六話 誤解
11/13に大幅リメイクしました!
迷いが消えた少年はすぐさま男へ攻撃を仕掛ける。
「はぁっ!!」
キィッ!ギィッ!ギギ
しかし男は、軽々と少年の攻撃を受け、弾き返してみせる。
「亮、そっちからと攻撃してくれ!強い。強すぎる。一人じゃこいつは辛い!」
「あ…あぁ」
「一人じゃ無理だから二人か、確かに正しいな」
男は少年へ反撃の一撃を決めるべく、剣を水平に振り払った。
「うっ!!」
(これは食らったらダメだ!一撃で死ぬ!)
少年は何とか剣を左手から右手に持ち替え、盾のように地面に突き刺し、受け止める。しかしその衝撃を押しとめることはできず、そのまま剣を手放し、飛ばされた。
ザッザッジュザァッ!
(痛ッ!左手の皮膚が捲れていやがる!)
「なんなんだこいつは!!一撃一撃が重すぎる!人ってレベルじゃ無い。亮、こいつの事を知ってるか?」
「いや……」
「ならば隊長格なのに無名なのか?!」
「俺は隊長でもなんでもない。そしてお前に用は無い!俺はこの能力者に仲間達の敵討ちに来たんだ!!」
男は亮へ指を指し、少年へ告げた。
「お前……なに言ってんだ?」
「やっぱりだ……あんた!!こいつは敵じゃ無い!」
「つまり……どういうことだよ」
「俺たちが戦っていた隊の隊長は、目の前の男より背が低かったんだ!」
「ならばそいつはどこにいるんだ!」
その瞬間に亮、少年、男の身体に異変が起こる。あの時のように自分達が引っ張られ始めたのだ。
「またか!!おいそこの!!!」
少年は男に話しかける。
「お前はいったい誰だ!」
「この状況じゃ長々と話してられない。端的に言う。『元不知火団』団長の陽炎だ」
「そういうことか…やはり誰かを率いる人間か」
男から感じたリーダーのカリスマ性を少年は、本能で感じていた。その事に少年は気付いてはいなかったが。そしてそれが原因となり、男を敵の隊の隊長と誤解していた。
「すまない。俺の間違いだ……」
「俺もお前を殺そうとしたしな。謝罪するのはこちらだ。俺も誤解でお前の隊長を殺そうとした。そして先に攻撃を仕掛けてしまった」
「なんかきれいにまとまっている感じだから良いけどさ……相当まずいぞ!あの時と同じ事になる」
少年と陽炎は和解を果たした姿を見てから、亮は現在の状況を伝える。
「あぁ…確かにな」
少年達を引き付けてくる力は、先ほど体験した時よりも数倍になっていた。
「ならばこれしかない」
陽炎は剣を槍のように扱い、投げる。そして投げられた剣は加速しながら森の方へ飛んで行く。
音はしない。しかし、森から少年達を引き付ける力は止まった。
「よし、止まったな」
「敵の所の隊長は森の中に居るはずだ!」
「亮、行くぞ!」
「ごめん、無理だ」
「え?」
少年は亮の方へ振り向き、そこで衝撃を受ける。
亮の脇腹の部分から大量の出血が起きていた。
「銃弾を食らってな…俺を置いていってくれ」
「だからあの時動けなかったのか。ごめん、亮」
「気にしないでくれよ。ちょっと休めば何とかなるからさ……」
「何とかなるわけないだろ!亮!あいつらはどこに行った?」
「全員、水無月に任せた。どこかな……」
「本当に隊長らしくないよな、お前は」
「亮とか言ったな。お前暑さには強いか?」
「え……」
「さっき俺はお前を能力者と呼んだだろ」
「あぁ…」
「俺も能力者だ。まぁ、今回は能力を加えて、『英霊』…いや『使い魔』を召喚してからあの森を燃やす」
燃やす?火が使えるのか?
「燃やすか。目立つな。だがそうすれば…水無月たちも来てくれそうだな…賛成する…」
亮は苦笑いをしながら答えた。
「俺は亮をここまで傷つけた敵を斬り裂けるなら構わない」
「じゃあ満場一致ということで始めるぞ」
陽炎は森に右手を向けた。
「何者も近づけぬ聖なる燈り火よ。ここに舞い降りん!そして邪なるものを清めるが良い!出でよ『炎龍』!!!」
「これが能力者か。なぁ亮、なんであいつあんな意味分からないこと言っているんだ?」
「あはは……っう、痛ぇや」
亮は少年の言ったことに笑いが止まらなくなってしまい、そのせいで脇腹に食らっていた銃創が広がった。
「あれは『英霊』である『召喚獣』を召還する時の儀式時に使われる言葉で、呪言って言うんだ。まぁ別に呪言を使わないでも召還はできるんだよ。お前が知っている奴なら柊とかかな…」
「柊さんがか…」
「でも呪言を使うことで『英霊』の本来の力を使えるってわけだ」
「そうなのか……」
「まぁ、ここ四十年程で『英霊』の召還ができるようになったんだ。原因不明で。なんでなんだろうな」
「そうなのか!で、亮……さっき何で笑ったんだ?」
「いや…『英霊』の召還の儀式を知らないやつに初めて会ったからさ……面白くて」
「馬鹿だな……ひとまず止血するよ」
少年は陽炎に近づいていく。
「陽炎!少し火を分けてくれ!」
「分かった」
ヒュルルルル!!
陽炎が少年の方へ向いた瞬間、陽炎の右手に空気が集まり、形を作り始める。
「『流動』を加えて…」
「うおぉ!!でかいな!」
「お前の名前は?」
「名前……」
「いや、すまない。忘れてくれ」
陽炎は何かを察したように少年への問いかけを取り下げた。
「構わないさ。いつかは教えるよ」
「あぁ。ところで少年、『英霊』を見るのは初めてか?」
「初めてだ!森から出てきたのが二年くらい前だしな」
「ほう、じゃあ戦争は初めてだろうな」
「今回が三度目の戦いだ」
「無駄話している暇ないな。少年、剣を俺に向けろ」
「分かった」
少年は陽炎に剣を向けた。それを見た陽炎は少年に左手を向ける。
ヒュウルゥ!
すると即座に陽炎の左手を起点に火が起こり、剣が赤くなるまで加熱し続けた。
「おい!これじゃ溶けるぞ!」
「制限くらいは出来る。それを亮に当てれば、止血も簡単なはずだ…」
「そ、そうなのか?それは助かる。ありがとう、陽炎!」
少年は亮のもとへ走っていく。
「亮!今からこれで焼いて止血するぞ!我慢してくれよ…」
「分かった」
ジュュザァァ!
少年は亮の銃創に剣を押し当てる。
「ぐぁあああああああああ!!」
押し当てた部分からは、肉が焦げる嫌な音が聞こえ、亮から想像を絶する痛みに耐える為の叫び声が聞こえた。
(もう良いよな……いやもう止めるぞ!これ以上はダメだ)
「亮、銃創は塞がった」
「そうか……っあぁ……ありがとな」
「随分と元気だな。次は右腕だぞ」
「あぁ…斬られちまったな…」
次に少年は右腕に剣を押し当てた。
「うっ…」
「亮、痛くないのか?」
「さっきのに比べたら痛くなかった。もしかしたらもう右腕は腐ってるいるのか?そんな事ないよな」
自分の怪我を笑い飛ばして居る亮を見て、少年は再度、亮の精神力の強さを感じた。
「強いな……りょ…」「おい、もう森を完全に焼ききるぞ!!」
(早いな。そんなに火力が有るのか……って!!あんなのに触れたら一瞬で身体が焦げて、無くなる!!)
少年は口から火を出す「炎龍」の姿を見て、その被害を冷静に判断している。
(もし最初にアレを使われていたら、俺と亮は確実に殺されていた)
「分かった!」
「おい…あんた。さっきなんて言ったんだ?」
今は言わなくても良い話だな。いつでも話せるし。
「敵の隊長倒して、落ち着いたら言うよ」
「そうか……分かった」
「亮はここで待っていてくれよ!」
「まぁ動けそうにないしな」
「後でな!!まだ銃弾抜いてないから無理して動くなよ!後、それを水無月や柊さんが来たら言うの忘れるなよ!!」
「過保護かよ……分かっている!死ぬなよっ!!」
「あぁ!」
少年は、陽炎の元へ走っていった。
(亮も救える。これで俺の目的は達成だ!!後は亮の分まで恨みを晴らしてやる!)
読んで頂きありがとうございます!
今回の話でも、リメイクによって原形は留められていません。
どうしてあんなにも誤字脱字が多かったのかは未だに謎です。
感想、質問、誤字脱字などの指摘をお待ちしています!!
twitterにて、この作品の新規設定(とてもくだらないような情報からこの後の話に関わってくる情報までたくさんあります)を公開しています!
URL:twitter.com/higu_kaiを入力する。
もしくは@higu_kaiで検索して頂ければ多分出ます。
見て頂ければ幸いです!