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始まりの予感かも

(………ああ)


 気がついたらそこは……慣れしたしんだ……かは知らないけど、あの世界のわたしの家のベッドの上だった。髪の毛は……ピンク。念の為近くに置いてある手鏡で確認すると、超絶美少女なわたしの顔面。やば……めっちゃかわいい。


(じゃなくて……)


 ほんとに、あっさりと帰ってきちゃった。もう帰ってこないなんて決意してから1日くらい。でも不思議、何故かちょっと懐かしさすらある。これでいいんだ、わたしがまたこっちで目覚めたなら、アリサは生き返って……いや、死んでないことになったんだ。もう二度と、絶対に会えないけど……未練はもう終わり。初心に帰って、『死んだのにまだ続いてること』に感謝してこの世界でしっかり生きていかないと!それに、目標も決まったんだから。……前に少し思った、『みんなを守れる強いお姫様』は一旦お休み。今は……『ムカつく女神をこの手で殺す』っていう超個人的な目標でいいんだよ!!


 ベッドから起き上がり、全身を確認。服装は……部屋で着るような服じゃなくて、普段外で来てるオサレないつもの服。部屋の隅には金属バットがたてかけてある。……?


(なんで?)


 もうわたしはここには戻ってこないはずだから、ギルドが管理してるこの部屋は整理されて、次使う人の為に掃除とかされててもおかしくないし、わたしの私物は捨てられたりしてても違和感はない。むしろ、今のこの状況の方が謎。これ、まるで……


「やっぱり帰ってきやがったな、人知れず世界を救った英雄サマよ。」


「…イブ!」


 待っていたかのように、ドアを開いて入ってきたのは見慣れた顔。イブは少し嬉しそうに笑って言う。


「にしても帰ってきて最初にやることが誰かに会いに行くでも飯食うでも何でもなく家で寝るとか、ほんとにお前らしいな……。だいたい、どんな理由で帰ってきたかは知らねーけど……()()()経ったのにまだここが自分の家だと思ってるのは流石だぜ。……みんなどうせ戻ってくるって思ってたからこのままにしてたけどな。」


「……あはは、なんか恥ずかしいね……1ヶ月?」


 気のせいかな?


「あ? 1ヶ月だろ? あの日、カレンをぶっ殺してお前がナナミと消えてから1ヶ月……お前に言われたとおり、色んなヤツらにユイは帰ってこないって伝えても、どいつもこいつも口を揃えて『ユイならなにかしらのトラブル起こして故郷にたどり着けなくて帰ってくる』って言いやがったぜ。まあ、あの場にいたボク達も同じこと思ったけどな。」


「………」


(わたしの中では1日だけど、こっちだと1ヶ月経過したのか………)


 世界跨いで移動してるしそのくらいのことは有り得るのかもしれないし、イブが嘘ついてるわけでもないだろうし……何でかわかんないけど、嬉しそうでありつつも少しバカにしてるようなイブの顔を見てると安心する。


「で、結局何があったんだよ? あんな決意固めて別れ告げたのにすぐ帰ってきやがって………」


「……細かくは言えないけど……一言で言うなら…ナナミは何も信用出来ないってこと。たしかにあのクソ女神サマはわたしの願いを叶えてくれたけど、それはホントに最悪…1番ありえない形で叶えた。だから……わたしは故郷に帰ることを諦めて、ライズヴェルに戻ってきたの。」


「クソ女神……たしかにあいつ性格悪いとは思ったけど、お前がそんな表現するなんてよっぽどだろ?」


 イブはわたしのベッドに座り、腕を組んでる。


「ほんとにありえない……人を殺すことも躊躇わないし、理屈も感情も上手く通じない。他人の不幸を嘲笑ってそのために人間を利用する。……ねえイブ。ゴッドランクになって霊峰に行けてもさ……あんなやつの力借りちゃダメだよ。イブの祖国を助けるなら、イブ自身の力でやらないと。ナナミに任せたら……もっと酷くなる。」


「……だろうな。元々あいつが真っ当な女神だなんて思ってねーよ。だからボクは自分の力を証明するためにゴッドランクになったら、その力で国を救う方法を探してやる。あんなクソ女神、もう二度と見たくもねーよ。……あの気持ち悪い舞台で十分に理解した。」


「……うん」


(それならいいけど………)


 話が一旦止まると、イブは座ったまま何かを取りだし、わたしに手渡してきた。


「ほい」


「なに」


「紙。それ持ってギルド行けってさ。あいつ……いつもいる受付の女に頼まれてたんだよ。ユイがもし戻ってきたら渡すようにって。じゃボクは渡したからな、とっとと行ってこいよ。」


「あ、うん……」


 渡されたのは封筒みたいなものに入った紙。表側には『超重要』って書いてある。なんだろね?


「じゃあ行くけど……イブはどうするの?」


「ここで待っててやるよ。」


 イブは寝っ転がってすっかりくつろいでる。


(他人の家なのにさ………)


 ――――――――――


 家を出て、ギルドに向かって歩く。1ヶ月じゃあ街並みもなにも変わらない。色んな人が歩いてる。そんなに長い時間いた訳じゃないのに、やっぱりなんかもうこっちの方がしっくりきつつあるような気がしなくもない……慣れってやつ?


「こんにちは〜」


 ギルドの建物の中に入り、受付に行って声をかけると直ぐにセレナさんが出てきた。客は割と少なめ。


「はいどうも、お久しぶりですねユイさん。」


「………あれ? なんか怒ってませんか?」


 直感ですぐに気がついた。顔はニコニコ笑顔だし、態度も何も変わらない。でも、纏う雰囲気が違う。え、なんかちょっと怖い。


「あ、気が付きました? こういう仕事ですし、できるだけ雰囲気とかにも出さないようにはしてるんですけどね、仕方ないです。……イブさんから受け取った封筒、開けていいですよ。」


「あ、はい……」


 封を破り、中の紙を取り出す。一旦それをカウンターにおいてじっくりと読む。


「ふ〜ん……『返済の意志を感じられないため返済期限を本封書を開封した日までに短縮する。返済が不可な場合は特例処置となるためギルドへ出頭のこと。』…………ふ〜ん」


「……………」


「…………お金の件無視して故郷に帰ろうとした上に、それに失敗して1ヶ月してしれっと帰ってきたのって客観的にみてヤバいですかね?」


「犯罪に片足どころか両足の膝くらいまで突っ込んでますよ。踏み倒しは悪質すぎますし、部屋の契約も放置したままでしたし、その他もろもろ……冒険者云々ではなく、人としての常識足りてませんよね。」


「うぅ……」


 笑顔のまま、言うことはしっかりというセレナさん。まあ、そういう仕事だし……………………………。


「で、どうです?少なくともあと20万ルピアは必要ですけど今すぐ用意できますか?」


「むりで〜す!」


 するとセレナさんはより一層の笑顔で言う。


「だと思いましたので、もう諸々用意してあります。お話があるので裏に来てもらっていいですか?」

一応次から章分けます

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