表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/67

第13話 初めての戦い(1)

 月明かりが照らす村の中を、ボク達は息を切らしながら疾走していた。先頭を走るレンはそれでもなお、時々もどかしそうに振り返っていた。


「急げ! 奴らが村の中に入ってくるかもしれねぇんだぞ!」


「分かってるわよ!」


 苛立たしげに叫んだレンに対して、ローザも鬼気迫る声で返した。


 ボクはといえば、『加護』とやらのおかげで体の方はついていけているのだが、状況を未だにしっかり理解しきれず、頭の中は置いてけぼりをくらってしまっていた。


 村長の家を飛び出して数分後、村の北部の畑に到着した。畑には、いくつもの足跡や野菜を掘り返した跡が残っている。畑を守る柵は強引かつ無残に壊されていて、木片が辺りに散らばっていた。


「くそっ、大分やられているな」


 矢筒から矢を引き抜いて、レンは周囲を警戒し始めた。ボクも壊れた柵の向こう側にある森に、何か潜んでいないか目を凝らす。


 森の奥には、見つめていると吸い込まれそうな深い闇が、ただじっとこちらを見つめ返してくるだけだった。


「気配と足跡から推測するに、村の中に入られた心配はなさそうだな」


「ええ。でも、味を占めたゴブリン共は、また来るでしょうね。しかも、もっと大勢で」


 二人の間に深刻な空気が滲み出てきた。ここにきてようやく理解が追いついてきたボクは、ローザにこれからどうするべきなのかを聞いた。


「ゴブリンの群れの規模にもよるけど、最悪の場合、村を放棄するしかないわね」


 村を放棄する――。この村に滞在して日の浅いボクでさえ、受け入れ難い選択肢であるのに、二人や村人たちにとって、どれだけ苦渋の決断になるかは想像に難くない。


「もしも、逃げ切れそうにない場合は……。後のことは頼むわよ、レン」


「ああ、分かった」


 ローザが柵の壊された部分を見ながらそう指示すると、レンは絞り出すように応え、口を真一文字に結んだ。


「ローザ、君はどうするつもりなんだい?」


 ボクの言葉にローザはぴくっと反応した。嫌な予感を覚えつつ、ボクはローザの答えを待った。ほんの少しの間、夜風が草木を揺らす音だけが聞こえた。


「私とお父さん――村長だけ残って、少しでも時間を稼ぐわ」


 その行為が最終的に彼女と村長に、どんなに恐ろしい結末をもたらすか、これも想像に難くなかった。だが、ローザはボクの反論を封じ込めるかのように、こう続けた。


「私が、私達一族がやらなけらばならないの。この村で初めて『召還魔法』を使って、現在の状況を招いてしまった、私達一族が――」




次回の投稿は12月7日の予定です。

ツイッターもやってますんで、良かったらフォローお願いします。https://twitter.com/nakamurayuta26?lang=ja

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ