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悪役令嬢の中身

悪役令嬢の中身は。

作者: 茶トラ
掲載日:2018/04/22

言わないと。

あの日の私は、私ではなかったのだと。

貴方が、再び振り向いてくれた視線の先は…。




セレネとはじめて入れ替わった時から、婚約者様との仲は概ね良好だった。

先日先に卒業を迎えた婚約者様は、頻繁に遊びにくるようになったし、家族ぐるみのいいお付き合いだと思う。

なんの憂いもない日々なはずなのに。

私の心は重くなるばかり。

その理由はわかりきっている。



貴方が思い直してくれた相手が、誰なのか。



その事実を貴方に打ち明けたら。

貴方は怒るかしら。

また、婚約破棄しようとするかしら。


黙っていれば、いい。

言ったところで、信じてくれないかもしれない。


そんな思いが次々とわいてくるけど。


だけど、私は…。

私、は。





※※※※※



「さて、食事にはまだ早い時間だね。どうする?君がこの前欲しがっていた春用の服でも見に行くかい?」


「いえ、少しお話したい事がありますので。…そうですね、そこの公園に寄って貰ってもいいですか。」



話題のお芝居を婚約者様と2人で観に行った日。

私は打ち明ける決意をして、公園のベンチへと婚約者様を促す。

多少人通りが多いのが気になるけど、それはもう致し方無い。

どこかのお店だと騒ぎになってお店に迷惑をかけるし、家だとセレネに心配をかけることになる。

これから、怒られて、呆れられて、フラれるのだから。



「さて、こんなところでのお話って何かな?愛の告白ならいつでも歓迎だよ。」


ベンチにさっとハンカチを敷いて、私に先に座るよう促してくれる。

相変わらずこんなところはスマートな人だ。


「そうね、ある意味、告白だわ。残念ながら愛では、無いけれど。」


「愛では無い告白、ね。それは興味深いね。」




私は、説明した。

あの日のことを全て。

貴方が思い直してくれた相手は、私では無いと。

セレネだったと。

故意では無いけれど。

結果的には貴方を騙して婚約破棄を回避したと。

全て、打ち明けた。


─。



全て話終わった後、暫し訪れる沈黙。

そんなに長い間話していたのだろうか。

あたりは暗くなり始め、人通りも殆ど無くなった。

婚約者様は終始無言で話を聞いてくれていた。

表情はわからない。

私は殆ど俯いて話をしていたのだから。

人とお話をするときには、目を見て話しなさいと、セレネにいつも言っていたくせに、ね。



「…ねえ?今の君は、どっち?」


「…え?」


突然、降り注いだ言葉と共に、頬に手がかかり顔を上に上げさせられた。


「今の君は、セレネちゃん?それとも…。」


「私は、エアリス…です。」


「ふぅん?あの時と同じ表情しているのに?」


─泣いてるのに、僕のこと、好きって言っていた時と同じ顔。

その顔に、僕は惚れ直して、そして思い出したんだ。

出会った頃の君のこと─



言葉と共に、優しくキスが唇へと落とされた。

そして、更に婚約者様は言葉を紡ぐ。


「出会った頃の君は、元気いっぱいなのに、恥ずかしがり屋で、泣き虫だったよね。

今のセレネちゃんと似てるけど、ちょっとだけ、違うかな?

僕のこと大好きで、いつもついてきて、ふふっ、可愛かったな。

それが、終わってしまったのは…あぁ、そうだ。君が社交界デビューした頃だったよね。

何があったのかな?」


「…言われたんです。男好きみたいで、はしたないって。いつも、貴方に付きまとって、迷惑だろうって。」



そう、よく覚えている。

数名の女子に囲まれて、呼び出されて…。

その時は、ショックで、言われるがまま、婚約者様に迷惑にならないように、離れて。

その後に、その方々から色々聞かされた。

色んな方の噂話。

社交界デビューしたての私にとって、衝撃的な醜聞の数々を。

そして、思う。

今のままの私では、また彼女達の恰好のネタになってしまうと。

ならば、変わろう。噂にならないよう、完璧な淑女になろうと。

そして、今。

婚約者であっても、男性とは距離を置き。

噂話ばかりの女性とも距離を置いて。

孤高の女王様と呼ばれるようになった。


それでも、やっぱり小さい頃から好きだった婚約者様のことは、ずっと好きなままで。

セレネにだけは、いつも話をしていた。



「成る程、ね。君が離れてからやたらと僕のところにきていた娘たちかな?まぁ、いいや。今、聞きたいのはー。」



─セレネちゃんからじゃなくて。

君の口から、君の言葉で。

僕のこと


「好きって、言って。」



─僕も、好きだったんだ。

はじめてあった時から。

だから、君が離れていったのが、許せなかった。

笑顔が消えて、冷たい瞳をするようになって。

言葉を交わさなくなって。

僕のこと嫌いになったのかと思えば、時折、寂しそうな視線を送ってきて。

意味がわからなかった。

だから、婚約解消しようと思った。

誰でも良かった。

ちょうど擦り寄ってきた女がいたから、口実に使った。

別れようと決めたあの日。

まさか、中身がセレネちゃんだったなんてね。

でも、まだ半信半疑だけど。

だって、あの時の君は、完全に昔の君のだったから。

素直で可愛くて泣き虫な、僕のエアリス。


「…早く、言って?言わないと、また。」


キスするよ?



入れ替わりシリーズとしては、これで一旦完結です。

お姉さまの方がもう、ひっばれないから。

殿下とセレネちゃんを応援?してくださってるき方、スピンオフでお会いできたらと思います。


拙いお話でしたが、お読みいただきありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 おサルさんを楽しみにしてます。
[良い点] 入れ替わりを奇麗な形で書いたもの…という感じ。 婚約破棄系は、悪役令嬢に転生者が入り込む、ある意味 ずるい 事が主流なので。 [気になる点] 殿下とセレネちゃんがどうなるのか、気になる。…
[一言] えっ!?ここで終わりですか? せめてエアリス嬢の返事ぐらいは聞きたかったです。 セレネちゃんと殿下(もしくは殿下の兄)の恋の行方も見たかったけど、今のセレネちゃんの年齢じゃあねぇ。 もう少し…
感想一覧
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