乙女の秘密
短いです
(……どうやって話そうか考えてるのかな)
しばらく黙り込むセレナさん。少し視線を落として、なにか思考を巡らせているように見える。『なにか』があるのは間違いないけど、それが何なのかはまだわたしにはわからない。
「……答えを教えることは今はまだ出来ません。でも……たどり着くために必要な情報だけはもう十分にあるはずです。」
「はい?」
やっと出てきた解答がそんなあやふやなものじゃわたしも納得できない。
「人にはあるものですよ……言いたくないことの一つや二つ。きっと、ユイさんにもあるはずです。……本当はどんな所から来たのかとか、私だって少しは疑問に思ったりもしますけど、別にそれを追求したりもしません。ライズヴェルで暮らす冒険者としてのユイさんで私にとっては十分ですから。」
「うっ……」
トゲのないように喋ってるけど、不信感は少し伝わってくる。やっぱり、無理があったかな色々と……。
(要するに、『ギルドの受付のセレナさん』としての認識だけで十分ってことかな……)
「でも、ユイさんはきっと有り余る好奇心があると思うので……いいですか? 今から言うことをよく聞いてください。1度しか言いませんので。」
「は、はい!」
セレナさんは顔を上げて、息を吐きながらゆっくりという。
「『私とソフィアはそれなりに有名なダイヤモンドランクの冒険者だったけど、怪我や病気もないのに今は引退している』、『でも周りの人はそれについて一切触れない』……これはユイさんも知ってることです。それに加えて『ソフィアの友達のエルザさんはソフィアのことだけを友達と思ってる』、『エルザさんは何かしらの理由で仲間や友達に対してネガティブな感情がある』んです。ついでに、そのエルザさんは今は冒険者としてかなり頑張ってますけど、ダイヤモンドランクはまだ遠いですよね」
「……」
「で、あとはさっき言ったことです。『私は他の人とお風呂に入ったりはできない』……こんなところですかね?」
(うーん……?)
そこに対する因果関係がよくわからない……けど、これ以上はきいても答える気はないってことだろうし……今は納得したふりしとこうか。
「わかりました……じゃあ、わたしは部屋に戻ります……明日の朝も寝坊しないように気を受けますね。」
「明日の朝は1階でご飯食べるので、起きたら降りてきてくださいね」
――――――――――――――――――
「さて……と」
部屋に戻り、ベッドに横に寝る。お昼寝しちゃったけどもう眠い。でも、まだ寝る訳には行かない。
(少し……)
さっきセレナさんが言ってたこと。どうやらエルザも何か関係してるみたい……
(一つ……思い当たる考察もできるけど……)
まず……元々、ソフィアさんセレナさんエルザの3人で冒険者をやってて、だけどエルザは教会のお手伝いとかもあって依頼に行けないことも多くて、だから2人だけ先にランクが上がってたとして。
なにか強いモンスターを倒す依頼を受けた時があって……その時も2人だけで言ってて、それで……その時にセレナさんの身になにか起こって……
(いや……違うな……仮にそうだとして、セレナさんの体にえげつない火傷の跡とかがあるから人前で脱ぎたくない……だとしても、ソフィアさんとエルザの関係性の方が謎だし……エルザがセレナさんに対しては大きい信頼がなさそうなのも謎……)
あくまでも、エルザはソフィアさんだけが……みたいな感じだし。あと、誰もこの件に関して何も言わないのもわかんない。
(こういう時、最も合理的な答えは……?)
依頼の途中になにかが起きて、セレナさんの体に何かしらの悪影響は残ってるのはほぼ間違いない。人前で脱がないのはそれしかないはず。で、エルザはセレナさんになにか裏切られた? ソフィアさんは両方の中立になって、何かしらの方法でそれを解決したけど、それを知る人はいない、またはいるけどなにかの理由で口に出せない……?????
『怪我や病気も無く』って言うけど、それは表立って見えないだけってかのせいも無くはない し……それか、もっとやばい…それこそ、呪いとかあって……それで……
(でもでも……わたしが初めてギルドに行った時……エルザとセレナさんは普通に会話してた……仕事だからっていえばそれまでかもしれないけど、カレンに対してみたいな険悪な感じとかは全くなかったし………)
「だーめだ……」
わたしの頭じゃいくら考えてもなんにもわからない。推理小説とか読むのはまあまあ好きだったけど、自分で考えながらは読めなかったし。探偵の推理をみて感心する観衆の立ち位置。
「寝る……」
カーテンの隙間から外を除くと、月は見えない曇りの夜。明日は晴れてるといいな〜