表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/67

第40話 オズウィン砦(3)



 オズウィン砦の北の広場、そこに冒険者と兵士、さらに砦の衛兵と各地の志願兵が一つの大きな集団を作っている。そして、騒がしい集団の前に立った最高責任者であると思われる少女が、両隣にレウニグスと何故か大野を従えて、小さな身体に似合わぬ堂々とした口調で演説を始めた。


「諸君、この一大事によく集まってくれた。その勇気に心からの感謝を述べたい。――私はノース・ジブラツィヒの衛兵隊、『鋼鉄の盾』の隊長、クロミアだ。以後よろしく頼む」


 暗緑色の髪にレンと同じ浅黒い肌が印象的なクロミアは、目の前の集団を隅々まで見渡すと、全員に勇気を与えようとするかのような力強い笑みを浮かべた。


「偵察部隊の報告によると、敵の兵数はこちらの倍に近い数だという。だが、恐れる必要はない。奴らは致命的な弱点を未だに克服できていないようだ。――諸君、定石通りに『魔素切れ』を狙うぞ!」


 魔物はこの世界にとって異物そのものだ。それ故に、異物を排除しようとする不可視の力が働き、何も対策をしていない魔物は死ぬことになる。


 そこで魔物達は、この世界と異界のどちらにも存在する『魔素』を用いた対策を考え出した。魔物達が考え出した独自の技術によって、『魔素』を衣服のように身にまとえば、魔物達はこの世界から異物として認識されなくなる。つまり、体内に取り込んだ『魔素』が底を突きるまで、自由に行動できるようになるということだ。


 しかし同時に、皮肉なことに人間達が魔物達を確実に殺す手段を手に入れるきっかけにもなった。――クロミアの言った『魔素切れ』狙いの戦術もその一つだ。


「我々の幸運はまだあるぞ。私の隣に立つこの少年は、驚くべきことに『来訪者』――それも『選ばれし者』なのだ。さあ少年、『選ばれし者』にして『勇者』の証である『紋章』を皆に見せてくれ!」


 クロミアの言葉にどよめく集団の前で大野は右手の手袋を外して――、


 黄金の光が北の広場の集団を照らした。見る者に勇気を与えるその黄金の光は、大野の右手にある星形の『紋章』から放たれていた。――やがて、集団のどよめきは大歓声へと変わっていった。


 大歓声を上げる集団の中でボクは、黄金の輝きを目にしながら、安堵と納得の感情を抱いていた。大野は間違いなく『勇者』に相応しい人物だ。少なくともボクのような、仲間に対してすら『自分が生き残るための駒』、あるいは『興味深い観察対象』と、心の奥のどこかで考えてしまう人間よりは――。


 そして、今度は大野がクロミアに促されて、クロミアと入れ替わるように集団の眼前に出ると、ゆっくりと深呼吸をしてから演説を始めた。不思議なことに、あれだけ騒々しかった集団もしんと静まり返った。


「俺の名前は大野大河。まずは俺の話を聞いてくれ。この世界に来て、『鋼鉄の盾』の皆と出会って、色んな奴や色んなものを見てきた。良いこともあったが、悪いことがあったのも事実だ」


 大野はここで一度、言葉を切って目を閉じた。その瞼の裏にはおそらく、今日までの彼の旅路が映っているのだろうが、今のボクにはその内容を知る由はない。数秒後、大野は目を開けて演説を再開した。


「だけどな、ここにいる全員が力を合わせられる。この困難を乗り越えられる。そう思っているのも事実だ。大きな災いがあって、たくさんの困難があって、それでも何度も立ち上がって、助け合っていた姿を見てきたからだ」


 彼は右手の『紋章』を天高く掲げた。『紋章』は彼の覚悟に応えるかのように、その黄金の輝きを強くした。そして、彼は演説の最後に力強くこう宣言した。


「――ここにいる全員で、自分達の未来を、自分達の手で掴むぞ!」


次回は12月12日に公開予定です。

ツイッターもよろしくお願いします!

https://twitter.com/nakamurayuta26


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 大野くん、カッコいいーっ!(* ゜Д゜)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ