タイトルのネタが切れてきた
リズが立ち去って、残されたわたしとマリア、それからセレナさん。3人で暫し何も言わずに見つめ合う。そして、最初にその沈黙を破るのは……やっぱりわたしだと思うんだよね〜。
「……リズの目的ってなんなんだろ……禁忌の魔法をさらに強くして、その先になにを……」
「人が過ぎたる力を欲する時は大抵支配や破壊にその力を使う時です。そんなこと思いたくありませんが、私達が何も知らないだけでリズさんにはそういう思想があるのかもしれません」
セレナさんは椅子に座って、わたし達とは目線を合わさずに言う。それに対して、マリアが反応する。
「そ、そんな……たしかにわたくしはリズさんのことを全て知っているわけではございませんわ……それでも、それでも……そんなことは……」
(…ん)
一瞬、何かを感じた。上手く言葉では言えないけど、それが何なのかは多分わかる。
「ねえマリア……ちょっとお願いがあるんだけどいいかな」
「もちろんですわ。ユイ様のお願いごととなればわたくしの命を捧ぐことすら躊躇いませんわ!」
さっきまでの落ち込み気味な雰囲気はどこに行ったのか、マリアは目をハートにさせるかのような勢いでわたしに迫ってくる。
「い、いやそこまでじゃないし……リズのこと探して欲しいの。で、もし見つけたら……別に連れてこなくていいから、見守っててあげて。もし何か変な様子があったら、その時は声掛けてあげればいいからさ」
「……? わかりましたわ……それでは行ってまいりますわ」
若干、わたしのお願いを疑問に思いつつもマリアは素直に外に出ていった。ちょっと申し訳ない。
「ユイさん?」
「なんか……直感的なんですけど、今急に感じて……誰か……セレナさん以外にもこの場に人じゃない誰かがいるような気がして、マリアにはそれを気が付かれたくなくて……」
「はい? どういう意味ですか? 今この場には私とユイさんしかいませんけど」
『何言ってるんだこいつ』みたいな目でわたしを見てくるセレナさん。……改めて顔を見られるとなんか少し緊張する。セレナさん、なんかすごいかわいいし (もちろんわたしの次にね)。
「ええっと……多分誰かいる……」
机に置いてあった食事のメニューみたいなボードを手に取る。そして試しに、適当にそれを投げてみると
「あ痛……」
何も無い空間にボードが当たり、声が聞こえた。
「そんな幻影わたしには効かない……正体を表わせ!」
指をさして高らかに宣言すると、その空間から人が現れた。あ、人じゃなくて神。
「どうして僕がここにいるってわかったんだい?」
頭をおさえながら現れたのはアイテール。さっき帰ったはずなのになんで。
「勘」
「まあいいけど……僕だって本当は暫くはこうやって現れるつもりなんてなかったさ。でも、禁忌の魔法を使える子がいるってなると無視もできない。2人とも知ってるとおり、あれは世界を壊せるほどの魔法さ。あの子にそこまでの意思は感じられないけど、危険なことに変わりはない。」
アイテールはわたしの投げたメニューを拾って、丁寧にそれを机に起きながら続ける。
「例えば、普通の人は上位存在……神とかに攻撃してダメージを与えることはできない。ユイはちょっと特別だから今みたいに僕に攻撃できたけど、普通の人だったら投げたものは貫通して僕にはノーダメージだった。」
「何の話?」
「禁忌の魔法はそういうことも無視してありとあらゆる物に攻撃出来る。神も天使も悪魔も関係ない。もし、仮に……あのリズって子にそういう意思があったらそういうことが可能って話しさ。それに、あの子は神の存在も一応は認識しているしね。」
(……ああ、スティアか)
そこも伏線になるんだ
「あの、ちょっといいですか?」
突然、セレナさんがアイテールの腕を掴んだ。
「おや? どうしたんだい?」
「いちいち出てきて意味深な事とか煙に巻くようなこと言って場をかき乱すのやめてください。アイテール様を悪く言いたくは無いですけど普通に迷惑なんです。今起きてることは人間たち……もちろん、今の私も含みますよ……の問題なので、女神が介入することじゃないと思いますけど。アイテール様は他にやることがいくらでもあるはずなのでそちらをどうぞ」
(まあたしかに)
珍しく怒ってるような顔をみせたセレナさん。でも喋りかたは優しい。
「……それもそうだね。それにもし女神が関わるならそれは僕じゃなくてこっちの世界の女神だろうしね」
それだけ言うと、アイテールはまた消えた。なんだったんだ。
「えっと……ありがとうございました?」
よくわからないけど、一応セレナさんにお礼を言ってみる。
「さて、アイテール様もいなくなったのでユイさんもマリアを追いかけたらどうですか? このまま放置するのはさすがに可哀想ですし」
「それもそうですね。んじゃ今からいってきま〜す」