久遠の退屈
今回かなり短いんですけど、次が長くなってしまうかも知れません。
(まずは……バジリスクを倒す……)
思ってたよりよっぽどデカい蛇。そいつはわたしの存在に気がつくと、ものすごい速さでわたしに向かって……来なかった。
「おっそ!! 舐めてんの!?」
バジリスクは太い体を揺すりながらゆっくりゆっくりとわたしに近づいてきた。顔はめっちゃブチギレてるし、王冠みたいな形の頭も威圧感あるし、舌を出して威嚇もしてるけど、如何せん遅い。そんなに離れてないのにいつまで経ってもこっちに来ない。
「バジリスクってこんなもんなの?」
「いいや、そんなわけはないよ。本来のバジリスクは俊敏で狙った相手はすぐに殺せる。ただ……普通はこんなに太くない。……つまり、アレは単なるデブってわけさ。」
「あ、そうですか……」
(じゃあ余裕……)
のっそのっそ這いずってるバジリスクの横に回り、剣を振り下ろす。ソフィアさんの作ってくれた剣はそれはそれは素晴らしい斬れ味で、バジリスクの体は一瞬でふたつにわかれ、頭部は地面に落ちた。そして、辺りに血の匂いが広まる。
「はい、たおした」
刀身に着いた血を拭いて、鞘に収める。
「これなら君じゃなくてもすぐに倒せたかもね。まあいいさ、こっちに来て。僕のことを話してあげよう。」
―――――――――――
「で、誰なの?」
バジリスクの首を切り落として、当たりが血に染った場所で話をする。
「君のことを完全に知っている存在……それだけでもうわかると思うけどね。」
「……あ〜はいはい、どうせまた神だとかなんだとか言うんでしょ? もういいよそういうの……スティア達3人の女神でわりとバランス良かったし。ナナミ、カレン、スティア……。」
わたしが露骨に嫌悪感を示すと、女の子は首を傾げる。
「ナナミ? 誰だいそれ?」
「あ、そっか……」
(名前はその場で適当に決めたから……)
「ほら、全能神を名乗ってる女神のこと。名前は適当に決めた……ていうかわたしの名前からとった。」
すると、女の子はすぐに納得する。
「ナナミ……ああ、なるほど。……ははっ、あいつは全能神を名乗ったか……でも君はそれをおかしいと思ったよね?」
「……ああ、そういうこと。我こそは真なる全能神だってこと? ……インフレしすぎてキリなくなりそう、上には上がいてまた上がいて上が居そう。」
「そんな嫌な顔しないで欲しい。あ、そうだ……手から無限に竹輪出る力あげるぞ。」
「あ、懐かしいそれ……てかそれ知ってるのはたしかに神だ。あの謎空間でしかそれ言ってないしわたし……あっ、なら本当にわたしを転生させた本人ってこと?」
「だからそう言ってるじゃないか。僕はね、元々は……そうそう、僕が唯一無二の全能神だった。でもさ、神様って暇なんだよ。色んな世界を作って、世界ごとに神を用意して、あとは観察するだけ……それを一人で永久に続ける。君に想像できる?」
「無理」
女の子は『わかってた』と言った顔になり続ける。
「永久に続く退屈の中、僕はあることを思いだした。どこかの世界の人間が言っていたパラドックスさ。」
「パラドックス?」