第15話 初めての戦い(3)
それは、中学校三年の夏のある日のことだった。
いよいよもって進路先選び、そして、自分の将来像を描かなければならない時期、既に随分と親しくなった大野に、
「自分の適性に合った進学先、職業を選ぶべきなのだろうが、何を一番の基準にするべきなのだろうか。基準に達するために、何をするべきなのだろうか?」
などと、愚痴交じりに話したのがきっかけだったのを覚えている。
『何をすべきなのか迷ったら、何をしたいのか考えたら良いんじゃねえか?』
さすがの大野も難しそうな顔つきでそう答えたが、ボクの中ではその答えが、妙にすとんと納得のいくものだった。
結局の所、ボクは家に近く、偏差値的に高くも低くもない、ごく平凡な高校を進学先に選んだ。
理由としては、無理に遠くの進学校に通うよりも、そちらの方が将来の選択肢が多くなるだろうと考えたからだ。――随分と後になって、ボクと大野の進学先が同じだと知った時は、お互いに大笑いしたものだ。
「レン、ローザ。少し、ボクの話を聞いて欲しい」
レンは足を止めて振り返り、ローザは覚悟を決めた表情を変えずに、ボクの顔をじっと見つめ返した。二人の目に今のボクの表情は、どんな風に映っているのだろう。
「ボクも残って戦う。勝つための、生き残るための策は、ある」
多分、声は震えずに言えたと思う。確実な策とは言えない。そもそも、二人の協力なしでは成立しない策だ。
「正気なの? 魔物との戦いは遊びじゃないのよ? 命を落とすことだって多いのよ!」
「ここで逃げたら、ボクはずっと、君とこの村を見捨てたことを思い出しながら、魔物から逃げ隠れしなくちゃならなくなる!」
ローザの厳しい反論に対して、即座にボクは強く反発した。すると、ローザは驚きに目を見開いて息を呑んだ。
「ローザ、ゴブリンの特徴と習性を教えて欲しい。それから、集団の規模の予測も、大体で良いから頼むよ。周辺の地形も紙に書いて欲しい」
さっきとはうって変わって落ち着いた言い方で、ボクは必要な情報を求めた。ここまで感情の起伏が激しくなるのは、記憶の中では初めてだ。
「青みがかった茶色の肌と濁った黄色の目。体長は一メートルぐらいで、手足は細くて腹だけが突き出ているわ。性格は残忍で狡猾。雑食で繁殖力が高く、強い個体がリーダーになって群れを形成することが多いわ」
「おい、ローザ!」
淡々とゴブリンの生態について解説しだしたローザに対して、レンは慌てて制止をかけようとしたが、解説が止まる様子はない。
「本能に忠実なゴブリンでも、人の畑を群れ全体で荒らすようなことはしないわ。目立って見つかる可能性があるから。群れのヒエラルキーの一番下がやることが殆どね。畑の足跡の数から考えて、群れの規模はおおよそ二十体くらいかしらね」
地面の歪な足跡を見ながら、ローザは解説と推測を言い終えた。ボクは自身が考えついた策と、ローザから聞き出した情報を、今度は脳内で組み合わせて処理していく。そして、ある確信を得る。
――いける。これは、十中八九勝てる戦いだ。
次回の投稿は、1月25日の予定です。
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