その9 校庭で探し物
サッカーの試合で放課後中走り回っていたリエコだったけど、スタミナはまだまだ十二分に残っていた。
一度も休むことなく15分ほど走り続け、通っているあけぼの第一小学校へと到着をする。
もう完全下校時刻を過ぎている。校門は閉まっていた。
だけど、わざわざ校門から入る必要なんてなかった。ぐるっと迂回するように歩き、校庭側へと回る。リエコの肩ぐらいのフェンスを見つけ、それを軽々と乗り越えた。
職員室にだけ明かりがついているのが見えている。まだいく人かの先生は残っているのだろう。
――小さなおサムライさんの落し物を探に来ましたなんて言ったって、信じてもらえないもんね。もし、本物をポケットから出して見せたりなんてしたら……。
大騒ぎになることはリエコにだって簡単に想像がついた。
リエコは残っている先生たちには知られないよう、こっそりと探そうと心に決めた。
幸い、おサムライを見つけた茂みは校舎からは少し離れた場所にある。よほどうるさくしなければ、先生たちに見つかることはないだろう。
リエコは、例の茂みへと向かいその前に立った。ポケットに手を突っ込み、おサムライを引っ張り出す。
「あんたの探してる棒みたいな何か、きっとこの茂みの中にあるはずよ。一緒に探そ」
「了解でござる、リエコ殿」
リエコの手からピョンと飛び降りると、おサムライは茂みの中へと入っていった。リエコもまた、しゃがみこみ茂みに頭を突っ込ませる。
「棒みたいな何か、棒みたいな何か、棒みたいな何か」
ぶつぶつと呟きながら、一生懸命に探した。だけどなかなか見つからない。
ただでさえあたりは暗いのに、茂みの中はほぼほぼ真っ暗。手探りで探しているようなものなのだ。
こんなことなら家に置いてある非常用の懐中電灯を持ってくれば良かったとリエコは後悔をした。
――職員室に行けば懐中電灯を借りられるかな? 大事なペンダントを落としたとか言って。でも、ペンダントなんて学校に持ってきちゃいけないんだよね。きっと怒られちゃうよね。
それに、先生が一緒に探してくれる可能性だってあった。小さなおサムライという驚きの爆弾と一緒にいるのだ。できればそれは控えたい。
「ひょっとしてこれとか?」
適当に手に当たった30センチほどの棒きれを掴み、おサムライに見せるも、
「それはただの棒でござる。拙者が探しているのは、棒みたいな何かでござるよ。そもそも拙者には大きすぎるでござる」
「確かにそうね。あんたが持ってたぐらいだもんね」
リエコは棒きれを捨て、再び探し始めた。今度は、割り橋ぐらいの太さの棒を見つける。長さも10センチほどだ。
「これでしょ?」
一度は受け取るおサムライだったけど、
「違うでござる。これでは太すぎるし、根本的にこんなものではない気がするでござる」
「ああっ、もう分かんないよ!」
なかなか見つけられない苛立ちで、リエコは声を張り上げた直後だった。
グルルルルルルルルルルルル!
どこからか、低いうなり声が聞こえてきた。