあげればいい。見たところ、頭も悪くなさそうだし自分が不利だと思えば逃げるはず。手に持っていた剣を一旦地面に置き、すぐに動ける体勢になる。


「……来た!」


 モンスターは地面を蹴り飛び上がった。そしてそのまま、わたしと女の子に向かって飛びかかってきた。


(………大丈夫、わたしは強いから…………)


 心を落ち着かせ、モンスターの飛び込んでくる軌道に合わせて右手に持ったバットを突き出す。モンスターはそのまま飛び込んできて、金属バットに噛み付いた。その瞬間、辺りに激しい音が響き渡った。牙とバットがぶつかったんだ。


「…………」


(すごい………壊れてない)


 バットは壊れるどころか、モンスターの牙を砕いた。わたしが持ってるから強化されてるのかもともとこの武器が強いのかは知らないけど………とにかく、ライオンの様なモンスターは驚いたように後ろに下がり、一旦距離をとった。


「牙を砕くなんて………」


「わたしにかかれば余裕だよ……!ほらほら………そんなやわな牙じゃあわたしには勝てないんだから大人しく逃げて!その方がお互いにとっての幸せだし。」


 モンスターに言葉が通じるかはわからない。でも、バットを向け、左手には炎の魔法を纏わせて言ってみる。もし言葉が理解出来て、目で見た情報を正確に処理できるほどの知能があるならこれで逃げてくれるはず…………はずなのに。


「うそ!?なんで!!」


「うっ………危ないです………!」


 モンスターは叫び声を上げ、わたしに向かって走ってきた。逃げようと思ったけど、そんな瞬時に動けない人を抱えて飛び出せるほどの瞬発力も判断力もない。


「あなただけでも逃げてください……!」

 

 膝をつき、苦しそうに女の子はいう。


(そんなの無理だよ………!)


 そんなことしたら、この子が死んじゃう。カレンはなんて思うか知らないけど、わたしはそんなの絶対いや!自分のせいで人が死ぬなんて受け入れられない!でもだからといって、今のわたしが全力で力をはなったら、きっと制御出来ずにすぐにモンスターを殺しちゃう………どうするの!?


「わたしは………強いんだよ!!!だから護れる!!殺さないし殺させない!!」


 どうしようもなく、無我夢中でそう叫んだ。するとその瞬間、わたしの前に薄い光のベールが現れ、モンスターはそれにぶつかり、その場に倒れた。


「え、なにこれ………」


 戸惑っていると、女の子が驚いたようにいう。


「そ、その力は………限りなく純粋に近い光の力………そこまでの強い力は初めて見ました………あなたは一体………」


(光の魔法………だせた)


 それにしても………カレンには深い闇の力だと言われ、この子には純粋な光の力…………わたしの中で光と闇が渦巻いてるの?もしかしてわたしは……【光と闇(Chaos)統べるもの(Master)】だったのかもしれないね……………そんなものは無いけど。








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