第8話 最終章 猛視点
3日後に襲撃すると決めた。
次の日、お婆さんに報告と、指導を仰ぐべく部屋に向かった。
枯山水の庭も、見納めかもしれない長い廊下を歩き
これから起こるであろう戦いに
少なからず恐怖はあった。
曾祖母が部屋で待っていた
俺の話を聞いてから
お婆さんは柏手を打った
襖が開いて、屈強そうな男性が3人出てきた
一人は剣の達人だと言う、背の高い25歳くらいの
堀の深い顔立ち、大和と自己紹介された
もう一人は40歳ぐらいだろうか屈指の爆弾使い、武。
後一人は曾祖母直伝の呪術使い、まだ15歳の徹。
心強い!!
曾祖母は、自動小銃やガトリング砲まで用意してくれていた
婆さんは、どこにそんなコネがあるんだろうか?
まぁ武術のプロは、ありがたい、直ぐに作戦会議をとった
守衛の2人は、クルルが軽く雷で気絶させて、
カメラのスイッチを切る
地下2階の扉は、武さんがプラスチック爆弾で処理
その後、前衛で俺と大和で中にはいる
後衛は、ガトリング砲の武と自動小銃の徹
必要とあらば、呪術で応戦する
クルルは偵察と雷で加勢する
クルルの情報では、中はかなり負のエネルギーが充満
しているようなので、何が出てくるか
解らないので注意して進む、
まずエネルギーを操る本体の
少女を殺す!
それに失敗したら、外に誘き出す
それから、体制を整えて
再度、攻撃する。
あらゆることを想定しながら
総合力を生かした攻撃の態勢をとる
打ち合わせは細部に及んだ
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攻撃の当日、時間は夜8時に集合
車に装備を積み、出発した
シュミレーションは出来ているが
皆無口だ。
病院の前に着いた
作戦どうりにクルルが守衛を気絶させ
ジュラルミンの扉の前に着いた
武が、カイドキーの扉に
プラスチック爆弾を取り付け爆発させた
扉に結界を張ったので音も振動も
ほとんどしないままに、あっけなくキーを
壊すことが出来た
俺と大和が、慎重に扉の中に入って行く
自動小銃を構えた武と徹が続く
クルルも後に続いた
部屋には明かりは着いていて
中央にはベッドが置いてあり少女が横たわっている
その周りから真っ黒な煙の様なものが
モクモクと噴出し、次第に大きく形を醸し出すように
膨れあがってきている
まずは、目指すは彼女をと俺がベッドに飛び乗って
刀を振り下ろそうと一瞬彼女を見てハット躊躇した
少女はあまりにも色が白く可憐で、美しい
大和が叫んだ!「猛早く!!」
形をなしつつある黒いものから拳が飛び出し弾き飛ばされた
部屋いっぱいに真っ黒な煙は広がり、そこから剣や拳が飛んでくるが
どこから飛んでくるか予想がつかない
徹が叫んだ。
「逃げろ!!」
転げるようにして部屋から脱出した
その後、勢いよく黒いものが飛び出して来た
丘陵地帯にあった病院から、海岸に向かってその塊は
飛び去って行った
「追うぞ!大和が叫ぶ」
直ぐに徹が巨大な鷲の式神を召喚した
鷲の背に乗って後を追う
。。「俺は、彼女を見たときに仕留める事が
出来なかった。すまない。」とうなだれていた
大和が「いいさ、でも今度は失敗は許されないぜ」
見えた。あそこだ。
月明かりでもはっきりと見えるぐらいに
巨大な、それは鬼の形を作ろうとしている
手は4本、1本には巨大な刀が握られ
反対側の手の1本には、鉄の巨大なこん棒が握られている
胸には少女の顔が埋め込まれ一体になっていた
鬼の身体には次第に黒い甲冑がガシャガシャと
音をたてて装備されていった
10メートルはあろうかと思うほどに
巨大に、そして棲ざまじい威圧感を放っている。
数メートル先に、降り戦闘態勢を構えた
「フハハハハハハ。ようやく自由になれた
俺の罠にかかったお前たちは、哀れなものよ。
即刻叩き殺してやるわ!」
俺たちを見るや、巨大な剣を俺たちに振り下ろして来た
とっさに左右に飛びよけた。
徹がなにやらあちこちに身をひるがえしていた
それは小型だが性能のいい、サーチライトを設置していたのだ
まばゆい光が集中して鬼を照らす
鬼は一瞬目が眩んだ
「ウオオオオオオ」
その隙をついて、俺と大和がジャンプし刀をひるがえし
鬼に切りつけ、右手の下1本のを切り落とした
「ガァアアアアアアア」
唸りながら、「おのれ!殺してやる!!」
ものすごい形相で、突進し刀を振りまわして
岩や木をなぎ倒し、その威力は周囲を圧倒するもので
武さんの足は、飛んで来た岩の下で潰れてしまった
それでも、渾身の力を振り絞ってガトリング砲を撃って
鬼のもう片方の手を打ち貫いた
「グワァオオオオ」
鬼は、もんどり打って倒れた
すると鬼の胸の彼女の目が開き赤く不気味な目が光った。
すると、土の中から、空からも、数えきれない妖魔がワサワサと
現れ、取り囲まれてしまった。
クルルは妖魔達に電撃を放った。次から次へとやってくる
大量の妖魔、いつまで電撃が続くか解らないが
打ち続けた。
俺も徹も式神を飛ばし妖魔に応戦しながら
起き上がってくる鬼に攻撃をしかけた、ボディは甲冑で覆われていて
あまり効き目が無い、胸の少女をめがけジャンプして
剣をつきたてようとしたが、こん棒が俺に降りかかり
ガツンと鈍い音がして
俺の腕は反対に曲がって折れてしまった。
「ガアアアアアアアアア」
俺は地面に叩きつけられた。そこに剣が振り下ろされようと
したとき、巨大な九尾のキツネの式神が鬼を
襲った、曾祖母の式神だ!
九尾のキツネは背後から首にかみつき、尾は残った2本の腕を
縛り付けるように絡みつけている。
今のうちだ! 少女に一太刀を、身体を引きずりながら
大和と同時に走り、大和の肩をけり
鬼の胸の少女に刀を突きたてようとしたとき
鬼の手に捕まった、握りつぶされる
これで終わりか、と思った瞬間、クルルが飛び込んできた
俺のブーツにさしてあった短剣を抜き、少女の額に付きたてた
一筋の血が額から垂れた、俺は浅いと思い足でクルルごと蹴りつけた
短剣はズブリと少女に深く突き刺ささり、
顔が大きく半分に割れ
中から光が・・・・
そこからは、あの少女が現れ、両手でクルルを抱きかかえ消えていった
其れからはあっけなく、鬼はガラガラと崩れ、
俺も鬼の瓦礫の上にドスンと落ちた
戦いに勝ったと言っても
武さんは、足を失い
大和さんは、刀を肩に受け手はダランとなって血は滴りおちていた
俺は、腕を折られた。
徹さんは、妖魔を一手に引き受けていたため
疲労困憊している、いのちが有って良かった。
曾祖母は、最期の力を振り絞って俺たちを助けてくれ
戦いを見届け死んだ。
死闘を極めたが終わったのだ。
だが、そこには、もうクルルはいなかった
赤い宝石のついた首輪が切れて落ちていた
赤い髪飾りと一緒に・・・・・
* * * * * *
数か月が過ぎた
俺はバンド活動を再開した
あれっきり、地震や災害は、起きていない
ボランティアや募金のおかげもあって
善意の輪が広がり
復興も徐々に進みつつある
あの少女のことはニュースにも上がってはいない
病院は彼女を医学の為だと実験していたのだ
やりきれない思い被害者は彼女なのだ。
ポケットにはクルルの首輪と彼女の髪飾りを
捨てられなくって持っている。
ふと、ライブの帰りや、休憩の時など
屋根や塀を見上げ、猫の鳴き声にも、敏感に反応する
どこかから、現れて足にスリスリしてくるのではないかと
道端の猫にも声を掛けている自分に
ため息が出て、苦笑してしまう。
そんなことを思いながら
公園のベンチに腰かけていたら
白い猫が足にスリスリしてきた。
人なつっこい猫だ、抱き上げて顔を
見てみた、大きな目は金と銀だった。
頭を撫で、クルルを思い出し泣きそうになった
「ツッ!!??」
猫パンチされた。
んんんんんんん???
クルル??
猫の身体は、可愛い少女になっていた。
おまけに髪から、猫耳、尻尾まである???
「んふ。かおりです!貴方に憑依しちゃった。
これからもよろしくねー。」
彼女は、俺に抱きついてきた。
「おいおい、お前って人には見えてんのかよ。
見えていたらヤバクねえか?」
「さぁ?どうだろ? わかんな~ぃ。うふ。。」
。。。。。。なんなんだよ。ったく。。。。。。。