第52話 スノウリング村(4)
宿泊している温泉宿に戻ったボク達は、ウッドゴーレムを手に入れられなかったことに落胆しつつも、宿の温泉や料理を存分に堪能した。その後、それぞれ部屋に戻って明日の雪遊びの準備をしていた。
「ムラカミくん、二人きりで話したいことがあるの。今からでも良いかしら?」
雪遊び用の道具を荷物から取り出している時に、ローザは『115号室』に姿を見せてボクにそう言った。ボクは明日の準備の手を止めてローザの言葉に頷き、『115号室』から廊下に出た。
廊下には今のところ、ボクとローザ以外に人影は存在しない。窓の外からの賑やかな声と煌びやかな光が、村がまだ夜の眠りにつかないであろうことを知らせてくる。
「本当に賑やかだね。ボクの世界の『クリスマス』を思い出すよ。それでローザ、話したいことって?」
ボクが窓の外を見た後に、後ろを振り向いてそう話を切り出すと、ローザはぎゅっと口を真一文字にして少し俯いた。
ウッドゴーレムの一軒の時に、ボクの様子がおかしかったことについてだな。と、ボクはローザの反応を見てそう直感したが、彼女の覚悟が決まるまで待つことにした。
「ムラカミくん、私は貴方がこの世界に召還される原因を作ってしまった――『召還魔法』で『世界の狭間』を歪めてしまった者の末裔として、貴方に対する責務を果たさなければならないの」
ローザは黄金色の瞳でボクの顔を真っすぐに捉えながら、胸の内の覚悟と共に、両手を固く握りしめた。
ローザのそんな姿をじっと見つめている内に、ボクも段々と全てを告白する覚悟ができてきていた。窓の外からの賑やかな声も煌びやかな光も、少しずつボクの意識から遠ざかっていった。心臓が高鳴る音だけがやけにはっきりと聞こえてくる。
「やっぱりローザには敵わないな。――君の考えているとおり、オズウィン砦の戦いの後から、『加護』の力の弊害のようなものが表れ始めているんだ」
オズウィン砦の戦いの後、もう一人の『ボク』は時々ボクの夢の中に現れては、ボクの心に揺さぶりをかけてきていた。それでも昨日までは上手く誤魔化せていたつもりだった。けれど、やはりどこかの時点でボクの異変に気づいていたのだろう。
そして、もう一人の『ボク』について話し終えた時、ローザは顔を真っ赤にして肩を震わせながら――泣いていた。
「私は、私は償わなければならないの。貴方の人生を滅茶苦茶にしてしまった責任を。もっと早く気づくべきだったのに、ごめんなさい。本当に、ごめんなさい」
次回は6月26日に公開予定です。
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