七話 乖離
陽炎の英霊である「炎龍」によって、森は全焼した。
葉宮隊は全員が一度合流していた。
「水無月さん!!森が燃えています!!」
「あそこは…隊長と別れた場所の近くだな!!」
「俺は…俺は助けに行きたいです!!」
隊員の一人が叫んだ。そしてその声は響き渡った。
「そんなこと言ったら俺たちだって行きたいんだ!!」
その声を起点に隊員たちは亮を助けに行くことを決め、最終決定を水無月に託した。
「水無月さん…俺たちはあなたの指示に従います」
「お前ら質問してもいいか?」
「はい!」
「隊長が死んでいても暴れないで事実を受け止められるか?」
「「大丈夫です!!」」
「もし戦闘中でお前ら自身が死んでも後悔はしないか?」
「「しません!!」」
「なら助けに行くぞ!!進軍だ!!!」
「おぉぉおぉおおおおおお!!」
同時刻
柊隊は第三防衛地点を攻略していた。
「今から拠点まで行くぞ!!」
「少し待ってくださいよ…」
柊の中で悪い予感がしていた。
第三防衛地点からは全焼している森は見ることはできなかった。
しかし彼も英霊使いの一人だった。そのため膨大な量のエネルギーを使い、召還された英霊を感じていたのである。
(もしこいつと亮が戦っていたら…)
柊の中には嫌な予感がしていた。
「なら待っていてくれ!!俺は先に行く!!」
この時初めて柊隊の隊員たちは、柊が焦っていることに気付いた。
そして彼を焦らす原因となるものは数少ないのである。
「もしかして葉宮隊長の身に何かあったんですか…」
「分からない…でもあいつが危険にさらされている確率は高い」
「そうですか。なら急ぎましょう!だから柊隊長!焦らないでください!!」
「ありがとう…なら行くぞ!!」
柊隊は拠点へ向け、進軍していった。
同時刻
少年と陽炎は剣を持ち、身構えていた。
「くそっ!!見つからないな!」
「もしかして居なかったのか…?」
「それはない。ありえない…」
「何でそんなこと分かるんだ!!」
「さっき俺は元不知火団の隊長といったな」
「確かに言ったな」
「そして俺が倒す目的としている奴の名前は慈飛。俺たちの団のメンバーだった」
「だから対処の仕方を知っていたのか?」
「いやあれは即座の思い付きだ。あの時もそうだった…あいつが能力を発動させたのか知らないが、すぐさま引っ張られていった。そして結局残ったのは俺一人だけだった。あの時も俺たちは、あいつがいる場所の方向へ引き込まれていた。だからあいつがあの森にいないということはありえないんだ」
「そうか…くだらないことを聞いた。すまん」
「構わない。『炎龍』!燃やすのは終わりだ!お前も探してくれ」
陽炎の英霊である「炎龍」は、その命令を理解したかのように火を纏うのをやめた。
「見つからないな…」
「あぁ…もしかしたら森と一緒にもえ…」
その瞬間に引っ張る力が、二人を襲った。
しかし三度目にもなる攻撃に二人は即座に行動した。
「来たぞ!行くぞ!!」
二人は力を受けた方向に走り始めた。
「『炎龍』!先に攻撃を仕掛けろ!!」
「炎龍」は引っ張る力の影響を何故か受けていず、攻撃をすることができた。
「英霊には影響を与えられないのか…?まぁそんなことはいい!!」
「炎龍」は火を纏いながら、慈飛がいるであろう方向へ飛んで行った。
そして「炎龍」は、その周辺を焼き払おうと行動を行おうとした。
しかしその行動は不発に終わった。
焼けきっていた気に隠れていた慈飛が突如現れ、銃弾を放ったのである。
その銃弾は「炎龍」の身体に当たり、溶けかけていた。
しかしここから更に異変は起こった。
「炎龍」めがけて数百の剣が襲い掛かったのである。
「なんだと!って!俺らも引きずり込まれるぞ!」
「仕方がないな。封!!」
陽炎の指示により、「炎龍」は消滅した。
そのため「炎龍」に向けて引っ張ってくる力から解放された。
その瞬間には、少年は慈飛に向けて飛びかかり、押し倒した。
「やっと顔が見れたな!亮の右手と元不知火団のやつらの報いを受けてもらう!」
そして少年は慈飛に向け、剣を振り下ろした。
しかしその剣は、慈飛の肩を深く斬り込むだけで終わり、致命傷とはならなかった。
「痛ぇな!!しかしもう終わりだ!!!」
「剣が弾き飛ばされかけたせいか。畜生!!殺しきれなかった…」
「少年!!今すぐ距離をとれ!!俺たちの団にもあいつの返り血を浴びたやつが…」
「もう遅いんだよ!!」
すぐさま少年は引っ張られていた。
その引っ張る力は、今までと比べ物にならなく、即座に慈飛の前に引きずり込まれた。
「ほらな…」
その瞬間に全てを遅く感じた。
「終わりだ!」
それが最後に聞こえた言葉だった。
八話です。
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