第14話 初めての戦い(2)
「私が、私達一族がやらなけらばならないの。この村で初めて『召還魔法』を使って、現在の状況を招いてしまった、私達一族が――」
――魔王軍との戦争が激化していく中、各国の有力な魔法使いたちに対して、『召還魔法』の行使を命じた。
ローザの祖先である魔法使いの男も、この村の近く、ボク達が最初に召還された森の中で、大規模な『召還魔法』を発動した。それが、後に大きな禍根を残すと考える余裕も、当時はなかった。
「だから、ムラカミくん。あなたはレンと他の村人たちと一緒に、隣の村まで避難して。そうしてくれることが、私達一族の罪滅ぼしなの」
声を少し震わせながら、それでも確固たる意志を瞳に宿しながら、ローザはボクの方を真っすぐと見据えた。
「何でだよ……。『召還魔法』で召還されたボクを、何で頼ってくれないんだよ!」
理解できなかったし、納得もできなかった。『加護』の力を得たボクなら、魔物の群れとの戦いになったとしても、何かしら力になれることがあるはずだ。
何より、色々な事情があったとはいえ、見ず知らずのボク達にここまでよくしてくれたローザと村長を、見殺しにするような真似だけはしたくなかった。――もう一人の冷静冷徹なボクが、どれだけその意思に反対していようと、だ。
「それはあなたが『迷い人』だからよ。偶然、この世界のどこかにいる本物の『勇者』の召還に巻き込まれた、『選ばれし者』にして『勇者』の証である『紋章』のない、不完全な『加護』の力だけの、ごく普通の人間。それが今のあなたよ」
『迷い人』――。『勇者』とは違う、巻き込まれただけの、ごく普通の人間。ローザの冷静な反論の全てが、ボクの胸の中に突き刺さり、重くのしかかった。
ボクは、どうするべきなのだろう。いや、ここは考えるまでもなく、レンと村人たちと一緒に避難するべきなのだろうが、
どうしたことだろうか、ボクの足は、前にも後ろにも動かせなくなってしまった。
「ムラカミくん、何をしているの? 早く逃げる準備をしに行きなさい! すぐにでもゴブリン共が村を攻めてきてもおかしくないのよ!」
焦燥に陥ったボクに、ローザが険しい口調で避難を促してきた。レンはすでにローザに背を向けて、壊された柵の反対方向に重々しく足を運んでいた。
再びボクは、ボク自身に問いただした。――何をするべきなのだろう?
その時、ボクの脳裏に、ある少年の言葉が鮮明に蘇った。
『何をすべきなのか迷ったら、何をしたいのか考えたら良いんじゃねえか?』
次回の投稿は来年の1月4日の予定です。
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