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めちゃくちゃ文書くの下手くそすぎて泣きそうです(´・ω・`)
「不味いな…!」
それは堕天使が悪魔の少女へ巨大な光球を放った瞬間だった。
「くそっ!」
歩人は神威で光球の前に移動する。そして、光球を左手で受け止めたのだ。
「女の子虐めてんじゃねぇよ!」
「誰だ貴様はっ⁉」
歩人は光球を堕天使にぶつけ、堕天使ごと神威で移動する。飛んだ先はエジプトの砂漠のど真ん中。
「はぁっ!」
光球が弾け、物凄い轟音とともに堕天使は吹き飛ばされる。その時、一瞬だが顔が見えた。
「あれは……!まぁいいや。先ずはあの子を助けないと」
歩人は再び神威で廃ビルへ戻り、少女のもとへ駆け寄った。
か、可愛い…。腰のあたりまである銀白の流れるような髪…、曇りのない紫の瞳…、そして何より大きな胸!真理亜も大きい方だけど、この子も負けてないな────って、こんな時に俺は何を考えてるんだ…。
「だ、大丈夫か?」
「べ、別に助けなんて必要ないわ!」
少女は差し出した歩人の手を払い除ける。そして自力で立とうとするが、足に力が入らずすぐに倒れてしまった。
「つぅっ⁉痛ったぁ…!」
「やっぱ無理じゃねぇか。ったく、可愛くねぇな。そういう時は素直に助けを求めれば良いんだって」
そう言って歩人は少女の腕を自分の肩に回す。
「ちょっ、何やってるのよ!」
「何って、目の前の怪我人放って置くわけにもいかないだろ?家に連れて帰るんだよ」
「い、家!?誰の?」
「お前んとこに決まってんだろ」
こいつは何を言ってんだ?
そして暫く無言が続く。
「……あー、そういえば、自己紹介がまだだったな。俺は篠崎歩人」
歩人は居心地が悪そうに告げた。
「私はエレナ・オルフェウスよ」
少女も自身の名前を言った。
「エレナ・オルフェウスか…」
歩人は少女の名前を反芻する。
オルフェウス、つまり現魔王の娘ってことか。こんなトコで出会うなんてな。
目の前に黒のタキシードを着た男が現れた。
「大丈夫ですか、お嬢様⁉」
「来るのが遅いのよ!しっかりなさい、ロイス」
「申し訳ありません」
タキシードの男が深く頭を下げた。
畏まった口調と服装から執事か使用人なのだろう。
ロイスはエレナを近くに停めてあるリムジンに乗せ、歩人に振り返った。
「お嬢様の命を救って頂き、真に有り難う御座います」
「いや、たまたま通りかかっただけだから」
「僭越ながら、魔王シューガルト様が貴方に会いたいと仰っております。一緒に来て頂けますか?」
「あいつが俺に会いたいと…?」
「はい」
「そうか…」
戻ってきて早くもあいつに会えるのか…。まぁ、いいだろ。いずれ会うことにはなるし。
「分かった」
「では、車にお乗り下さい」
歩人を乗せたリムジンは低いエンジン音と共に発進する。車内にある時計を見ると、登校時間を1時間以上過ぎていた。
はぁ…、遅刻だよ。どーすんだよこれ…。転入初日から遅刻って不味いだろ。
その様子を見たロイスがバックミラー越しに告げた。
「大丈夫ですよ。ちゃんと対応しますから」
「まじか。それは助かる」
すると突然、隣に座っているエレナがブスッとしたまま歩人に話しかけてきた。
「そういえばさっき、お父様を『あいつ』呼ばわりしてたけど、知り合いなの?」
「まぁな」
あれは12年前の戦争が終わった後だったな…。親父が魔界のパーティーに呼ばれた時だった。
◇
篠崎歩人の父篠崎雄人は、当時「聖戦」と呼ばれる戦争を終結させた英雄として三界の中で讃えられていた。
遥か昔より、人間界、天界、魔界、高天原、冥界の5つの世界は相互不干渉を基に均衡を保って来た。しかし突如として、高天原及び冥界が人間界へ侵攻し、人類の大量虐殺が行われた。高天原に住まう神、冥界に住まう鬼の力は人類の理解を遥かに超越し忽ち人類は絶滅へと追い込まれた。人類は恐怖と不安により、パニックに陥った。その時、戦争を終結させるべく立ち上がったのが歩人の父である篠崎雄人である。
元々雄人には普通の人間には備わっている筈の無い力があった。その力によりたった一人で神軍及び冥軍を壊滅させ、戦争終結の足掛かりに成った。
その後、天界・魔界連合軍の協力により人間界は護られ、被害は最悪には至らなかった。しかし、それでも約45億7000人以上の死者・行方不明者を出した。また、世間に神、鬼、天使、悪魔の存在が知らしめられた。人々は天使、悪魔の存在を「聖」として崇め、後にこの戦争を「聖戦」と呼ぶ様になった。
「聖戦」から2年後、天界、魔界合同のパーティーに呼ばれた雄人と歩人は魔界にいた。
「やぁ、雄人。戦争での活躍、素晴らしかったよ」
「そうですね。貴方の活躍に対して天界・魔界より感謝申し上げます」
「はははっ。そんなに改まらなくてもいいよ、カエサル。天王であるあんたに褒められるようなことはしてないさ」
「フッ、謙遜するなよ」
「謙遜じゃないさ、シューガルト。俺は唯やるべきことをやっただけだ」
そう言うと雄人は何か思いついたように言った。
「あぁ、そうだ。息子の挨拶がまだだったな。ほれ、前に出て挨拶しろ」
「篠崎歩人です」
すると、魔王シューガルト・オルフェウスは歩人の顔を覗き、微笑む。
「歩人君か。お父さんの様に強い心を持ち、逞しく生きなさい」
「はい!」
大きい声で返事をした俺……。懐かしく感じるな。だが、魔王と直接話をしたのはこの時と、少し前に魔界に行った時だけだ。それ以来、魔王とは会っていない。今更、俺に何の用だというのだろう?
「あ…と!歩人!あーるーとー!」
「へっ!?」
横を見るとエレナが歩人を睨み付けていた。
「ったく!何なのよ、貴方!私が何回も呼んでるのに反応しないなんて、無礼もいいところだわ!」
「ああ、悪い。少しボーッとしてた…」
「はぁ……、最低…!」
怒らせてしまったみたいだな……。
「ごめん」
「別にいいわ」
「到着致しました」
ロイスが車を止める。
「ここは…!」
そこはオルフェウス・モーターズ本社前だった。この会社はオルフェウス家、つまり歴代の魔王が人間界での居住、任務遂行のために設立された大企業である。
魔王というものはこんなに庶民に身近で良いのだろうか?という疑問が生まれたが歩人にとって心底どうでもいい疑問だった。
「さぁ、シューガルト様がお待ちです」
促されるまま、エレベーターに乗せられ、最上階まで連れられる。
扉が開くと、そこには中世ヨーロッパを思わせる装飾や家具が並んでいた。
そういえばあいつ、こういうの好きだったな。
そのまま奥へ通される。
ロイスが重々しい扉をノックする。
「篠崎歩人様がいらっしゃいました」
すると中から「入りたまえ」という少しくぐもった声がする。シューガルトの声だ。
部屋へ入ると中央には大きな机が置かれ、その奥にエレナと同じ銀色の髪を持つ、魔王シューガルト・オルフェウスが座っていた。
「やぁ、歩人、久しぶりだね」
「変わってねぇな、あんたも。で?俺に何の用だ、シューガルト?」
そう言うとエレナが焦ったように叫んだ。
「あ、貴方!仮にも魔王の前よ!?少しは口を────」
そう言いかけたエレナを魔王は片手で制止した。
「今朝は娘を助けてくれて有り難う。そこで、君にご褒美をあげようかと思ってね」
すると再びエレナが叫ぶ。
「ちょっとお父様!?こんな貧相な奴に助けられた憶えは無いわ!私一人でも勝てたわ!!」
なんかすごい酷いこと言われたような気がする……。
しかし魔王は険しい顔になり、娘を怒鳴りつけた。
「黙りなさい!歩人が助太刀してくれなければお前はどうなっていたと思う?幾らお前であってもあのウィルドランは倒せないよ」
一喝されたエレナは黙ってしまう。
「ゴホン────さてと、それで褒美は何が良い?」
魔王が話を戻す。
こんな状況で褒美って言われてもな…。
「うーん。そうだな、お金くれるとありがたいかな。一生遊んで暮らせるような分のお金を頼む」
「お金?どうしてだ?」
「いや、まだ今月の家のローンの支払いまだだし。お金が無いと生活していけないだろ?」
「ふむ……いいぞ」
返答早い!「ふむ」とか言ってるけど殆ど考えてなかったよな!?
「マ、マジか?」
「あぁ、マジだ」
シューガルトはニヤリと笑うと机をゴソゴソやり始め、1冊の本らしきものを投げてくる。
「こ、これは……通帳!?お父様、一体何を…!?」
「お前、こんなこと平気でするやつだったか?」
「さあな。それは好きに使ってくれて構わないぞ」
何だかもう寛大とかそういうのじゃないと思う。
「それ位有れば、人生4回くらい出来るだろう?」
いや、そんなにニッコリされても……。
一通り魔王との話が終わり、帰ろうとするとシューガルトが呼び止めた。
「ちょっと待ちなさい。少し時計を見ていてご覧」
魔王が指を鳴らす。すると時計の針が逆に回り始め、7時丁度で止まったのだ。
これがシューガルトの時間を操る能力だ。
「これで遅刻しないで済むだろう?学校は大切だからね」
再びニッコリ。
まったく…ぬかりのない…。
歩人はシューガルトに別れを告げ、会社を後にした。しかし時間にも余裕があったので、一旦家に帰り再び学校へと向かうことにした。