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二つの罪は監獄で  作者: 咲那 夢羽
2/2

1話 

 また同じ夢だ。

 ここにきてから前よりも見る頻度が増えた気がする。


 汗で張り付いた服に嫌悪感を覚えながら時計を見た。

 針は六時を少し過ぎたくらいだった。

 耳を澄ますと、寝息が聞こえてきた。

 オレはちらっと目の前を見つめた。

 すると、普段いるはずの人影はなかった。

 朝早くから任務に出ているのだろう。

 日の出前の暗い中、服を着替えながら今日の日程を思い出していた。

 今日の任務まで時間はたくさんある。

 しかし、こんな目覚めでは寝るにも寝れない。

 横目にある人にお勧めだと渡された本が目に入った。

 昨日のオレは栞を挟んだまま続きを読むのを忘れていたらしい。

 任務時間までそれを読み進めることにした。



 本を読むとそのまま物語に吸い寄せられ、周りの音や今抱えている自分の気持ちなど忘れて集中できる。

 だからこそ、本は楽しい。

 というよりは本を読んでいる間はとても楽だ。

 

 しかし今日はその集中が遮られた。


 ガタンッ


 「へぇ~監獄ってこんな感じになってるのね」


 聞いたことがない声に、オレは一気に物語から現実へ戻された。

 新人の看守だろうか。

 すると、もう一人いたのか別の声が聞こえた。

 「ここの囚人は任務の時に借りることができる。ただし報酬金は払わなければいけない」


 会話を聞くにここの監獄案内をしているようだ。

 そう、このギルティ監獄のことを。

 このギルティ監獄は普通の監獄ではない。

 不定期に監獄にいる看守に任務が与えられ、それを達成するために囚人を金で雇うという特殊な制度がある。

 オレはこの監獄の囚人側だ。

 ここに来たのは、いつのことだったか。

 あの頃のことは、よく覚えていない。


 ふいに足音が近づいてきた。

 多分、どんな囚人がいるのか見て回ってるのだろう。

 何気なく本から顔を上げると、たまたま檻の前を通った新人であろう看守と目が合った。

 オレンジよりの金髪に緑の瞳。

 同じ年か年上か、同年代だと思う。

 そのとき、彼女の口が動いた。


 「みかげ」 


 声は聞こえなかった。

 見間違いかとも思った。

 それでもオレはその口の動きに動揺が隠せず、体中から冷や汗が出た。

 堪えきれず、さっと顔をふせた。


 「新人、そろそろ次に行くぞ」


 もう一人の看守の声が響き、少しの沈黙の後、「はい!」と言った彼女の足音は、オレの檻の前から遠ざかっていった。

 彼女がオレの前からいなくなった後も、冷や汗は止まらなかった。

 なぜなら、オレはこの監獄でサイス(大鎌)と呼ばれている。

 それは、本名ではなく囚人の使う武器をコードネームとして。

 大抵の看守がサイスと呼ぶが、彼女は「みかげ」と言った。

 別に看守が本名を知っていてもなんらおかしいことではない。

 ないのだが。

 「みかげ」

 漢字で書けば「御影」

 これは本名とは別の名前。


 そう、殺し屋時代の名前だ。

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