第35話 冬空の下の歩み
激動の第3章、スタートです!
白雪をかき分けたイチノセ村の空き地に、ボクとレンは早朝から木剣がぶつかり合う音を何度も響かせていた。相手はイチノセ村の村長、ローグマンだ。
元冒険者でもある彼に剣術の稽古を頼み込んだのは、ボクが所属する冒険者チームに、接近戦に対応できる人物がいないからだ。ボク達が今使っている稽古用の木剣が、片手でも使える軽くて短いものなのは、弓矢との使い分けを考えてのことだった。
「そろそろ交代の時間だね。もうお昼も近いし、次のレンくんの番で最後にしようか」
ローグマンにそう指示されたボクは肩で息をしながら後ろに下がり、それからレンがローグマンの眼前に立って、木剣を中段に構えた。
「今日こそ、今度こそ、勝たせてもらいますよ、村長!」
レンはそう言って勝ち気な笑みを浮かべて木剣をより強く握り、それに対してローグマンは穏やかに微笑んだ。
両者、構えてからほんの少し間をおいて――、先に動いたのはレンだった。レンは木剣を上段に振り上げると、そのまま真っすぐに突き進んで、ローグマンに向かって木剣を振り下ろした。ローグマンは左に大きく一歩動いただけで避け、レンの頭部を狙って木剣を左から右へ水平に振るった。
しかし、レンはその場でしゃがみ込んで、迫りくる攻撃をかいくぐると、速く鋭い回し蹴りで足払いをしかけた。ローグマンはたまらず後ろにジャンプしたが、この反応が勝敗を決することになった。
着地した直後にほんの少しだけ重心のバランスを失い、不安定な体勢になってしまったのをレンは見逃さなかった。レンは木剣を一直線に全力で突き出すと、ローグマンは盾代わりにした自身の木剣を弾き飛ばされ、そのまま後ろに転倒した。
「あー……。まいった、まいった。レンくん、一ヶ月足らずでここまで腕を上げるとは、本当に驚いたよ」
ローグマンは仰向けに倒れたまま苦笑いを浮かべ、両手を上げて降参した。勝利したレンは「よっしゃ!」と、歓喜の声を上げた。
「なあなあ、今の見てたかよムラカミ。やっと勝てたぜ!」
興奮気味に勝ち誇りながらそう口にしたレンの姿を見つつ、ボクはローグマンと同様に苦笑しながらこう返した。
「はいはい、ちゃんと見ていたってば」
ノースブルク村の暗殺未遂事件を解決してから、早くも一か月以上が過ぎていた。空気すらも凍りつきそうな冬空の下、それでもボク達は、不足した素材の採取や行商人の護衛といった内容の依頼をこなして、冒険者チームとしての歩みを進めていた。
次回は9月26日に公開する予定です。
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