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15、露出度が高い神(オリジン・エルフ)

お読みいただき、ありがとうございます!!

 運営NPCは、自分の管理しているフィールドのいくつかの場所に瞬間移動することができる。

 一樹は移動先の指示を入れなかったため、デフォルトで設定されている神殿内にあるオリジンの寝室に光と共に現れた。

 プレイヤーであるミユと共に。


(あれ? 寝室に出てきちゃったか……)


 一樹は抱きかかえているミユを見る。布でぐるぐる巻きになっている彼女をベッドに優しくおろすと、怪我の状態を見ようと布をそっと取り除こうとする。


「ひゃっ!! あの、しばらく休めば回復魔法使えるようになるので!! あの!!」


「今も傷が広がっているようですね。治療が必要……ん?」


 ふと自分の腕を見て、肌の露出に気づく。

 肌どころか、自分の胸元から腹にかけて続く肌の露出に数秒固まる一樹。


(え? あれ? どうしてこうなった?)


 目の前には自分の貫頭衣を巻きつけた少女が、その布を取ろうとする一樹を必死で止めようと涙目になっている。そして一樹は下着フンドシ一枚しか身につけていない。なぜならば着ていた服は少女に巻きつけたからであって、半裸状態のレディに対し親切な紳士的行動をとったその結果であり……。


「おかえりなさいませ。オリジン様……と、お連れ様」


 目も覚めるような美少年神官エルフ、プラノの澄んだ声に固まるオリジン一樹と治癒師ミユ。

 下着フンドシ一枚で美筋肉を惜しげもなく晒す男神は、柔らかなオレンジ色の髪をふるふると震わせる幼気な少女をベッドに押し倒している……そんな様子の二人を見て、プラノは頬を染めつつ目を伏せる。

 プラノも子供ではない。男女が裸同然の姿で寝室にいるということが、どういう事を意味するのかある程度は知っている。オリジンは神であるが、神だからといって人と交わらないという訳ではない。

 むしろオリジンの子孫が神殿で暮らしていく未来を一瞬で思い描き、その栄誉を賜われるのではとプラノは心が浮き立つのを感じていた。


「失礼いたしました。お励みくださいませ」


「待ちなさいプラノ……」


「きゃっ!!」


 勘違いしたプラノを追いかけようとする一樹の後ろ姿、その引き締まった背筋から大臀筋までをつぶさに見てしまったミユは、思わず両手で目を隠して悲鳴をあげる。そんな彼女の様子にプラノも何事かと振り返る。

 このままではいけないと一樹は必死に自分を落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸し、クローゼットから予備の貫頭衣を取り出すと素早く身につけた。


「プラノ、この方の……ミユさんの怪我の治療を」


「かしこまりました」


 神官エルフたちは精霊魔法で怪我や病気を治している。そのメカニズムは一樹には分からないのだが、徹夜で疲れていた時にプラノにかけてもらった精霊魔法はとても良いものだと感じた。だからこそプレイヤーであるミユにも合うのではないかと思ったのだ。

 ちなみに回復魔法もかけてもらったが、一樹の体調に変化はみられなかった。もっともNPCは体力の増減は無いため回復魔法をかけられても変化することはないのだが。

 プラノは手をかざすと、そこに集まるのは青い光と白い光だ。どうやらいくつかの精霊が集まると癒しの力が発動されるようだ。


「あ、なんか体が温かいです……」


 気持ち良さそうに目を細めるミユに、なぜか一樹は心がざわつくのを感じる。自分が精霊を呼び出しても良かったのだが、まだ契約したばかりの王級精霊の力が把握できていない。ここはプロの神官に任せた方が良いだろう。

 それよりも流れで精霊と契約をしてしまった一樹は、ログアウトしたら相良に報告しておこうと思いながら、ミユが治癒されている様子を見る。

 まだ見る。

 ひたすら見守り続けている。


「あの、あまり見られると、はずかしいです……」


「……何かあっては大変ですからね。そうだプラノ、ミユさんに服を用意できますか?」


「はい。大丈夫です。あと、お連れ様は少し休んでから動かれた方が良いかと」


「分かりました。彼女はこのまま私の寝室を使ってもらいますね」


「はい。では失礼いたします」


 洗練された動作で優雅に頭を下げ、プラノは部屋を去って行く。

 ミユの着ていた服はやぶかれたもののみで、予備は無いらしい。買いたくとも基本お金は「パーティ資金」としてクラスメイトに預けているため、すぐにどうにか出来ないらしい。それを聞いて一樹は内心怒りをおぼえながらも、表向きは笑顔をキープする。

 自分はこの世界の神であり、NPCだ。一樹が黙っているとミユがしょんぼりしながら口を開く。


「今回のことで反省しました。クラスメイトだからって信用するものじゃないって……もっとしっかり仲間を選ぶことにして、お金もある程度は自分で持っていようと思います」


「そうですね。渡り人でも善き人はたくさんいますよ」


 しばらくして、プラノが町のエルフから譲ってもらったという女性ものの服をミユは身につけ、寝る時間だからとログアウトしていった。

 プレイヤーが神殿に入るには、エルフの国で困っている人たちを助ける依頼クエストをこなさなければならない。なのでログアウトしたミユが再び神殿にいるオリジンに会うのは、まだ先になるだろう。

 ちなみにプレイヤーがログアウトできるのは、町の中のような敵の出て来ない場所に限定されている。ログインは基本的に前回ログアウトした場所にできるのだが、今回のミユのような場合はプレイヤーが自由に出入りできるエルフの町から次回のスタートとなるだろう。


(なんにせよ、今回は色々やらかした気がする……)


 一樹はため息を吐いて、ログアウトした。







「バグっていうか、ちょっとダメなやつがあったわよ」


「やっぱり……」


 ログアウトした一樹は、上司相良に報告すべく作業室へ向かった。今日も残業らしい目の下に隈がある相良は、だらりと椅子に座ったまま一樹を見上げている。


「まぁ、私にとってはご褒美だったけど」


 そう言うと、ノートサイズほどの紙を一枚見せてくる。ゲーム内の画像らしく、森の中で全裸のような男が何かを抱えている。

 全裸のようなと表現したのは、その男の下半身あたりが緑の光に包まれていたからだ。


「な、なんですかこれは!! てゆかこの光、深夜アニメによくある謎の光みたいになってる!?」


「さっき森野君が接触したプレイヤーの一人がカメラ機能使って撮ったらしいのよ。たまたまそいつが過去に問題起こしていて、うちらがマークしていたからこれの拡散が防げたんだけどね」


「マジすか……助かった……」


「それにしてもぷぷっ、フンドシが上手く隠れてるけどぶほっ、かえってエロくなってるわねぶっはっ」


「……精霊たちが気をつかったんでしょうけど、ね。あいつらいつも色々やってくれるから」


 ガックリと落ち込む一樹に、相良は容赦なく腹をかかえて爆笑しながらも内心首を傾げていた。


(精霊が、気をつかう? まさか……下級精霊が?)


 一樹が帰った後、何か引っかかりを感じた相良は、とある人物に調査依頼のメールを送るのだった。



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