第2話 初めて戦った敵
私は、クルル昨日名前がついた。
それまでの記憶が全くない。
どうしてあの場所にいたのかも
わからない。
今は、猛と歩いている。
見上げるとふと優しい笑顔で見てくる
歳は17~18歳といったところか。
身長は178㎝くらい、細マッチョでイケメンだ
なんだか、ニマニマしてしまう、足にすり寄って
ゴロニャ~ンとしてしまいそう
でもお腹を見せて服従のポーズだけは絶対しないぞ
そう思って、チラチラ見上げながら歩いていると
瓦礫の隙間から 今にも消え入りそうな
子供のうめき声。。。。。
尻尾を膨らまし全身で猛に教えようとする
何かを察知した猛は 瓦礫をどけようとしたが
大木はびくとも動かない。
付近に人はいない
早くしないと手遅れになる。
無力だった自分。助けられなかった自分。目の前で多くの
人が亡くなって行った。
そんなのはもう見たくない! 嫌だ!! 嫌だ!! 嫌だ~!!!
そう思った瞬間
身体が光り 大木を破壊し私の身体も後ろに吹っ飛んだ
猛がキャッチしてくれたようだが意識は薄れていった。
意識が戻ったのは、夕暮れだった。猛はいない
先ほどの、瓦礫のところに飛んでいった
あの子はどうなったんだろうか?
助けられなくて死んでしまったのだろうか?
精一杯叫んでみるが、声は出ない
反応もない。ガリガリと瓦礫を掻くしかなかった
ひどい焦燥感がおそう
天を仰いで鳴いた。。。。
ゴトリ、振り向くと、いつの間にか猛がいた
「あの子は助けたよ。クルルのおかげでね、近くの
避難キャンプに連れていってきたから、もう大丈夫だよ。」
私は、猛に飛びついた。顔や手を舐めまくった。
ん?。。今なんてった?。。。言葉が解った?。。。ってか通じてるやん。。。。
「クルルは思考に入って来れるんだね。テレパシーみたいなものかな」
私は飛び上がって喜んだ、意志の疎通が出来るって素晴らしい!
猛によじ登り肩の上で その端正な顔に思いっきり身体を
こすりつけ、喜びが弾けた。
焚火の前、猛の横にチョコンと座って
猛に意識を集中する
猛の曾お祖母さんは不思議な能力があって
巫女を司っていたそうだ
隔世遺伝で猛も幼いころから人と違ったことが出来る
能力があったが親から絶対に使ってはいけないと
言われて封印していた。
猛は今の若者らしくミュージシャンを夢見て
音楽に明け暮れて曾祖母の言うこともあまり
聞かなかった、今まではだ。そりゃそうだよね
胡散臭い超能力の伝承なんて信じないよね
お話の世界だって。。。
んで猛は、曾祖母に会いに行く
ところだったらしい。
突然バチッと音がして弾かれた。
あんまり覗かれるのはいい気がしないよっと
拒否られた。。。。残念。。
猛にスリスリした。優しく撫ぜられ至福の時を過ごした
眠りに就く前、ふと何か大切なことを
忘れてしまっているように思う。なんだろう?思い出せない。
* * * * * * * * * *
朝目が覚めると、ご飯の用意が出来ていた
なんでも、潰れた商店から拝借してきたものだそうだが、
後でお金を払いますと書置きしてきたそうだ。律儀な人だ
好感が持てる。さすが猛ちゃ~ん。ムフフフ
さて、交通網が寸断されてるので、ここから歩きとなる
最近では、思念の中で冗談を言い合ったり
するまでに、私の思考も上達したので楽しい。
うん。会話が出来るってのはすごいことだ
彼女はいるのかとか話している時
ユラリと陽炎のごとく空気が揺れた
何かがおかしい。 なんだろう? 神経を張り詰め
辺りを見回す。
「いた!」
その下、蓋のずれたマンホールの中から何かが、覗いている!!
負のエネルギーを纏った、禍々しいもの 死霊?
身構えた、猛を守ろうと前に出る。
瞬間、粘液のようなものが飛んできた。
交わしたつもりが、少量足にかかった
焼けるような痛み 守らなければ
決死の覚悟で、死霊に飛びつき牙を立てた
牙などで叶う相手ではなかった。
掴まれ、ズルズルと取り込まれる
身体半分以上飲み込まれた
もう駄目かなと猛を見た。
!!!!!!
何やら呪文のようなものを唱えたかと思うと
ハッ!っと手から雷のような太刀筋
死霊を真っ二つにした。
切れた断面からシュウシュウと泡のような煙が立ち昇り
かき消えて私は、ゴトリと地面に落ちた。
辺りは何もなかったかのように静寂になったが
焼けるような足の痛みは恐怖を駆り立てるには十分だった
「解毒をほどこさないとね。」
「カッコよかったけど、助けるのちょっと
遅くない? クルルちゃんの毛並みが台無しだよ。ムフフ。。」
頭を撫でられ抱き上げられた。
猛はやさしかった。
その日は、猛の腕の中で寝た。
足は痛かったが、至福のひと時だった
* * * * * * * * * * * * *
無念、怨念、心残りで死んだ人に 負のエネルギーが
纏わり付いて死霊が強大な力を得て妖魔になる。
なぜ?それが直感でわかる?
負のエネルギーは、どこからくる?
私はなぜそれが見える?
なぜ?それと戦わないといけない?
。。。。。にしても、何か忘れてる。大切な何かが。。。。