方針転換
村の中を適当に歩いていると、マリアの姿はすぐに見つかった。外に置いてあるベンチみたいなのに座ってて、隣にはリズもいた。多分、なんか話してる。
「ねえ、2人とも……」
(……いや)
こえをかけようとして、やっぱりやめて距離をとる。あとついでに別に何も悪いことしてないけどとりあえず近くの木の影に隠れる。
(やめとこうかな)
たしか、リズとマリアは元々知り合い……まあまあ仲も良かったような気がしなくもないし、多分わたしなんかよりよっぽどお互いのこと理解してると思う。それなら、こういう時はマリアに任せておいてわたしは出しゃばらない方がいいかもね。めんどくさいから逃げるわけじゃないよ。
(マリア、おねがいね)
リズのことはマリアに任せて、わたしはその場を後にした。
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ほんとは一旦ギルド支部に戻ってセレナさんに報告した方がいい気がするけど、今日は疲れたし眠いからこのまま帰るよ。
(リズのお兄さんってどうやってこの辺まで来たのかな〜)
ここにリズがいるって知っても、普通なら結構時間かかるし。やっぱり貴族専用のめちゃくちゃすごい馬車とかあるんかな。ずるいな〜。
考えながら歩いてたらすぐに家に着いた……気がした。気の所為だけど。
「ただいま〜」
誰もいない家に入り、とりあえず武器を玄関に置く。今日はもう家から出たくない。お風呂はいって寝る。
(リズもそのうちかえって来るでしょ……家の鍵も持ってるはずだし、問題ないね)
めちゃくちゃ色々あった1日だったね。今日はもう寝る。
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「ん〜……ん……」
昨日はお風呂から出たら少しだけなんか食べてすぐ寝ちゃったけど、感覚的にはまたしても一瞬で朝になった。夢も見ない。窓の外から差し込むのは……これは間違いなく朝日。大丈夫、昼じゃない。
「リズ、おはよ」
となりのベッドにはリズがちゃんといた。わたしが声をかける前から起きてて、すぐに反応して体を起こす。
「今日はちゃんと起きたのね。……なんか、昨日は色々と悪かったわね。あたしも、兄貴も……」
起きてすぐのリズは髪を解いててちょっと別人みたい。
「え、謝ることはないでしょ……少なくともわたしは気にしてないよ。禁忌の魔法とかどうでもいい……っていうか、リズがそれを使って悪いことしようとしてるとか思ってないし。」
「さすが……底抜けのおバカね」
「え」
めっちゃいい笑顔なんだけど、今バカにされたの? それともそういう褒め方? リズだとどっちもあるからわからない……。
「ちょっといいかい?」
突然、部屋のドアが開いて人が入ってきた。誰かと思ってそっちを向くと、村長さんだった。
「良くなくても入ってきた以上もう遅くないですか?」
「ははっ、朝から元気そうだね」
(いや勝手に入ってきたのはダメじゃん……)
てかなんで鍵開けられたの。
「……朝からなんの用?」
相変わらず敬語使えないリズが村長さんにきいてくれる。
「ちょっと急ぎ……っていうのも変な話なんだけど、用があるのよ。準備が出来たら最初に話した時と同じ広場まで来て欲しいわけさ。それじゃ、待ってるわ。」
言いたいことを言い終わると、村長さんは出ていってしまった。悪い人じゃないのわかるし、気のいいおば、お姉さんって感じもするけどね。
「ったく……朝からなんなのよ……」
口では悪態をつきつつ、リズはもう準備を始めてる。偉い。
「あんなふうに言われたら断れないしねぇ……わたしもできるだけ急いで準備するよ」
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「準備おっけー」
服も髪も持ち物もバッチリ。仮にこのまますぐモンスター討伐しろって言われても行けるよ!
「あたしも行けるわ。あんたぼんやりしてるくせにそういう所は結構ちゃんとしてるのね」
「まあ、急いで準備は慣れてるし……」
「そう……ま、なんでもいいわ。とっとと行くわよ。」
リズはわたしより先に家を出ていった。それに続いてわたしも出て、しっかりと鍵を閉める。ぼーっとしながら鍵閉めると後で忘れて不安になるよね?
(なんの用だろ……)
歩きながら考える。村長さんはそれなりに急いでる風に見えたから、なにかの依頼かな。狂獣だってまだまだ沢山いるような気がする (そう考えると昨日すぐ帰ったのは良くなかったかも)し、この辺かなり危険な気がする。
「あ、そうだ。昨日はマリアと話したあとすぐ帰ってきたの?」
「そうよ。後のことはマリアが説明しておいてくれるって言ってたから、あたしはギルド支部に寄らずに帰ったわ……ていうか、なんであたしがマリアと話してたこと知ってるの?」
「ああ、それは……あ、あそこ。村長さんいる。」
話そうとしたけど、もう広場に着いちゃった。そこには村長さん……と?
「……もう1人誰かいるわね」