知識がないので
「朝じゃん……」
めちゃくちゃぐっすり寝てた。ベッドから起き上がり、カーテンを開ける。いい天気。窓の外は人通りりの少ない路地。悪くない。
「お風呂入ろ!」
昨日はすぐ寝ちゃったから、まずはお風呂!昨日は汗もかいたし、このままだとヤバい!
「おぉ………木のお風呂……いいね……」
お風呂もそこそこ広いし、綺麗。これ本当にわたしが住んでいいの?平気?後で実は高いです、とかないよね?
「まあいいや………」
そういえば、全然気にしてなかったけど、この世界って普通に電気と水道あるのめちゃくちゃおもしろい。なにこれ。ファンタジー風な世界だし、建物とかの感じも現代とはかけはなれている建築方や材質で出来てるのに、電気と水道は整備されてるんだ。普通にお風呂の水道捻ったらお湯出てきた。わーい。
「…………めちゃくちゃすぐ溜まるじゃんコレ。」
滝かよってくらいの勢いでドバドバお湯出てきて、一瞬で溜まる。すご。
「よし!もう入れるじゃん……!」
――――――――――――――――
さてさて。お風呂に入ってサッパリしたら、かわいい服を可愛く着てその後はすぐ外に出たよ。残念でした。(なにが?)
(ギルドに行かないとか………)
全く気が進まない。依頼を受けてお金を稼がないとだから、行かないといけないのはわかっている。でも、言ったら昨日の人がいる。はっきり言えばもう会いたくない。既にかなり好かれてたし、怖い。やだ。
(………………お)
足取り重くギルドに向かっていると、昨日は気が付かなかった建物がめについた。それは『図書館』。それもかなり大きい。
(…………そうだ!)
図書館なら無料で本が読めるし、この世界の歴史とか文化について書かれているものもあるはず。ギルドに行くのはもう少しあとにして、まずは図書館に行こう。あの女の人も、わたしが来るのが遅ければ諦めてくれるはず。そうであって欲しい………おねがい。
ということで早速図書館の中へ。木製の大きい扉を開けて中に入ると、急に空気が変わった気がする。
(外はうるさいのに………)
大通りに面した場所にあるのに、図書館のなかはすごい静か。防音に優れた材質で出来てる?
少し奥に行くと、本の香りが漂ってきて、心地いい。わたしは元々読書とか好きだったし、こういう所は落ち着く。しかも、吹き抜けで3階まであって、壁一面が本棚で本でびっしり。ワクワクするね。
(人は少ない…………)
朝早いからか、それとも本を読む人が少ないからなのか、ほとんど人がいない。まあその方が助かるけど。
(……『地理と歴史』………ここかな。)
本棚の上にはそう書いてある。まさに今のわたしが探しているものだ。
その本棚を眺めると、似たようなタイトルの本が沢山ある。その中から、『世界史』について書かれているほんと、『魔法の歴史』の本、あとは『地理と気候』の本にした。わかりやすいといいけど………。
近くに椅子とテーブルがあったから、底そこに座ってまずは『世界史』の本を読む。
(文明が起こってからの人の歴史を『アルカディア歴』と呼んで、今はアルカディア歴1042年………ってことはこの世界の人間はわたしのいた世界よりも短い年月でここまで発展したんだ………。)
所謂電子機械のようなものはこの世界にないけど、それはきっと必要が無いから発明されてないんだと思う。魔法があったり、モンスターがいたり、世界の常識が違えば必要とされるものも違うだろうからね。まあ、いずれ発明されるかもしれないけど。
(アルカディア歴より以前の人の営みは正式な記録が残っていないため不明………わたしの世界で言う紀元前の記録が全くないってこと……?そんなことあるのかな………ん?『この不可解な記録の断裂については研究が進められており、稀に、1000年はゆうに越えていると思われる謎の人工物が発見されている』、『暫定的に、それらを作ったと思われる時代を古代文明と呼ぶ』…………これって……)
所謂オーパーツってやつかな?もしかすると、太古の昔には今より遥かに発展した文明があったりして………
(約1000年の間、人々は1度だけ、世界を巻き込んだ大規模な戦争をした………アルカディア歴480年頃………。その発端は些細な領土の争い…………飽きた。)
難しい。知らん。次は地理。
(世界の構造は……)
「お、難しそうな本読んでるね」
「だれ?」
いきなり、知らない子に覗きこまれた。
「あたし?あたしはルイだよ。」
ルイ。そうなのった子はニコニコと笑いながらわたしを見ている。歳は少ししたかな。綺麗な緑の瞳で、水色の髪をポニーテールにしている。それでいてなんかわたしのいた世界の学生服みたいなの着てる。チェックのミニスカートに、ブレザー見たいの着てネクタイもある。下には白いシャツを着てるし靴下も黒で膝くらいまである。この世界だと浮いてる気がする。でもかわいい。
「わたしに何か用?」
「んー……そういう訳じゃないけど、こんな朝早くに、見かけない人が難しい本読んでたから気になって。」
ルイはわたしの読んでいた本を指さしている。
「見かけない人って………ルイはよく図書館にくるの?」
「来るよ。本はそんなに読まないんだけど、何となくこの場所が好き。………でも、ここで話すのは良くないか………まだその本読む気ある?」
「ぶっちゃけ、ない。」
「そっか!なら外行こ!ほらほら!」
ルイは嬉しそうにわたしの手を引く。
「ま、まって!本片付けたら!」
「それもそっか。」
(………それにしても、見かけによらず力強いな………びっくりした)
この子も冒険者だったりするのかな?
―――――――――――――――――――――
「ふーん、ユイは遠くから来たんだ。」
図書館の外。近くに公園みたいな場所があったから、そこのベンチに並んで座った。ルイは足をぶらぶらさせている。
「そうだよ。わたしめちゃくちゃ強いからさ。この地域でも余裕かなーっておもってたんだよねー。」
「強いんだ!実はね、あたしも冒険者だよ!ランクはブロンズ!」
「お、いいね。ちなみにわたしは昨日なったばっかりだからランクなしだよ!」
「そっか!でも強いならすぐあがれるよね。………どれくらい強いの?」
ルイは楽しそうにきいてくる。そうやって興味示してくれるとわたしも嬉しいぞ。
「光以外の全ての魔法が使えるんだよ………それと、武器はこれ。金属バット。」
背中に背負っていたバットを右手に持ち、ルイに見せてあげる。
「変な武器…………ていうか、光以外全部使えるの!?すごっ!!天才!?」
目をキラキラさせて、身を乗り出してルイはきいてくる。最高の反応だよ………
「天才………さあね。わたしにとってはこれが普通だからわかんない。」
「あたしは全部のエレメントは使えないよー。使えるのは炎と雷かなー。」
「やっぱりふたつなんだ………」
そのあとも、ルイと他愛も無い会話をした。なんか流れで借金あることとか全部バレたけど、特に何も言わずに、楽しそうに話を続けてくれた。なんていい子………!
「そうだ……ルイはギルドにいる、めちゃくちゃ沢山食べる人のこと知ってる?あの黒いドレスの………」
「ん、知ってる。カレンだよね。あの人有名だよ。馬鹿みたいに食べるくせに全然太らないし、おなかいっぱいで苦しそうにもしてないって。しかも冒険者としてもまあまあ強い上にすごい綺麗な人だから、色んな意味で注目されてる。」
「やっぱり有名なんだ………」
(そんな人に目をつけられたのは、幸運なのか不運なのか………)
「なんか噂だけど、あの人………ううん、やっぱりいいや。」
何かを言おうとしてやめるルイ。一瞬だけど、その瞳は怯えるようにも見えた。
「………あとは……ねえこんなこときくのも変なんだけどさ………ルイはわたしのことどう思う?」
「え?………遠くから来た強いひとで、すごいなーって感じ。あとは……結構かわいいよね!髪型とかも似合ってるよ!」
「…………」
(あれ………そこまで思ってるのに、わたしに惚れてないのかな………)
別にそんなことはどうでもいいはずなのに、なぜか気になってしまいきかなくてもいいことをきいてしまう。
「わたしさー………なぜか同性からすごい好かれるんだよね……ちょっと親切にしたり、少し一緒にいただけなのに。でもルイはわたしにそういう感情はない?」
我ながら恥ずかしい質問だ。
「へぇ……ユイはレズビアン?」
「ちがうけど………」
「そっか。でもあたしには関係ないよー。あたし男だし。」
「あ、そうなんだ。確かに男の子なら関係な