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澄み切った青空に、心地よい風。異国へと飛び立つ私を祝福してくれているかのようだ。
……つい先刻までそう考えていた自分にこう言いたい。
『お前は馬鹿か。』
と。
―――肥沃な大地と豊かな水資源に恵まれ、古くからこの大陸を実質的に支配してきた国。
それが私が生まれた国。シェニーパ王国だ。
私はシェニーパ王国第一王女キャサリン・ヴァーウェル。身分的には上流階級に属し、その中でも上に立つものといえる。
が、それは正妃の生んだ子供であればの話。
私を生んだ母は父の寵妃であったが、所詮は身分の低い愛妾。その子供は母親よりも蔑まれるのが普通だ。
例に漏れず、私は王族とは言い難い扱いを受けている。
そのため、『こんな国から一刻も早く出て行きたい』と思いは人一倍強かった。
10歳になった今年、父に長期留学を申し出たのも、その思いからだ。
私の思惑通り、事は上手く運んだ。
そこまでは良かった。
問題は、私の隣にはふんぞり返っている同い年の男の子がいることである。