旅の途中
少し読みにくい文章かもしれません、申し訳ございません。
セレナさんの後に続いて町の中を歩く。『街』より『町』って感じ。前にマリアと買い物に行った所は街だったかな。もう夕方で、人も多くない。時折すれ違う人はわたしとセレナさんを少し物珍しそうに2度見する人もいる。珍しいのかな?
「明日以降、ここから先に行けば行くほどどんどん田舎になるので、都会がわからわざわざ訪れる人は滅多に居ないらしいですよ。この町もギルドを撤去されてしまったので今後は人が減ってしまうと思います。……村や町を残したいのか減らしたいのか……国の方針、よくわかりませんよね?」
「やっぱりそう思ってるんですね……」
(アリスも最初にあった時いってたなぁ……政治って大変なんだね)
というか、都会から田舎に行く人ほとんどいないのか……遊びに行ったりしないのかなぁ。
「着きました、ここですここ。」
「お〜」
町の奥の方にあったのはそこそこ大きい建物。看板とか見る感じ、まあ普通にホテル的な感じ。装飾とかもしてあって割とオシャレ。
(こんな立派なホテルあるのに遊びに来たりする人いないの……?)
どうやって経営成り立ってるんだろ……?
「ここ、火山が近いわけでもないのに何故か熱い温泉湧いてるんですよね〜。周りも自然に囲まれてて静かですし、観光地っぽいのに別にそんなにことないんですよ、どうしてだと思いますか?」
わたしの気持ちを読み取ったかのような質問をしてくるセレナさん。ホテルの方を見ながら、特に表情は変えていない。
「理由……あっそうか……やっぱり移動の手間ですか?」
(あの馬車が特殊なの忘れてた……)
「正解です、お金も時間もちょっとかかりすぎちゃうんですよ。せっかくですし、明日の移動中とか時間のある時にライズヴェル領における経済的余裕のある人の割合とか、冒険者以外の人がどんな仕事をしてるとか、給料の平均とか教えてあげましょうか? 他所の国からきたユイさんは多分知らないと思うので。」
「遠慮しときま〜す……それより、中入りしょ、座ってただけとはいえ疲れたんで……」
「ですね」
(社会のお勉強……嫌い)
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「ふう〜……」
ホテルの手続きはセレナさんがやってくれた。多分、お金も払ってくれるんだと思う。ギルドの命令で来てるんだしさ。
で、ホテルの部屋は……まあ、普通。コテージみたいな、木の感じが結構ある洋風な2階の部屋。結構気分はいいかな。
「腰が……」
ベッドに横になり、体を思いっきり伸ばす。バッキバキになる。
(そうだ……温泉)
セレナさんが言うには、地下に温泉があるみたい。ほんと、よくこんな場所で湧くよね。でもまあ、せっかくあるなら入りたい。この世界にも温泉はあるなら嬉しいし。
「よしっ」
部屋を探すと、緩めな部屋着がちゃんと用意してあった。他のお客さんもいなかったしホテルの中歩く分にはこれでいいか……温泉あがったら着替えちゃお。
(セレナさんは……入らないって言ってたな)
別々の部屋に行く前、セレナさんは『私は温泉とか一緒に入れないので、先に謝っておきます』って言ってた。入らない、じゃなくて入れない……って。
(潔癖症かな)
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「あ〜……良い……」
地下の温泉って言ってたから何となく薄暗いのかなとか思ってたけど、全然そんなことは無い。全体的に明るい壁の色で、どういう原理か知らないけど赤と黄色のあかりが灯っている。お湯はちょっと温い……からこそゆっくり浸かれる。髪が長いからまとめるのはいつもめんどくさい。
(………足の傷……)
あの時……カレンとの戦いの中で偶然見つけた兆し。わたしがヤケクソで自傷したからこそ見つけた、わたしの血という予想外の弱点。その時のきっかけになった傷は……あとも無く消えている。お湯に浸かったふくらはぎやふとももをゆっくりと撫でても、やっぱり傷は無い。もちろん痛みもない。
(血が滴って止まらないほどの傷……下手したら一生消えなくたっておかしくない……やっぱり、わたしの体は……普通じゃない)
あの時はルナとかの力を借りてたとはいえ、後々傷が塞がるかどうかには関係ないと思うし。さすがに試せないけど、腕とか無くなってもまた生えてきたりしそうな……なんてね。
(不死身では無いんだよわたしも……油断と慢心だけはダメ)
何となく気になって、鏡とかに映して全身見てみる。どう考えてもあんなに高くジャンプできる程の足の筋肉はないし、無茶な動きに着いて来れそうな腹筋やら背筋もあるわけない。……さすが、ズルしてるだけのことはある。
(それにしても……ほんとにわたしかわいいな……)
と、まあそんなことはいいとして(わかりきってるからね)。
そろそろ上がろうかな……と思って脱衣場の方へ行き、体をふき終えて着替えていると誰か入ってきた。
「あっ! ユイさんいたんですか……」
「セレナさん? 」
脱衣場に入ってきたセレナさんをみると、どう見ても温泉にはいる用意をしている。
「でもちょうど上がったところで良かったです、私はこれから入るので」
「……1人で入らないといけない理由があるんですか?」
「……人と一緒にはいるの、なんだか恥ずかしいんですよね………なんて言っても、信じないですよね?」
半笑いで気まずそうなセレナさんをみると、隠し事をしてるけどそれを悟られまいとする気もないように見える。
「まあ、はい……何かありますよね?」
「………」