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第64話 悪鬼の如く(2)

 元シスターは床の上に仰向けになって倒れ、そのまま永遠に動かなくなった。死に顔は意外にも安らかなものだった。おそらくは、神父による恐ろしい呪縛から解放されたことも理由の一つなのだろう。


「おのれ、なんということだ。最期の最期まで役に立たん奴め。ええい、こうなったら、私一人でお前達を始末して――!?」


 唐突に神父の言葉が途切れ、みるみるうちに変色した肌は元の色に戻っていき、膨張した筋肉も空気が抜けていく風船のように萎んでいった。そんな神父にローザは全ての感情を押し殺した表情でゆっくりと、凍えそうな寒さの教会の中にこつこつと足音を響かせながら近付いた。


「お前の『加護』の力、どうやらお前が考えていたよりも効果時間が短いようね。――大人しく降参し、そして、法の裁きを受けなさい。お前は人としても、魔法使いとしても決して許されないことをしたのだから」


 ローザは冷淡にそう宣告すると、元の貧相な肉体に戻って狼狽えていた神父は、両目に狂喜の光を宿らせ、両手で自分の顔をすっぽりと覆った。すると胸焼けしそうなほどの甘ったるい匂いが漂い、何かの液体を啜る音が聞こえてきた。


 その時、ボクは自分達が痛恨のミスを犯してしまったことに気が付いたが、もう遅かった。神父の肌が再び変色し、筋肉が膨張していくにつれ、彼の表情に余裕が戻っていく。


「くっくっくっ。どうやら理解したようだな。そう、この『加護』の力さえあれば、お前達から怒りや憎しみといった負の感情を向けられる度に、私は無限に力の源を手に入れられるのだ!」


 こんな風にな。神父はそう言ってにやにやしながら、あの悍ましい黄金の液体がべっとりとついた両手をボク達に見せつけた。


 いくら戦いでダメージを与えようとも、黄金の液体がある限り、神父に勝つことは不可能。その事実はボク達に焦りをもたらし、冷静さを奪っていく。


 対して神父はこちらの反応を悪魔のような笑みを浮かべて楽しみつつ、黄金の液体を経口摂取することでさらなる力を得ていく。


 時間が過ぎれば過ぎるほど不利になっていくのに、有効な攻略方法が思いつかない。ボクが全身の震えと舌の渇きを感じるようになってきた頃、――『あいつ』もボクの頭の中から悪魔のような声色で、さぞかし愉快そうにボクに話しかけてきた。


――やあ、『ボク』。こういう時こそまさに、あの力を使うべきじゃないかな。キミならもう分かっている筈だよ。目の前の敵を殺すには、あの力が必要だって。


次回は5月14日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


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