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リズ

「何が良かったの?」


 予想外のことを言われて、そのまま聞き返すことしか出来なかった。


「前も言ったでしょ、あたしは貴族……シュバルツハインっていう家系の貴族って。そのせいで強くないとダメ、冒険者として名をあげないとダメだって昔から押し付けられてた。身分が高いわけでも何かいいことがある訳でもないのに、貴族ってだけでむしろ不利なことばっかり。だからこそ自由なあんたやマリアが羨ましいって。」


「ああ、言ってたね……」


(前にリズがモンスターと戦ってるのを見た時だったかな……)


 あの時、結構無茶な戦いしてた。


「だから」


 リズは窓の外を少し見ながら続けて言う。


「意味のわからない女神のせいで成り行きでここに来ちゃったわけだけど、こんなライズヴェルの端の端、辺境にいればあたしの家族とか親戚、あたしを知ってる人もいないから何か言われることも無いわ。言う意味もないから特に言ってなかったけど、ライズヴェルとかだと多いのよ、あたしになんか言ってくるうるさい奴らが。押し付けてくるの、ほんとに迷惑よね。だから暫くはここで依頼受けたりするわ、その方がよっぽど気楽。」


「そうだったんだ……」


「こんな田舎でも一応ギルドの管轄になってるんだから、ランクのための実績にはなるわけだし。」


(考えてみれば……リズのこと、全然知らないなぁ……)


 いや、リズだけじゃない。みんなのこと何となくでわかった気でいたけど、全然わかってない。イブは結構色々話したし、自分の国の事とか勇者のこと教えてくれたからわかってるって言ってもいいかもしれないけど、ほかの人たちは………。その人にどんな背景があるとか、普段何してるとか、何を目指してるとか、何も知らない。わかんない。前はそれでもいいやって思ってたけど、違う。


(元の世界にいた時の……アリサみたいな友達が欲しいなら、そういう所だよね)


 グイグイきいたらドン引きされるだろうけど、だからといって興味を示さないのはもっとダメ。こっちがそんな態度じゃあ相手もわたしに対して心を開くはずもない。……はずもないんだけど、間違った能力のせいで開いてくれる人が結構いる。だからこそ、その力がきいてないと思われるリズとかにはわたしから示していなないとね。


「ユイ、あんたって結局どっから何しに来たのよ? あんた全然自分のこと話さないじゃない。」


 ちょっと呆れたような、でも興味はあるような感じできいてくる。でもそれは、それだけは本当に答えられない。言ったところで信じるわけが無いし、リズは絶対『頭おかしいのかこいつ』みたいに見てくる……と思う。


「うー……それは……」


「……と思ったけど、あたしだけ一方的に訊くのは卑怯ね。あたしもあんたに言えてないこと……あるし。ここはもうお互いに詮索なしってことの方がいいわね。」


(……怪盗か)


 エルザと一緒になんかやってるんだよねぇ……今のところこの世界の1番の謎と言っても過言じゃないよ。人を信用してなさそうなエルザがリズと一緒に怪盗とか、理解できません。


「あたし、お風呂入ってくるわ。こんな端っこド田舎でもライズヴェルと同じような生活環境の設備は揃ってるの、不思議よね。どういう力の入れ方よ……。」


 そう言って、リズはお風呂場と繋がってるドアを開けて入っていった。


(それはわたしも思った……けど、少なくとも日本は電車もバスもとおってない、人口の少ない田舎でも電気やら水道はほぼ通ってたし、そういうものなのかな……)


 そもそも、この世界のインフラの概念がよく分からないけどね。水道管とかあるのかな、そもそも明かりってどういう仕組み……。


(明日から何するのかな〜……)


 実はやっぱり借金返済のためのえぐい労働でした〜とかだったらどうしよ。まあその時は最悪、暴れればいいか……


「元はと言えばユイちゃんがちゃんと返さないのが悪いんだから、それはダメよ〜」


「なんでしれっといるの、あと思考読まないで」


 いつの間にかいつものように、部屋にスティアが居た。


「ユイちゃんにどうしても言いたいことがあって〜」


 躊躇いなくリズが使うベッドに座りながら言う。女神……。


「その前にさ……時間かけてこんな遠くまで来たのにそうやってあっさり転移してこられると拍子抜けというか……こう、特別感とか緊張感がないというか……伝わるかなこの感じ……」


「ん〜」


 伝わったのかどうか知らないけど、スティアはまたいつもみたいに子供っぽい感じで首を傾げですっとぼける。ホントにむかつく。


「だから……」


「へいき〜、実はわたしもそんなに簡単にワープとか出来ないのよ〜。ここから帰ったらもう暫くは無理。だから、今どうしても伝えたいことがあるの。」


(なにが平気なんだか……)



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